第28話 これは、諦めろという神の啓示だな
学校が終わった後、さっそく千葉県にある某テーマパークへ行こうとしたところ、麗子ちゃんが待ったをかけた。
「聖剣が……運び出されてるわよ」
「は?」
なんと、某テーマパークの開園時間前にすべてを終えてしまいたいという話になり、聖剣が抜けないならばと、その周りをドリルで開けて、ズボッと土地ごと取り出して、そこを埋め立てたらしい。
「ええええええぇぇぇぇぇぇ」
「だから言ったでしょう!!」
俺はしゃがみこんで頭を抱えた。
「んなこといったって、そんな風にされるなんて思わないじゃん。じゃあ、聖剣どこいっちゃったの?」
「最寄りの警察署らしいわよ」
「…………………………」
だんだん難易度が上がっている気がする。
「一応、悪質ないたずらの証拠物ということで、届けられたみたいなの」
「…………………………これは、諦めろという神の啓示だな」
「諦めるわけにはいかないでしょう。とにかく、最寄の警察署まで行きましょう」
俺は麗子ちゃんに手を引っ張られていき、ゼノンがその後をついてきた。
そしてやってきました。
最寄の警察署……
「俺が落としましたと言ったら、絶対に逮捕されるよね」
「そうだね」
ゼノンがうなずく。
「それは……避けた方がいいかも。ニュースに載ると思うわ」
「あああああ、でも警察署に忍び込むわけには行かないし」
どうしようと頭を抱えていると、ゼノンが言った。
「呼んでみたら?」
「呼ぶ?」
俺の質問の言葉に、ゼノンはうなずいた。
「だって君、異世界では聖剣呼んでただろう? そうしたら、聖剣が飛んできていただろ」
「……」
「もう君は、聖剣を一度抜いたことがある上に、称号も“異世界から帰ってきた勇者”だから、聖剣自身も君を持ち主である勇者として認めたままのはず」
「そうか、じゃあやってみるか」
「待って待って待って、そんなことしたら」
麗子ちゃんの静止の言葉よりも先に、俺は心の中で聖剣を強く呼んでいた。
(聖剣、来い!!)
途端、ガシャーンバリバリバリという何かが割れたり壊れたりする音がしたかと思うと、警察署の建物の上の方の窓から、物凄い勢いで聖剣が飛んできた。
「ああああ、聖剣!!!!」
俺は懐かしさに思わず抱きつこうとしたが、麗子ちゃんが俺の頭を激しくはたきながら言った。
「早く、早く収納庫にしまいなさい!! 誰にも見られないうちに」
幸いなことに、警察署前にいた人々は、激しい物音に皆、視線を警察署に向けていたため、そこから一瞬で光のように飛び出してきた聖剣には目をやっていなかった。
俺は慌てて、聖剣を収納庫にしまい、三人揃って警察署を後にしたのだった。
その後、せっかく千葉県までやってきたのだからということで、某テーマパークで三人遊んで帰ったのだった。




