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第43章(と、キャラクター紹介)

お待たせしました、再開です!

43.

デヴラ商会の荷船は木造の全通甲板(空母みたいに、平べったいヤツ)で、必要とあれば甲板上にまで積み荷を固縛して積み上げられる構造だったが、今は甲板上には積み荷らしき物は一つも置かれてはいない。(因みに、この世界にはまだコンテナという概念がないので、船の荷の固縛は正しく職人技の世界だ。一旦バランスが崩れると転がった積荷が船腹を叩き割り、あるいは復元力を超えて船を傾かせ、船が沈みかねない)それにも関わらず喫水は深く、船内の、かなり重い積み荷の存在を示唆している。

甲板には複数のハッチがあるが、中央のマストの前後にある大型のハッチが貨物の出し入れ用で、船倉に直接通じているらしい。他は人が出入りする為の昇降口で、そちらは開けた途端に船員と鉢合わせする可能性もあるだろう。

貨物用のハッチ(実際には、開口部を分厚い板で塞いだだけ)には通常の南京錠以外に、頑丈な鋼鉄製の鎖がぐるぐる巻きにされていて、何かが厳重に封印されている様だった。


「あなた・・・、『ルトビアを売った』のね?」

薄暗い船倉の中に、アルティフィナの鈴を鳴らした様な声が響いた。

その声には相手には気付かれない程の、抑えられた嫌悪感がこもっていた。声が纏ったその温度に、背中にぞわぞわとした感触を覚えたグレンが、密かに一人で身を震わせた。

道理でハッチは封印されているだけで、甲板に歩哨の一人もいなかったはずだ。グレンが月明かりを頼りに如何にか封印を解いて中に入ったところで、アルティフィナとグレンを迎えたのはデヴラ男爵、その人自身だった。デヴラ男爵は中継地点となった大陸の港に帰り着く前に自分自身で『十分な食糧と一緒に、自分を船倉に閉じ込める事』を指示したのだそうだ。船員たちは指示通りに船倉を閉じた後で、さっさと逃げ出してしまったらしい。らしい、というのはデヴラ男爵も船倉の中からでは『返事がない』というぐらいにしか、外の様子が分からなかったからだ。(船員は居ずとも、おそらくは船の中の様子を知らされていない、街道を行く牽き馬の御者と護衛の騎兵たちだけは、未だ残っているという事も知らないらしい)

普通なら暗い船倉に一人閉じ込められたら、気が触れてしまいそうだが、気分が極度に高揚しているデヴラ男爵は部下に裏切られてもたいして気にもしなかった様だ。

置き去りにされた事については『まぁ、いいじゃないか。俺はこの場所が気に入ってるんだ。コイツと離れる訳には、いかないしな。一緒に、ルトビアに着ければそれで良い』デヴラ男爵はそう言って笑った。

延々と、笑い続ける。

あるいは、既に気が触れているのかもしれない。


「そうさ。知っているか? この国では、いや世界中何処へ行ったって『貧しいことは罪』なのさ。だから俺は、コイツを売った。売り付けてやったんだ、この俺が! 俺は貧しくなんかない、そうさ、俺は大商人だからなぁ!」

大商人を自認するデヴラ男爵のその返答に、アルティフィナの頬がぴくりと引き攣った。暗い船内では、その僅かな動きは誰も、今度こそはグレンさえも気が付く事は出来なかった。

アルティフィナは、何かあったらアルティフィナと男爵の間に飛び込もうと、身構えるグレンの横顔を盗み見る。緊張に歯を噛みしめ、普段は見せぬ厳しい表情を浮かべている。それは、わたしを守る為。

弱っちい、くせに。

でもグレン、あなたが今の『言葉』の意味を覚えてはいなくても、わたしには忘れる事など出来はしない・・・。

アルティフィナは一抹の寂しさを胸に、視線を正面の男爵に戻した。

男爵が手をかざし指し示す先には、暗緑色の巨大なシルエットが浮かんでいる。水面下にある船倉の、側板の向こうで流れる運河のゴウゴウという水流の音を制して、安定した、それでいて圧倒的な呼吸の音が狭い船倉を満たしていた。



【キャラクター紹介】

名前;アルティフィナ(アルティ)

種族;サキュバス(魔族)

性別;女

年齢;外見上は16才くらい

髪の色;絹糸の様な黒髪(腰より長い、癖のないストレート)

瞳の色;漆黒(全力で魔力を解放する時のみ、深紅)

体格;女性としても少し小柄、細身

仕事;『アルティフィナ珈琲店』の経営者、兼メイド

趣味;珈琲を飲む事、グレンに『お預けの練習』をさせる事、可愛い女の子(特にメガネっ子)を愛でる事

魔力;魔族としては大した事ないが、人間に比べると圧倒的なレベル


名前;グレン

種族;人間

性別;男

年齢;28才くらい?

髪の色;灰色?(書いていて、たまに名前をグレイと間違える)

瞳の色;灰色?(同上)

体格;かなりデカい、身長も高いが幅もあって筋肉質

仕事;『アルティフィナ珈琲店』の厨房係、兼店長

趣味;アルティフィナの世話を焼く事、荒事(をしてアルティフィナに尊敬される事)

魔力;まったくなし


名前;アイリーン・ドゥ・ルトビア

種族;人間(父は魔族と人間のハーフ、アイリーンはクオーター)

性別;女

年齢;外見上は13才くらい、実際は16才くらい

髪の色;ピンクがかった金髪でツインテール

瞳の色;水晶の様な透明な色合い

体格;華奢、つるんぺたん

仕事;王立ルトビア魔法学大学校の学生、幾何学専攻。第四皇女、『アルティフィナ珈琲店』のメイド

趣味;嘘泣き

魔力;使いこなせている訳ではないが、潜在的に高い魔力を持つ


名前;シャーロット・ランプラング

種族;人間

性別;女

年齢;20才くらい

髪の色;赤毛でポニーテール

瞳の色;?

体格;アルティフィナより高い身長、長すぎる肢体、痩せ型、アイリーン嬢並みにつるんぺたんと推測

仕事;近衛騎士団副団長、アイリーン専属のボディーガード、『アルティフィナ珈琲店』のメイド

趣味;無口で真面目で無骨、唯一アイリーンの面倒を見る事が趣味とも言える

魔力;まったくなし?


名前;ステラ・ドゥ・オークランド

種族;人間

性別;女

年齢;20才台後半

髪の色;銀白色で、肩の辺りで切り揃えらたボブカット

瞳の色;殆ど透明

体格;女性としては長身、男装の時はサラシを巻いているが実は大きい。胸以外は華奢

仕事;女伯爵、アイリーンの私設秘書、『アルティフィナ珈琲店』のドアマン

趣味;男装?(引き篭もって質素な生活をしてきたので、余り人生を楽しむ事を知らない)

魔力;まったくなし


名前;ジェニフィー・ラングドシャ

種族;人間(アルティフィナたちに逃げ出した猫探しを頼んだリンドおじ様の親戚らしい。本作で一番最初に登場した人物だが、最近まで忘れられていた?)

性別;女

年齢;22、23くらい

髪の色;金髪

瞳の色;金色

体格;中肉中背?

仕事;王立ルトビア魔法学大学校の学生、紋章学専攻

趣味;科学的な思考と検証

魔力;まったくなし


お待たせしました、再開です!

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