番組の途中ですが藤堂とアキラが来て作者の危機なので実況中継します。
忙しい。
なのに、こんな時間に客が来た。
しかも二人とも顔をしかめて不機嫌そうだ。
藤堂の不機嫌はいい。チョコレートとラム酒の匂いが濃くなるだけだ。
だけどアキラの不機嫌はこっちの命にかかわるからなあ。
「え、何か用? 忙しいんだけど。今、連載四つも抱えてて……アルファポリスのホラー大賞も始まってるんだから、あんた達、宣伝してきてよ」
にへらと笑う猫又に、
「美里はどこへ?」
と藤堂が言った。
「え、朝ご飯の食パン買いに行ったんじゃないっすか」
「どこまで?」
「そんな事知らないっすよ。コンビニじゃない? 歩いてすぐそこじゃん」
「一時間もなるんだけど」
とアキラがぴかぴかしたナイフをもてあそびながら言った。
「見てくればいいじゃん。近くなんだから。電話したら?」
「電話にも出ないし、コンビニにもいない」
「へぇ、じゃあ、どっかで人殺してんじゃないっっすか! あの人のする事ったら、それしかないでしょ!!! あのねえ、忙しいの! ほら帰った帰った!! 書き物するんだから!」
猫又はまた机の前に座ってパソコンのキーボードに手を置いた。
その猫又の両手をぎゅっと藤堂がつかんで、アキラの前に差し出した。
「いててててて! 何すっだ!!」
アキラのナイフが猫又の両手首の上にかざされる。
「足の指でキーボード使って書き物する人になる?」
とアキラが言った。
「え、ちょ、待って……手の指は絶対必要です!!! お願い、明日も明後日もずっと小説を書いていたいの!」
「美里は?」
と藤堂が言った。
「……本当に知らないんだけど。でももう少ししたら「チョコ死」更新されるかもよ!」 と猫又は叫んだ。




