幼い日々2
「ああやって? あなた、エイミに詳しいの?」
「私は同じ施設で過ごした同士ですから」
「へえ、じゃあ、小さい頃から知ってるの?」
「はい。施設にいた頃はあんな風じゃなかったんですよ。普通の女の子でした。いつか父親が迎えに来てくれるんじゃないかって」
「父親?」
「はい、母親はいないので」
「でも養子に行ったって事は父親は迎えに来てくれなかったって事?」
「そうなんです。子供って待つじゃないですか。どんな親でも恋しい。でもあの父親は最初から捨てるつもりでエイミ様を施設に入れたようですね」
「結構、詳しいけど、あなただって子供だったんでしょう?」
「調べたんですよ。エイミ様が養子に行って何年かして、エイミ様は私を迎えに来てくれました。そして織田家で大学まで行かせてもらい、エイミ様の秘書の職を頂きました。その後に調べました」
「ふーん」
エイミの住み処にはほど近い場所まで来ていた。
「美里さん、エイミ様を殺さないでください」
と山田が言った。
「え? 逆でしょう? あたしがエイミに殺されるんじゃなくて? アキラがエイミの所に帰らないからでしょ? 栗バネだっけか? ああやって刺客が次々来てさ。エイミがあたしにちょっかいを出さなければいいだけの話よ。交渉が決裂して殺し合いになるのは仕方ないわ。あたしがエイミを殺せると決まったわけでもないし。執事みたいな何だか凄腕のおじいさんいるじゃない」
「ええ……でも、エイミ様は本当はあんな残虐な事を好んでやるような人間じゃないんです」
「残虐な事を好んでする人間で悪かったわね」
「あ、いえ、そういう意味では……」
「残虐な事を好まないなら、やらなければいいでしょう? それとも誰かに強制されてやってるってわけ?」
「いえ……そうじゃありません。すみません。余計な事を言いました」
「ふーん、何でもいいけど? 目的地周辺まで来たわよ」
「あの坂の一番上まで上ったお屋敷です」
美里はアクセルを踏んで、ブイーンと坂を上って行った。




