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哀しき鬼

作者: 木蓮

失った。奪われた。

あの日の声が まだ胸の奥で

くすぶる火のように 焼き付いている


痛みはやがて憎しみへと変わり

弱さを喰らいながら 強さだけを纏った

あの頃の夢は とうに砕けて

闇の底で ひっそりと泣いている


奪われた痛みは憎しみへ

守りたかった人の温もり

拳を握りしめ、永遠に続く戦い

弱い自分を許せずに

闇の中で何度も叫ぶ

「守れなくてごめん」


笑顔の奥に凍った孤独

愛を知らず、愛を奪い、

悦びの裏にはいつも空虚がある

手は血に染まり、心は凍る

「愛を知りたい」


嫉妬が燃え

刃を研ぐ夜は長い

永遠に届かぬ想い

渇きは決して癒えない

「ただ、ただ認められたかった」


永遠に生きる呪いの中

死を恐れる心を抱えて

誰よりも長く孤独を知る

支配と恐怖で埋めても

満たされない愛

「私を置いていくな」


罪は消えない

奪ったものは戻らない

それでもほんの少しだけ

悲しみだけは背負うことができる


化け物じゃない

虚しく、孤独で、壊れてしまった

ひとりの「生き物」


みんな誰かを想っている

間違いながら、迷いながら


もし、ほんの少し違えば

誰もが同じ道を歩いたかもしれない


力を得ても、その痛みからは逃れられない

ただ——生き延びてしまった


残虐な名ではなく

かつて誰かが呼んでくれた

人としての名前


哀しい鬼たちよ、

いつか、幸せを知れるように

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