第拾伍話 王陛下の場合
胡蝶の夢は普通の娼館とは言い難い。
それは別に一見様お断り、市井の方々には縁のない「高級娼館」っていう意味じゃあない。
確かに所有者絡みのお客様は、このテラヴィック大陸中に名が通っておられる方が多いのは事実だ。
だがそれなら王都グレンカイナ――「大陸一の性都」と称されるこの街の上位娼館であれば、お客様の層は胡蝶の夢とそんなに差があるわけでもない。
支配人である俺のユニーク魔法も確かに他所様の箱との違いといやそうなんだが、今言っているのはそのことを指してる訳じゃない。
――胡蝶の夢に出入りしている人間が特殊なのだ。
まあそういう意味で言えば所有者が一番特殊なんだが、王族が大っぴらに出入りしている娼館ってのも、他じゃあんまり聞いたことがない。
何の因果かやたらと絡まれるようになったこの国の第一王女様や、それにくっついてくる第二王女様、第一王子様が定期的に胡蝶の夢を訪れているってのは、今や半ば公然の秘密と化している。
――今年の花冠式でいろいろやらかしたしな。
また王弟であり、英雄とうたわれるガイウスの旦那が胡蝶の夢のトップ3の一人にはまって足繁く通ってくだすっているってのも、今じゃ知らない人の方が少ないくらいだが、他国の人間が聞きゃ与太話か御伽噺の類だろう。
それらがすべて胡蝶の夢にとっちゃ普通の事で、正直そういう状況に慣れてきてもいる。
さすがに第一王女様がおいでの際には、胡蝶の夢の店員は律儀に毎回ノックもせずに俺の執務室の扉を開けやがるが、それももう様式美というかなんというか……
内心「毎度」ってなもんじゃなかろうか。
実際ガイウスの旦那の御予約には、もはや当たり前のように対応してやがる。
あの方王弟で英雄様なんだがな。
ぱっと見、とてもそうは見えないってのは置くとしても。
人間、慣れっていうのは恐ろしいもので、非日常が常態化すりゃ、それが日常になっちまうものらしい。
――だからと言って、さすがにこれはねえだろう。
軍事大国グレン王国現国王陛下、テラヴィック大陸にその名を轟かせる傭兵王。
そんな方がお客様として胡蝶の夢においでになるとなれば、そりゃあ支配人の俺含め、嬢も店員も従業員全員揃って大扉の前でお待ち申し上げるってなもんだ。
王様ってな普通、気に入ったお相手がいれば後宮へ迎え入れるのが定石だろう。
その相手が高級娼婦ってのは無いこともないんだろうが、王様自らが娼館に通うなんて話は聞いたこともねえ。
王陛下の敵娼に選ばれた嬢の他のお客様、全員腰が引けちまうのは想像に難くない。
周囲の反対をすべて無視して、後宮どころか側室の一人もお持ちじゃなかった王陛下がいきなり娼館通い始めるってな、どんな心境の変化があったもんかね。
グレン王家の方々はちょいとどころではなく変わっておられるから、俺なんざ凡人にはその考えを推し量るのは土台無理な話だ。
シルヴェリア王女殿下が何考えてるのか、未だに心底わからねえしな。
「いらっしゃいませ、ようこそ胡蝶の夢へ」
「「「いらっしゃいませ」」」
正面の大扉が開き、王陛下が入店されると同時に俺が歓迎の言葉を発し、それに従業員全員が追従する。
「うむ、出迎え御苦労」
のっけから娼館に遊びに来た客の台詞じゃねえ。
だいたい近衛師団引き連れての娼館通いなんて、聞いたこともねえわ。
近衛師団長のアッズワール様、顔引き攣ってんじゃねえか。
万一王陛下がアッズワール様の御贔屓の嬢を指名したら、泡吹いて倒れるんじゃねえかな。
というか実際、敵娼はどの嬢がつとめる事になるんだか。
胡蝶の夢の嬢たちゃ百戦錬磨の手練れ揃いだが、一国の王を相手するとなりゃさすがに数は限られるぞ。
妥当なとこなら高級娼婦である五枚花弁、四枚花弁から選ぶことになるんだろうが、そういう嬢の御贔屓筋は当然大物と言っていい方たちだ。
