第15話 学園の三大美女にもレベルがある(変態という名のレベルがね)
なんでこうなった??
「見つけました♡ 見つけましたよ♡♡ すぅ♡♡♡ はぁああん♡♡♡」
学園の三大美女が一人、ファシリテーター系美少女。清楚担当の雪村佳純が俺に抱きついて思いっきり俺の匂いを嗅いで来る件。
いや、こんな清楚で可憐な女の子に抱きつかれてドキドキすんなってのが無理な話で、そりゃもう俺の脳内はセロトニンとオキシトシンとドーパミンがどっぴゃーっ出てますわ。コスプレした時の黄色い声援なんて足元にも及ばない脳汁びっしゃー状態よ。
「ちょ、ちょい!? 雪村さん!?」
脳内では邪な考えがMAXでも、そこは思春期童貞男子。口をパクパクさせて動揺は隠せない。
「はぁ……芽宮幸四郎の体臭やっば♡♡ きっくぅ♡♡ 香ばしさ超えてまじ甘美♡♡♡ 甘美甘美甘美甘美甘美甘美ぃぃぃ♡♡♡♡♡♡」
あ、やばっ。前言撤回。幸せの脳汁が全て冷や汗に変わって背筋が凍っちまうわ。
「はなれんかいっ!!」
「んああん。強引に突き放されるともっと嗅ぎたくなる♡」
だめだこいつ、早くなんとかしないと。
「──いや、つうか、芽宮幸四郎って……やっぱ俺の正体わかってたのかよ!?」
先程の彼女の言動は俺がコスプレをしていることに気が付いている証拠。
こちらの問いかけに、とろけていた顔が普通に戻って答えてくれる。
「そりゃカフェの名前と制服でわかってたけどね」
ですよねー。やっぱりバレバレでしたか。
「じゃあお前はなにか。クラスメイトがコスプレしてるって知ってていきなり匂いを嗅いだのか?」
「まぁ、私も降井くんの匂いが嗅ぎたくていきなり嗅いだわけじゃないよ。芽宮幸四郎ってキャラが好きで、あのキャラの匂いってどんな感じなのかなぁって日々妄想してたんだよね。そんな時に降井くんがそのコスプレしたから歯止めが効かなくなったんだよ」
この子、匂いフェチの中でも亜種過ぎるんだが。どんな脳内してんだよ。
「いや、ほんと、降井くんの存在は助かる。さっきも男子更衣室前で体育終わりの更衣室の匂いを嗅いでいたんだけど、これじゃあ物足りなかったんだよね」
この子、匂いフェチの亜種とか可愛いもんじゃない。清楚の皮を被ったド変態だ。
つうか、男子更衣室の前で匂い嗅ぐとか、芽宮幸四郎関係ねぇだろ。それ以前に犯罪者予備軍じゃねかよ。まぁ、更衣室の中に入ってないだけマシか……いやいや、マシとかないから。やばい奴なのに変わりない。
「ゆ、夢を壊すようで悪いが、俺は所詮、芽宮幸四郎のコスプレをしただけで本人じゃない。あれは芽宮幸四郎じゃなくて、降井自由の体臭だぞ」
「あ、いいの、いいの。私の中で芽宮幸四郎の体臭=降井自由に設定しといたから」
「そんな設定すんなっ!!」
「ささっ。責任を持って私に嗅がれなさい」
「なんで俺が責任を取って嗅がれなにゃならんのだ」
「ちゃんと料金を払ったでしょ。サービス♡ サービス♡♡」
「それ!!」
ここに来て、俺が雪村佳純に会いに来た理由と繋がったため、すぐさま話の主導権を握ってやる。
「これだよ、これ。昨日、いきなり渡されてウチの店は困ってんだよ」
「それは正当な対価でしょ」
「不当な対価だわっ。あんまし店側がお金関係で不当な対価とか言わないよ!? あんた凄いよ!! 店側にそんなこと言わせてんの凄いよっ!!」
「まぁまぁ落ち着いて、どうどう」
「なんで変態に宥められなきゃならんのだ!!」
「あ、降井くん、いけないんだー☆ 女の子に変態とか言っちゃだめだぞ☆」
こんのー、一昔前の学園のアイドル感出しやがってー。それが似合ってるから尚のこと腹が立つ。
「とりあえず、その一万円は私がお店のサービスに対して支払った対価だよ」
「ウチはそんなサービスしてねぇんだよ!! 冷静に考えろ。匂いを嗅がせるカフェなんて存在するか? おおん??」
「思い切った選択だね。お姉さん、そういう大胆な人生の選択、嫌いじゃないぞ☆」
「んがああああああ!!」
話になんなくて、地団駄を踏むと、「あ、降井くんが壊れた」とかぬかしやがった。壊れてんのはお前の頭なんだよ!!
「あんな良い店は贔屓にするから、これからもよろしくお願いします☆ 降井くん☆☆」
まぁた話が振り出しに戻ったところで、休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
「おっと、チャイムが鳴っちゃったね。話はここまで。とりあえず現段階では、私はあなたの匂いを嗅ぐってことで、よろしくー☆」
「おい!! こんなところでファシリテーター系美少女を発動させて話をまとめようとしてんじゃねぇよ!!」
「降井くんも授業遅れないようにね☆」
雪村佳純は清楚系アイドルのように言い残して校舎に戻って行った。
「現段階でわかったことは、お前が一番やばい奴ってことだわ」




