第40話 クールビューティーのステータスオープン!!
店のことは俺に任せとけよ。
なぁんて大見得を切ったのは良いものの、次回のコスプレ案なんてなぁんにも思い付きましぇーん。
学校の自分の席で、ガクリと机に項垂れる。昨日、寝ずにどんなコスプレをしたら良いか考えていた。結果、得たのは寝不足というデバフだけ。
色葉よ。こんなすごいことを瞬時に思い付くお前は本当に凄い奴だよ。
前の席に座っているその偉大な背中に語りかけ、俺の意識は段々と薄れていった。
♢
ふと気が付いて体を起こす。
「──っべ」
どうやら寝ちまったようだ。
まずいな。授業第一の教育を受けているのに、授業中に寝ちまったのがバレたら親父からアルゼンチンバックブリーカーの刑に処されてしまう。
「……はへ?」
間抜けな声が二年四組に虚しく響いた。
薄暗い教室。窓の外は悪天候。今にも雷が落ちそうだ。降っている雨が窓に、ドッドッと当たっていて不気味である。それに、もっと不気味なのが教室に誰もいないこと。
一瞬、移動教室かと思ったが、本日のカリキュラムに移動教室はなかったはず。なのに誰もいない。
まさか……これって……異世界転生ってやつなのか!?
あり得ない話でもあるまい。ぼっちの俺が学園の三大美女の秘密を知り、喋られるようになる世界線があるくらいだぞ。それだったら異世界転生した方がまだ現実味がある。
これから始まるのは剣と魔法のファンタジー世界。俺はチートを駆使して魔王を倒し、お姫様的な美女と結婚する成り上がりストーリーの開幕だ。
こういう時って、こう言うのがお約束なはず。
「ステータスオープンっ!!」
「降井くんのステータス?」
「え?」
後ろから聞こえて来た聞き覚えのある声に振り返ると同時にドンガラッガッシャー!! っと強い雷が落ちた。
「ぎゃあああああ!!」
「……」
こちらの断末魔の悲鳴に対し、俺の後ろにいた人物は無表情で立っていた。なんで無反応なんだよ。
「つ、つき、月影しゃ……いつ、からいたんだ?」
無表情でずっと立っている月影彩芽に問うと、彼女はスマホを取り出して高速で操作しながら答えてくれる。
「ずっといた」
「ずっと、って?」
「『──っべ』から」
「ずっといんじゃん」
「だから、ずっといたって言っている」
「え、ちょっと待って。じゃ、俺のステータスオープンも聞かれてる?」
コクリと頷くと、高速で操作していたスマホをこちらに見してくる。
なんだよ、と重いながら彼女が見してくるスマホを覗いてみる。
「えっと……」
降井自由。
ヴィジュアル70
声99
コミュ力80
素早さ30
友達0
スキル『代償のボイス』
イケボでコミュ力が高い代わりに友達がいない業。
スキル『ドS』
ドMの雌豚に有効だが友達を失くす。友達がいないからモーマンタイ。
スキル『ステータスオープン』
ステータスを確認できる。その時は月影彩芽に1ドSをして、1ぶひさせないと見られない。
「やかましわっ!!」
この子ったら、高速でスマホ操作してると思ったら、こんなことをつらつらと書いてたのかよ。
序盤はちょっと嬉しかってニヤッてしたけど、後半よ。友達の辺りから怪しくなっていった。
なるほどなぁ。俺ってイケボな代わりに友達がいないのかぁ。これも業なんだなぁ。でも、雌豚特化のドSが発動しても友達がいないからモーマンタイ☆
「だからやかましわっ!!」
俺のツッコミに対し、月影さんは更にスマホを操作する。
スキル『しつこいツッコミ』
面白くもないツッコミ。
「やかましわっ!! あ、また言っちまった……」
咄嗟に口を手で覆うと、月影さんが感情のこもっていない顔で言ってくる。
「降井くん。ステータスオープンはもう古い」
「もしや、俺って時代の波に取り残されている?」
コクリと更に俺の心の傷が広がってしまう。
そ、そうか……そうだったのか……ステータスオープンはもう流行っていないのか……。時代の流れは残酷だな。
「──つうか、なんで月影さんがここに?」
「それはこっちのセリフ。今日の国語は視聴覚室で動画を見た後に感想を書く授業」
「へ? なんだ……異世界転生したんじゃないのか……」
本気で思っていたわけじゃないが、ワンチャンの可能性はあると思っていた。
「もしそうだとしても異世界転移だと思う」
「異世界転生と異世界転移って違うの?」
「生きたまま異世界に行くか、死んで異世界に行くか」
わー、わっかりやすい説明。
「私は忘れ物したから、気配だけを視聴覚室に置いてここに来た」
そんなことができるはずないんだけど、アサシンみたいな彼女ならできそうで怖い。
「降井くんは? なんで教室にいるの?」
「ちょっとバイトのことで行き詰まっててさ……」
「カフェのバイト?」
「そうそう。次のコスプレをなににするか悩んでいたら寝れなくてな。授業中に寝落ちしちゃったってオチだ」
「睡眠不足は考える脳の大敵」
「そうなんだけど、中々良いアイディアが思いつかなくて寝れなくてさ。月影さん、なんか良いアイディアとかない? ロロック以外でー」
話しの流れで軽く聞いたつもりだが、案外彼女は真剣に考えてくれた。
「ロロック様、以外……。雌豚の私がロロック様以外のことを考えないといけないなんて、苦痛……♡」
この子、やんわりドMが発動してらっしゃる。苦痛と言いながらなにを妄想しているのか、足がぷるぷるしておられる。で、なんか知らんがさっきのステータスを見せてくる。
「ロロック様。一度、あやめを罵ってくだされば、良い案が手に入るかもです」
こいつ、教室に誰もいないからって調子に乗ってやがる。
「いや、そこまで真剣に考えなくても良いから」
「ぶっ♡ 人に話を振っておいてどうでも良いなんて……なんて酷い♡」
確かに、月影さんの言う通りなんだけど、なんでこの子は嬉しそうなの? んで、なんか知らんがスマホを──あ、わかったわ。この子ったら、さっきのスキル『ステータスオープン』を忠実に守ってやがる。
「月影さん。そのスキルうざいからやめて」
「ひ、酷い♡ なんでそんなこと……あ♡ 私は人ではなくて豚だからですね♡ だから平気でこんな酷いことを♡」
だめだこいつ。そういえばこいつはセルフでドMを発動するチート持ちだったな。こんなチートに勝てるはずはないよぉ。
こうなったらなにを言っても同じだ。だったら、ロロックボイスで何か良い案でも貰うか。
コホン。
「あやめ。もし、良い案が出ないのなら……お前を殺す(めっちゃロロックボイス意識)」
「ぶひぃ♡♡ 殺してくだしゃい♡♡♡ ロロックしゃまぁぁ♡♡♡」
「俺との約束を果たさないと殺す。果たしても殺す」
「ああん♡♡ 極上の理不尽ご褒美にあやめ大絶頂♡♡♡ 脳がいっきゅゅゅゅ♡♡♡」
久しぶりのロロックボイスの投入。誰もいないふたりっきりの教室で月影さんのテンションはMAX。
「──えっと、ふたりとも、なにしてるの?」
完全に油断してたもんだから、佳純に絶頂現場を見られてしまいましたとさ。
月影さんのステータスがオープンしちゃったね。