つまり大概、王陛下とも面識があるような立場ってことになる。
――主君と兄弟、しかも兄になるのは避けてえよなあ、普通なら。
無いとは思うが、万一ルナマリアを指名されたら正直なとこかなり引くんだが。
兄でもあり、弟でもあるなんて言われても、どんな顔していいのかよくわからん。
というかここの所、胡蝶の夢の嬢達は第一王女、第二王女共に結構仲良くさせていただいているのですが、その辺も大丈夫なんですかね王陛下。
年頃の娘さんに半目で見られるってな、結構キツイと思うんですが。
確実にその手の情報、娘さんに伝わっちまいますよ。
――正直男の俺でも聞きたかねえわ、父親のその手の情報なんざ。
とはいえお客様として胡蝶の夢に見えられた以上、娼館として対応させていただくしかないのだが。
嬢を選んでいただくここ、一階の社交室には貴賓席などは設けていないので、とりあえず一番奥の席についていただいた。
さすがに本日は貸切にしているので他のお客様はおられないが、店員はもちろんのこと、ずらりと並んだ嬢たちの緊張ぶりも半端ねえな。
――まあ無理もない。
平然としているルナマリア、リスティア嬢、ローラ嬢の方がおかしいのだ。
四枚花弁の嬢達でも、常の余裕はさすがにない。
心なしか、らしくもなく王陛下も緊張しておられるように見えるが、やはり王の立場では娼館に通うことなどないだろうからしょうがないのかね?
王となられる前の若い頃には、ガイウスの旦那と共に夜街でけっこう浮名を流していたとお聞きしちゃいるんだが。
――そういや王妃様と知り合ってからは、パタリと止まったとも聞いちゃいる。
ほんとに今回大丈夫なんでしょうな、王陛下。
胡蝶の夢通いが原因で、王家の夫婦仲が拗れるとか勘弁願いたいんですが。
「……大した歓迎よな、支配人」
いやそりゃあなた王様ですしね。
この国で商売させていただいている以上、その国のトップがみえられるとなればこれくらいは致しますよ。
「王陛下がみえられるとなれば当然かと」
「――ふむ、そんなものか」
なぜかどうにも落ち着かない御様子だ。
確かに普通の人がこれだけの数の人間に傅かれれば落ち着かなくなるものではあろうが、王陛下にしてみれば「この程度」に過ぎないはずだ。
王宮に比べれば、一娼館をあげたところで高が知れている。
まあいい、粛々と事を進めよう。
王陛下とはいえ、お客様にしていただくことは一つだ。
とりあえずは敵娼を決めて頂かなければ話が前に進まない。
「さっそくですが、一見で気に入られた嬢はおられますか? 居られないようでしたらこれから五枚花弁から順に相席を御許し頂いて、気に入った嬢が決まるまで酌をさせますが」
これだけの人数を揃えちゃいるが、王陛下の目にとまるのはまず間違いなく三枚花弁以上になるだろう。
なんだかなんだいって、持ってる華が違う。
いまだ「花弁なし」のルクシュナ嬢を見出されたりしたら、妙な関心をしちまうかもしれねえが。
「気に入った? 嬢を決める?」
「――は?」
多少拙速とはいえ娼館としては当然の質問に対して、王陛下が全く予想外の事を聞かれたというような表情をなさる。
これは……
「……お客様としてみえられたわけではないのですか?」
まず間違いないとは思うが、念のために確認するしかない。
というか胡蝶の夢へ王陛下来店の情報伝えた官僚、ちょっとここへ来い。
王陛下がお客様として胡蝶の夢へみえられるってのと、王としてではなく私用で来られるってのは、まったく意味合いが違うじゃねえか。
いやまあ己の主君が一娼館に私用で行くとなれば、そうだと早合点するのは無理ないか。
