第26話 パスでお願いします
翌朝、学校へ着くなり俺は麗子ちゃんとゼノンに手を引かれ、階段のいつもの踊り場に連れて来られた。
「なんだよー、二人して」
「光君、昨日おじさまから連絡が来たの」
踊り場の階段に座り込む。
「なんて?」
「番組の方に、東都大学から取材の申し込みが来たの。勇者君宛に」
「なんでまた、そんな大学から来るの?」
「……この間の“勇者君が岩を斬るよ”コーナー、見に来ていたのよ」
「それで?」
「あなた、彼らの前で収納庫から剣を取り出して、岩を斬ったでしょう!!」
「今までだってやってたじゃん」
そう、今までだってユーチューブ番組の撮影で、スタッフの前で収納庫から剣を出して岩を斬っていた。
今さら、改めて撮影したと言われても……
「ハイスピードカメラで撮られてたって話よ!!!!」
「何それ」
「とにかく、あなたの動きを超こまかーく撮ることができるカメラよ。それで、なんか……剣を取り出す時とか、斬るときとか、ちょっとおかしいんじゃないかという話になっているのよ。それで是非、あなたに会いたいって言ってるの」
俺の首根っこを掴んで、麗子ちゃんはぐらぐらと揺すりながらそう言った。
俺は言った。
「パスでお願いします」
「……おじさまも断ったわ」
「じゃあいいじゃん」
なら、なんでそんな騒ぐ必要があるんだろう。俺がそう彼女を見上げると、麗子ちゃんは不機嫌そうに唇を尖らして言った。
「……おじさまも言っていたけど、ああいう大学の人達はしつこいって。次のコーナーの時にも絶対に来て、また撮影し始めるだろうって」
「その大学だけ見学不可で」
「…………」
「見学告知に、カメラ撮影は一切禁止と入れとけばいいんじゃないかな」
「ゼノン、賢い!! お前天才」
俺がヨイショすると、ゼノンは嬉しそうに笑っている。
「それだけで済むといいけど」
「もう麗子ちゃんは心配性だなぁ」
俺がそう言うと、麗子ちゃんはイラッとしたように言った。
「あなたがあまり考えないからでしょう!!」
とりあえず、次の撮影は二週間後なので、その間は何もないだろう。
俺はそう、のほほんと考えていた。
だいたいそういうのも、フラグみたいなものだと、後々麗子ちゃんは言っていた。




