表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/63

51話 合流

 閉じ込められていた部屋から出ると、先程のハンマーの音で様子を見に来ていた一人の男と鉢合わせになる。


「! お前、どうやって出た!」


 凛は即座に小袋の砂を男に掛け、地面に平伏させる。


「浮浪児の子を閉じ込めてる場所は何処?」

「くっ。魔法使いか」

「言いなさい」

「嫌だね」


 凛は男の髪の毛を掴み、頭を床に打ち付ける。


「言う気になった?」

「全然」


 凛は再度打ち付ける。


 何度も繰り返し、男の顔は腫れて血塗れになって行く。


「分かった。もう言う。言うから止めてくれ」


 最初は小娘だからと舐めていた男だが、命の危機を感じて、白旗を上げた。


「で、どこなの?」

「地下だ。そこの階段から行ける」

「ふーん。嘘だったら、とどめ刺して他の人に聞くわよ」

「本当だ。嘘じゃない」

「分かったわ」


 凛は男の顎を蹴り上げて気絶させる。

 ミアの身がかかっていたので、容赦なかった。



 それから凛達は聞き出した情報を基に地下へと降りる。

 そして、地下に降りてすぐの部屋で、檻を見つけた。


「凛姉ちゃん!」


 檻の中に居たミアが、凛の姿を見つけて立ち上がる。


「良かった。やっぱり、ここに捕まってたのね」


 凛の読みが当たり、無事ミアと再会することが出来た。


「今、出してあげるわ」


 凛はさっきと同じやり方で、檻の扉を開ける。

 すると、ミアが飛び出してきて、凛に抱き着いた。


「その子達は?」


 檻の中には、他にもみすぼらしい格好をした女の子が入れられていた。

 浮浪児のようであるが、凛の見覚えのない子であった。


「知らない。ただのスラム育ちか、ハグれの子じゃない?」


 凛は他の捕まっていた子達に向けて、手を差し伸べる。


「もう大丈夫よ。私達と一緒に逃げましょ」


 だが、その子達は警戒した様子で、身構えるだけだった。

 座り込んだまま、動こうともしない。


「困ったわね。この子達だけ置いて行く訳にもいかないし。こういう時は……」


 凛はシェルターミラーの中から、作り置きしておいた干し肉を取り出して、差し出した。

 すると、その子達はすぐに飛びついて、干し肉を食べ始める。


「狡い。あたしもー」

「夕食まだだったもんね。皆も食べる?」


 他の子にも渡そうとすると、クーネが言う。


「そんな呑気にしている状況ではないかと」

「それはその通りね。お腹空いてる子は食べながらでいいから、行きましょ」


 凛が号令をかけると、今度はみんなついてくる。

 浮浪児の子達も回収して、凛は部屋を出た。



 階段を戻り、地上へと上がる。


「出口はどこかしら?」


 出口を探しながら歩いていると、近くの扉の先から、話し声が聞こえた。

 凛は皆を静かにさせ、中の様子を窺う。


 中は薄暗いバーのようになっており、奥には建物の出入口らしき扉があった。

 そして、そこには先程の見張りの男ともう一人の男の他、兵士の恰好をした二人組が居た。


「何だ。早く帰って欲しそうな顔だな」

「いえいえ、そんなことありませんよ」

「お前らは放っておくと、すぐ好き勝手やり始めるから、こうやっ頻繁にて顔を出さないといけねぇ」


 構成員の人達は機嫌を取るように下手に出て、応対していた。

 凛は先程の会話を思い出し、その相手が巡回で来た兵士であることを理解した。


「好都合だわ。まとめて現行犯で逮捕してもらいましょ」


 兵士に解決してもらうことに決めると、凛達は一斉にその部屋へと雪崩れ込んだ。


「助けて! 私達、無理矢理ここに連れて来られたの」

「あっ、お前、どうやって!?」


 犯人の一味も居たが、構わず兵士に助けを求める。


「この人達、人身売買してるんです。私も街歩いてたら、いきなり攫われて、売り払うって言われて……」


 突然のことで驚く兵士達だが、凛が被害者アピールをすると、すぐに真面目な表情に切り替わる。


「詳しく事情を聞かせてくれ」


 兵士に手招きされ、凛達は近くへと駆け寄る。

 だが、近づくと、兵士は凛の手を引っ張って身体を寄せさせ、腕を回して首元に剣を突きつける。

 そして溜息をついて、組織の男二人に言う。


「何やってんだよ。お前ら」

「すみません。鍵はかけておいたはずだったのですが」


 もう一人の兵士も、助けた子達に剣を向けて、動かないように威嚇する。


「何で!? 貴方、偽物だったの!?」


 兵士や組織の人達は顔を見合わせると、一斉に笑う。


「ははっ、偽物だってよ」


 訳が分からず、凛達は困惑する。

 そんな凛達に、見張りをしていた男が言う。


「こいつらはな。正真正銘、この街に所属している兵士だ。本来なら俺達を取り締まらないといけない立場だが、賄賂を受け取る代わりに悪事を見なかったことにしてくれている。所謂、汚職兵士ってやつだ。わっるい奴らだろ」

「お前らに言われたかねーよ」


 兵士と組織の男達は仲良さそうに話す。

 兵士は犯罪組織と癒着しており、悪事を野放しにしていた。


 状況を理解させられた凛は、逆に冷静になる。


「悪人ってことは容赦しなくていいわよね」


 凛は身体能力強化の魔法をかけ、押さえられている腕を強引に剥す。

 そして腕を掴んだまま、兵士を背負い投げした。


「あっ、てめぇ!」


 他の三人が慌てて武器を抜くが、凛は素早く三人に向けて小袋の砂をかける。


「うあ! くそっ」


 一番前に居た男は砂が目に入り、目を押さえる。


「舐めた真似してんじゃねーぞ!」


 砂を被っただけの男は、凛へと斬りかかる。

 だが、凛が手を下へと降ると、男は被った砂に押されて、地面に叩きつけられた。

 続けて、目を必死に擦っている男を蹴り倒すと、残りは見張りの男一人になる。


「嘘だろ……畜生がっ」


 見張りの男は、背を向けてカウンターへと飛び込んだ。

 カウンター裏のスイッチに手を伸ばした直後、凛の投石により、意識を失う。


「はい、終わり」


 あっという間に殲滅完了した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