先の花冠式の一件知っている人間なら予想もつくかもしれないが、知らぬ人間が「王の私用」を忖度するのは確かに難易度が高い。
まさか一娼館に、王ではなく父親として話をしに行くなんてな、思いつきもしないわな。
「ば、馬鹿者。我がそんなことをしてみろ――」
グレンという大国の王が滅多に見せない、見せてはいけない表情を浮かべられる。
――狼狽と、ほんの少量ではあるが恐怖。
どうなるのかちょいと興味はあるが、ここにいる多くの人間に聞かしていい言葉でもなさそうだ。
「これは大変失礼いたしました。情報の伝達に齟齬があったようです」
本来であれば大変な不敬にあたるんだろうが、王陛下の言葉に謝罪の言葉を被せる。
傭兵王が娼館に通った場合、あのシルヴェリア王女殿下の姉君と言っても通りそうな美しい王妃様にどんな目にあわされるのか、それは言わぬが花だろう。
しかしあの優しげな王妃様がそこまで怖いものかね。
王陛下が狼狽するのはともかく、恐怖の色を浮かべるのは正直初めて見た。
戦場とベッドの上は似て非なるってのは本当なんだな、ルナマリア。
俺が左手を上げると、嬢達も店員らも一礼して社交室から退出する。
最後にルナマリア、リスティア嬢、ローラ嬢もおなじく一礼して退出した。
それぞれの目には興味深いような、警戒するような光が浮かんでいたが。
――確かになあ、お客様としてみえられた訳じゃないってんなら、王陛下の話は決まってるわな。
「人払い感謝する、支配人。――貴様らも出ておれ」
王陛下の指示に否やを唱えることもなく、近衛の方々も社交室から退出する。
これで王陛下と二人きりだ。
こういう状況が初めてというわけでないが、王宮ではなく胡蝶の夢でというのはさすがに初めてだ。
胡蝶の夢は己の領域なのに妙に緊張するな。
「失礼いたしました。大変な誤解がありましたようで」
王陛下来店の報を伝えた官僚にゃ言いたいことが結構あるが、意向を取り違えていた以上、謝罪は必須だ。
「いやよい。はっきりと伝えなかった我も悪い。とはいえ我が娼館通いすると思われるとはのう……」
「誠に申し訳ございません」
王陛下が天を仰ぐ。
愛妻家ってことは知られちゃいるが、グレン王家が常識に縛られない行動をとることは日常茶飯事なので、「そういうこともあるのか」と思ってしまうのはしょうがないところもある。
実際俺も意外に感じたり、要らん心配したりもしたが、「ない」とは思わなかった。
そこは社交辞令ではなく、心底から謝罪させていただきます。
「いや、ガイウスのやつもおる事だしな……グレンの血の自業自得か。妃と我の彼我の兵力差を知る者など、ほとんど居らぬことだしな」
グレン王家の血についての御自覚はあるようだ。
その上で王陛下らしい表現で、己と王妃の関係を語られる。
やっぱり圧倒的なのね、兵力差。
しかし……
「それを私に言ってもよろしいので?」
一娼館の支配人が知っていい話なのかね。
まあ知ったからと言って、グレン王国をどうこうできる類のものではないとはいえ。
泣く子も黙る傭兵王が、王妃に娼館に通っていると誤解されるだけで怯えるってのは……意外と親しみやすくなるのかもしれねえが。
「我はどちらが強いとは言うておらぬが?……まあ察しのとおりじゃ。先程は我の言葉を止めてくれて助かった」
おっと。
とはいえ俺が王陛下の言葉を止めた意味を理解してくださっているようで、感謝された。
一応部下にはあんまりばれたくもないわけだ。
「支配人にはまだわからぬかもしれぬが、彼我の兵力差は圧倒的な方が平和なのじゃぞ? 争いは互いが同レベル、もしくはそれに近い状況でこそ発生する。戦うのもばかばかしいくらいの戦力差があれば、争いになどならぬ」
ため息交じりで語られましても。
王陛下、それ国家間の話じゃなくて夫婦間のお話ですよね?
