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チョコレート・ハウス 死  作者: 猫又


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再会

「ジョニー!!」

 久しぶりに会ったジョニーは顔中が傷だらけで、痩せてた。

「美貴ちゃん……」

 とジョニーは小さい声で言った。

 ジョニーは薄っぺらいTシャツに汚らしいジーパンで靴下も履いてなかった。

 前にいた時と同じなんだけど、エイミさんのこんな豪華で綺麗なお屋敷じゃものすごく貧相に見えた。あたしも昔は安物のネグリジェ一枚だったのに、今では毎日誰かが着替えをしてお化粧までしてくれる。

 ジョニーはそんなあたしに酷く驚いたようだった。

「美貴ちゃん、綺麗になって……」


「そうでしょう。美貴ちゃん、美人さんでしょう?」

 とエイミ様が言った。

 朝ご飯の後から、一人で部屋にいたら、突然、エイミさんに連れられてジョニーが入ってきたからびっくりした。

 ジョニーも目を丸くしてあたしを見て、あたしたちはすごく嬉しくなってえへへへと二人で笑った。

「女の子のお世話は女の子がいいと思うんだけど、美貴ちゃんがあなたが良いって言うの。あなた、美貴ちゃんのお世話をきちんとできる? あたしは美しい物が好きなの。人でもなんでもね。あなた、美貴ちゃんをいつも綺麗にしておける?」

 とエイミさんに聞かれ、ジョニーは背筋をぴんっとのばして、

「は、はい!」

 と勢いよく返事をした。

「そう、ではお願いね。しばらくお話してたらいいわ」

 エイミさんはそう言って部屋を出て行った。


 しーんとなって、あたし達はしばらく言葉を探していた。

「み、美貴ちゃん、ありがとう、俺を呼んでくれて」

「うん、前にマミーさんって人がお世話してくれてたんだけど……」

「卒業したって聞いた」

「そ、そんな感じ」

 あたしはそのとき、車椅子に座っていた。

 あたしの部屋には天蓋付きのふかふかのベッドとテーブルにソファがある。

 エイミさんがきまぐれでお茶を飲みにやってくるんだけど、まるで宮殿みたいなところで使うような豪華な形のテーブルに椅子。

 あたしの衣装が入ってる箪笥だってドレッサーだって、凝った作りで上品な感じのとにかく豪華な調度品だった。

「凄い部屋にいるんだね」

「そうでしょ。あたしも最初びっくりした。座ったら?」

「え、いいの」

 ジョニーはぱんぱんとお尻をはたいてから、怖々とソファに腰をかけた。

「ここで何をやってるの?」

「え、別に何も。客も取ってないし」

「そうか、じゃあ、よかったね」

「うん、美味しい物を食べさせてもらって、毎日綺麗に着替えさせてもらって、楽しい」

「そうなんだ、俺、美貴ちゃんが呼んでくれたって聞いて喜んで来たけど、こんな豪華な場所じゃ、上手く出来るかどうか」

「前の通りでいいよ。お風呂入れてもらって、着替え。ジョニーは化粧も上手だし」

「そうかな」

 ジョニーは不安げに部屋の中をキョロキョロと見渡した。

「心配してたんだ、美貴ちゃんの事」

「え?」

「ああやって上手いこと言って連れてかれて、どこでどうしてるんだろうって……でも本当に良い暮らしをさせてもらってて、よかった」

「ありがとう。ジョニーはどうしてたの?」

 ジョニーはふっと笑って、

「俺はずっと同じさ。美貴ちゃんみたいな子がまた入ってきてさ、その世話やってたんだけど、客がとれなくて、おかみさんにずいぶんと折檻されて……美貴ちゃんは美人だからいい客がいただろう? おかみさんは美貴ちゃんを手放した事を悔しがってたよ」

 と言った。

「そうなんだ」

「うん、だから、俺もお前の世話が悪いって、怒られてさ」

 ああ、そうか。ジョニーが酷く痩せて、怪我だらけなのは、きっと折檻されたんだ。

 おかみさんの折檻は酷い。

 男達に木刀で気を失うまで殴られる。

そしてジョニーのような若い男の子はおかみさんが満足するまで、セックスの相手をさせられる。でっぷりと太ってて、ぶよぶよで皺だらけ体。像みたいな灰色のざらざらした肌、むせかえるような香水の匂い。

 陰じゃ誰もがあのおかみさん相手には無理だって言うけど、実際、その場で出来ませんなんて言った子はすぐに姿が見えなくなる。死んだのかな。売られたのかな。

 前にジョニーはあたしには手を出さないって言ったけど、その為かもしれない。

 おかみさん相手にでもいつでも出来るように、我慢しとくしかないのかもしれない。

「そっか」

「うん、だから、美貴ちゃん、呼んでくれて助かったんだ」

 とジョニーが半泣きのような顔でそう言った。


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