最終回答
駄目だわ、殺さなくちゃ、と美里は思った。
この街では何でも許される。誰を殺そうが、何人殺そうか、誰かが死体を片づけけくれる。さらにそれが紙幣となって戻ってきて、困る事など何もない。
それはきっと幸せな事なのだろう。
世界中の殺人鬼がこの街へ住みたがるかもしれないわね、と思ってから美里はふっと笑った。そんな住みよい場所で窮屈だと思うのは贅沢だろうか。
日本の警察は優秀でつぎつぎと罪人を捕まえているだろうに、この街に住んでいるだけでそれからも守られる。警察組織自体に笹本のレストランの顧客が何人もいるのだから。
彼らは美里やアキラが狩る獲物を心待ちにしているくらいだ。
美里を賞賛し、笹本の人肉フレンチに絶賛の拍手を送る。
まるでこの街に捕らえられた働きアリのようだ、と美里は思う。
アリの女王は誰? 美里は女王の為に人肉を狩る狩人だ。
美里はクズは殺す、がポリシーであるし、この街には探せばいくらでもクズがいるだろう。十分に狩りを堪能すればよい。誰も見咎めないし、むしろ協力的だ。
だが美里はそれが窮屈だった。
誰かの庇護のもとに趣味を楽しむなど、ありえないだろう。
趣味は趣味だ。スポンサーはいらない。
それが美里の最終回答だ。




