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さつこいNEXT!  作者: おじぃ
勇編2

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年齢を重ねただけの大人

 それはさておき、二人の修羅場に近い現場を見守る美空は「早く、早く宇治金時を!」と内心で杏を急かしていた。



 ◇◇◇



 私はただ年齢を重ねただけの21歳で、二人が会えたのなら私の役目はこれで終わり。けれどここで抜け出したら薄情な気がするし、まだ宇治金時を食べていない。食べ物を粗末にしてはいけない。そんな思いが片結びしたビニル紐のように絡まっている。


 海側は私のテリトリーじゃありませんけど。から会話が途切れて幾星霜、いやたぶん数十秒。気まずい、もう帰りたい……。


「水菜ちゃん! 帰って来てたんだね! お冷どうぞ!」


「杏ちゃん久しぶりー! 元気してた!?」


 あぁ、なんて愛らしい光景だ。水菜ちゃんが杏ちゃんをギュッと抱きしめて頭をわしゃわしゃしている。ありがとうリトルエンジェル。


「うん! 元気だったよ! 水菜ちゃんこそ、北海道は寒くて風邪引いてない?」


「大丈夫! 風邪は引いてないよ! それより早く特製抹茶パフェが食べたい!」


「わかった! ちょっと待っててね!」


 ひらひら手を振りパタパタ厨房へ引っ込んだ。


 あぁ、行かないで、行かないでリトルエンジェル。私は杏の後ろ髪を引っ張りたい想いでじーっと厨房へ向かう彼女の背を目で追った。


 こうすると視線に敏感な人は気付いて睨み合いになり、無表情のままパチクリと無言の応酬(ロマンチックに言えば『目と目で通じ合う』)へ発展することがあるけれど、今回はそうならなかった。物理的に後ろ髪を引っ張るという手段もあったけれど、お仕事の邪魔だし、何より学生時代、教員のパワハラから逃れようと脱走を試みた際に何度も後ろ髪を掴まれ乱暴に引き寄せられたので、自分がやられてイヤなことはしない。


「美空ちゃんも久しぶりだね!」とにこやかに言う水菜ちゃん。でも内心では『余計なことしやがって』と思っているような気がしてならない。


「うん、久しぶりだね!」私も精一杯の笑顔で返す。


 どうにか二人にとって幸せな選択へと導きたいけれど、そうするにあたって材料が少なすぎる。この問題の本質はなんなのかを、私は具体的に知りたい。


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