というか王妃様には絶対服従ってことですか。
それで平和――幸せとおっしゃるんであれば外野がとやかく言う気はありませんが。
ごちそうさまとでもいやいいのか。
絶対服従宣言が惚気と同義ってな、男としてどうなんだと思わなくもない。
余計なお世話だし、伴侶を持ったこともない俺にわかったようなことを言う資格もないんだが。
だが俺だったら――
想定する相手誰一人とっても、王陛下と似たような状況になりそうなので思考を停止した。
なるほど争う気にもなりませんな。
「だが、時には彼我の兵力差がどれだけあろうが、勝ち目なんぞまるでなかろうが戦わねばならん時というものはある。――それはどうやら男だけではないようでな」
常の不敵な笑みを浮かべる王陛下。
私用てな、やっぱりそれですか。
先日の花冠式でシルヴェリア王女殿下が口にした言葉は、実は洒落じゃすまない。
もちろん公的な記録には残しちゃいないだろうが、自分の耳で聞かれた方々はかなりの数に上るからだ。
王族ってのは、己の発言に責任を持つもんだ。
絶対君主、人を統べる存在ってのは、そういうことを蔑にできない――しちゃいけない。
己の発言を有耶無耶にすることは赦されない。
その上何が性質が悪いって、シルヴェリア王女殿下がどうやら本気ってことだ。
胡蝶の夢へなにやら交渉に来るたびに砂糖菓子みたいな甘いことばかり仰るお人じゃあったが、その提案が全て本気だってことは俺にもわかっていた。
俺絡みのあれこれは、あんまり俺に何もかも否定されるからおかしな方向へ拗れちまってるもんだと思っていたが、どうやらそうでもなかったようだ。
ルナマリアに煽られたにしても、あの場であの台詞が出てくるってこたシルヴェリア王女殿下なりに本気なんだってことは俺にでもわかる。
問題なのは本気なのは理解できても、なんだって俺にそこまで本気になるんだかがさっぱりわからねえってことなんだが。
だがシルヴェリア王女殿下が本気だってんなら、俺もきちんと応える必要がある。
そういうものは有耶無耶にするもんじゃねえ。
本気には本気で応える。
それが根っこに無けりゃ、他人との付き合いなんてもんは全て虚ろで薄っぺらいものになっちまう。
どんな答えになろうが、俺なりの本気で応じるしかない。
問題はそれが赦されるかってことなんだが。
「シルヴェリア王女殿下のあれを、王陛下は御赦しに?」
娼館の支配人を第一王女の相手とするなど常識では考えられない。
だがそれを王家が認めるとなれば、逆に娼館の支配人風情にそれを断る術はない。
王族の顔を潰すことなど、市井の者にできるはずがないのだ。
まあそれも常識ではってことなんだが。
他力本願で情けない限りだが、俺には断ることも可能だろう。
「どうやら本気のようなのでな。我らは本気になったら誰の言うこともきかん。故に赦すも赦さぬもないわ」
ため息交じりで答えられる。
王陛下といえども、こういう話題の時は父親の顔になるものらしい。
「一娼館の支配人に、王女殿下のお相手を務めよと?」
トップ娼館の支配人に過ぎぬとはいえ、戦闘では何の役にも立たない魔法しか使えぬとはいえ、俺には俺自身に依らない価値がある。
所有者が俺を身内と見做しているという事実は、大国にとっても大きな意味を持つ。
それこそ、その事実だけで俺を王女殿下のお相手とすることをアリだと判断するくらいに。
所有者ってのは、そこまで規格外の存在なのだ。
――だが。
「そんなつまらぬことは言わぬよ」
俺の予想を裏切って、きっぱりと言い切る王陛下。
意外そうな表情を止められない俺に、武をもってなる王が獅子の笑みを向ける。
「これは娘の戦だ、手など出さんよ。だいたい惚れた男一人、己の力だけで手に入れられんようでは話にならぬ。戦というのは突き詰めれば一人でおっぱじめるものだ。勝ちも負けも、生も死も、己の覚悟と力で決めねば意味も価値もなかろうよ」
大国を何年も背負った年月で創り上げられた王者の顔に、子供みたいな表情が浮かんでいる。
「支配人もそんな認められ方、気に食わなかろうが。――男じゃものな」
見透かされている。
思わず赤面することは止められない。
「だが彼我の兵力差は圧倒的で、手持ちの戦力はおぼつかぬのにすべてぶち込んで勝負に出た娘に、親として援護くらいはしてやろうかと思うてな」
赤面する俺を笑い飛ばす王陛下。
「――グレン王家は我の名をもって、今後、第一王女シルヴェリア並びに、第二王女カリンの支配人に対する意志、行動を全て許可する。王家の者である故の掣肘はすべて取り除く。……今日はこれを告げに参ったのだ」
「それは……」
むちゃくちゃだ。
花冠式でのシルヴェリア王女殿下の発言を認めるとか認めないとかのレベルじゃない。
「その上で支配人が我が娘たちをどうするかに一切干渉はせぬ。好きにすればよい」
いやあの王陛下?
