第30話 後悔2
中岸家の大黒柱たる中岸マサシは頭を抱えていた。
妻の乱心を鎮める事はなんとか出来た。
あのまま本当に離婚なんて事になれば周囲への社会的信用を失う、ただでさえ蓮司のやらかしで冷ややかな視線を向けられているのに離婚なんて事になればこれまでの努力が意味の無いものとなってしまうのだから。
そして長男の作った一千万もの借金だ。
払えない額ではない、別にそれを払ったとしても家庭の生活水準が著しく損なわれる訳ではないが大きな金額であるのは間違いないのだ。
間違いなく所々で綻びは生じて来るだろう。
そしてなにより智也だ。
俺が借金を返済すればアイツは「なんだ、やはり父さんがなんとかしてくれるんじゃないか」と反省せず同じ過ちを繰り返し今度こそ俺達家族を破産に追い込む可能性がある。
俺はその未来が見えるからこそアイツを勘当なりなんなりしてこの家から追い出したいと考えてしまった。
そんな事をすれば社会的信用どころでは無くなってしまう。
あまりにリスクが大きいのだ。
こんな事なら琢磨君…彼がこの家から出ていくのを止めておけば良かった。
不愉快な話だが智也や蓮司より彼の方がまともなのは間違いない事実なんだ。
数年前に離婚した元妻の言葉が頭の中に反響する。
「もう貴方に…いえ、貴方達について行けない、貴方は浮気を辞めないしあの子達も何度言っても女遊びを辞めない…私は疲れました…もう貴方達と一緒にいるのが疲れました。どうか離婚させてください。」
あの時私は喜んで離婚届に判を押した。
あの女の綺麗事に辟易していたからだ。
そしてそれは息子達も同様だった。
「あのババアいちいちうるさいんだよね?」
「これでようやく気にせずに女遊びが出来るな!」
多少の慰謝料を払う事となったがアレと別れられるなら必要経費だと割り切り支払った。
そして新たな地としてこの場所に引っ越し今の妻を口説き落とし家もろとも手に入れてやった。
新しい妻の抱き心地は最高だった。
元妻のような貧相な体ではなくトップグラビアアイドルを彷彿とさせる素晴らしい肉体でコレで本当に40代かと疑ってしまう程だった。
さらに嬉しい誤算として息子達もそれぞれ女を引っ掛けて酒池肉林の限りを尽くした。
若いメス二人を好きに出来るのだ。
若い体を抱ける性の喜びは息子達にまともな貞操観念を教える事などより意味があると思ったのだから仕方ないだろう。
まぁその結果がこれなのだから我ながら救いが無いのだが…。
しかしそのなかで1人だけ関係のない男が混じっていて邪魔だったので徹底的に阻害した。
今思えばあれが間違いだった。
彼を加えておけば良かったのだ、そうすればいざという時に責任を負わせたり色々と利用が出来たはずだった。
彼は根が無駄に真面目だし恐らく言い包めるのは簡単だったろうからな。
それにあの酒池肉林パーティが息子達の人格形成に多大な問題を抱えている事を理解しながら俺はそれを無視し、快楽を優先した。
それがまさかこんな惨状を生み出すなんて誰も思わないだろ?
全くふざけている。
取り敢えず借金だ…放っておけば利子が嵩んで面倒な事になるのは目に見えているが俺が払っては元も子もない。
智也に絶対に支払わせなければ……
本当に面倒なことばかり…何故俺の子供はこんなにも愚かなんだ…。
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どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって…!!
ある男は頭の中が他者への恨み辛みで一杯だった。
特に俺の女として一番に可愛がってやっていた明音は俺を馬鹿男と罵りコケにしてくる。
ましてやあの何も無い凡人そのものな人間である琢磨以下と俺を馬鹿にして来やがった、許せない、地獄に叩き落としてやる。
そんな事を男は日がな一日中考えていた。
男の名は中岸智也、短期間で一千万の借金を作り上げたある意味で凄い男だ。
智也は現在スマホとにらめっこしていた。
スマホのなかには沢山の画像と動画データが入っている、その殆どが彼の彼女……と思っている明音とのハメ撮り画像と動画だ。
ハメ撮りはヤッている時に撮るとなんとも言えない高揚感を感じてしまう。
後で見る事なんてほとんど無いのにヤッてる時に明音の無駄にデカいおっぱいの揺れ方や尻の角度にピンと来たらついつい撮りたくなってしまい、気付いたらそこそこの数が貯まっていた。
智也はそんなハメ撮り画像を股間にテントを張りながら血眼になって凝視していた。
「へ…ぬへへへ!明音ぇ…俺を舐めるなよ…お前とのハメ撮り動画はもうとっくにネットに晒してるんだよぉ!!ふひっ…」
彼は明音にネットに晒されたく無ければ俺の為に風俗で働けと脅したが既にネットにハメ撮り動画は晒された後なのだ。
なんの事はない。
どうした所で既に後の祭りだったのだ。
彼がどうしてハメ撮り画像を晒す行動に出たかと問われれば答えは単純でお金が欲しかったからだ…。
起業に際して株等で得た金だけでは足りずどうしても金が欲しかった智也は明音に黙って動画をDLサイトに現役超爆乳JKと銘打ってアップした。
その結果動画は馬鹿売れし彼はその売れ行きの良さに歓喜した。
そして今度は前回とは別の動画をUPし卑しい笑みを浮かべていた。
つまるところ最初からこの男は約束などする気はなくもっと明音で金を稼げないかとダメ元で攻めてみただけに過ぎないのだ。
どこまでも見下げ果てた人間性を持った男。
それが中岸智也と言う人間だった。
無論明音はその事実を知らない。
今後彼女は本当の意味で後悔する。
この男と付き合った事実に。
自分の軽率な行動が招いた結果に。