なんか自棄になったりしていませんか?
「要は我の娘らを、気持ち以外の理由でふってやってくれるなという事よ。――ふられるなら一人の女としてふられて来い。……そう告げたら数年ぶりに本気で感謝されたわ」
寂しげな顔をされましても。
もちろん親馬鹿というだけではないだろう。
何を言ったところで、俺が所有者の身内であることは無視できない。
それでも王として、親として、本気で娘二人の事を思っての結論だというのは理解できる。
グレン王家の在り方ってやつには、正直惹かれる。
さらっとカリン王女殿下も含まれているのはどうかと思うが。
少なくとも、「一娼館の支配人風情が王女殿下のお相手など」という、俺のわかりやすい拒絶は潰された。
シルヴェリア殿下を拒否するのは、「好きじゃないから」という理由でしか不可能になったわけだ。
厄介なことに好きじゃないのかと問われりゃ、別にそんなことはねえ。
それが女としてかと言われりゃ、正直よくわからん。
――なんかすげえ性質の悪い男の言い訳みたいなこと言ってないか俺。
「まあ慌てることはなかろう。我も妃を得たのはかなり年をくってからだ。それに比べれば支配人はまだまだ若い」
そういう問題ですかね、これ。
「待たされて醒めるならその程度という事よ。なんならハーレムメンバーの一人でもよいぞ。当人が納得しておるのであればな」
……。
確かに俺は、ルナマリア、リスティア嬢、ローラ嬢に引退した時に嫁の貰い手がなきゃ、全員俺が貰ってやるてな約束をしちゃいますがね。
そこにシルヴェリア王女殿下とカリン王女殿下が加わるとか、もはや意味が分からん。
「我が妃に頭が上がらなかろうが、支配人が我が娘二人を含めたハーレムを築こうが、当人同士が納得しておれば男として他人にどうこう言われる筋合いなどない。そうではないか?」
そう言われりゃそうなのかもしれませんが。
「男親としては、いろいろ言わせてもらうことになるとは思うがな」
――ですよね。
なんか思った以上に花冠式の一件は厄介な事になっちまったな。
上手く拒絶を潰された上で、外堀埋められてる感が半端ねえ。
だからと言って、俺は俺の在り方を変えるつもりもねえんだけどな。
俺は胡蝶の夢の支配人だ。
それ以上でも以下でもありゃしねえし、その立場を放り出すつもりもねえ。
夜の帳が降りりゃ胡蝶の夢開けて、お客様をお迎えしながら嬢たちの体調を管理する。
それが俺だ。
これまでもこれからも、それだけは変わらない。
次話 カリン王女殿下の場合
近日投稿予定です。
読んでいただければ嬉しいです。
今話で三章が終了し、閑話を挟んで第四章開始となります。
少しずつ支配人と周りの人間関係は変化していきますが、基本的に娼館を舞台に毎日毎夜起こる、非日常な日常をのんびり書いていけたらなと思っております。
そろそろ所有者も登場させたいところです。
第四章の一話目は「支配人の休日」を予定しております。
お見捨てなきよう、お付き合いくださればうれしいです。
今後もよろしくお願いします。




