表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻のアイテムショップ『白』~正式名称『シロの物置』~  作者: 黒鳥からす
4_本編四章『寄り道こそがメイン』
35/62

4-5使えるものは

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、アイスに賞味期限は無いそうですね。

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


 買っていてよかった『魔工炸裂板』。


 レッグベルトから『魔工炸裂板』を掴み使用し、飛び掛かってくる森狼のうちの一頭との間の地面へ投擲。


 1、2、3


 手元から離れ三つのカウントで起爆したそれによって、飛び掛かりの助走に木々の間を跳ねていた森狼へ9のダメージとノックバックが入り包囲網へ穴が開きました。


 ノックバックに体勢を立て直しているのを横目に、急いで包囲の穴を抜けて遮蔽となりそうな場所へと飛び込みます。


 これで見失ってくれるなんてことが無いのは考えなくても分かりますので、勢いをそのままに木々の間と茂みを抜けるようにして、なるべく視線が通らないように逃走。

 他のモブと同じであれば、ある程度距離を取れば見失ってくれるはずなので、なるべく距離を取るように走ります。


 しばらく、あっちの茂みこっちの木陰、と移動してみたものの、何度も背後から飛び掛かられ距離を取ることができません。

 物陰に隠れて移動すれば一時的に見失ってくれはするのですが、すぐにバレてしまいます。


 わかったのは、物陰に入って視線を切ったら、ある程度じっとしていればバレないということです。

 使った魔工炸裂板をレッグベルトに移動させたり、アイテムを使ったり、スキルを使ったりといった行動には反応しないのですが、別の物陰に移動しようとすると即座にバレるというのを繰り返しました。


 流石に森を出れば追ってくることは無いと思いますし、森を出る様に移動したいのはやまやまなのですが、森を出る様に移動するということは森の浅い方へ行くというわけでして。

 他の方と出会ってしまってMPK(モンスタープレーヤーキル)なんてことになってしまっては通報されかねませんので、そこだけは注意せねば。

 この周辺であれば他の方と出会うこともありませんでしたし、変に森の浅い所へ走ったりしなければ大丈夫、だと思いたいです。


 逃げるのは無理そうなので、物陰に隠れながらどうするかを考えてみます。

 まぁ、逃げるのが無理なら戦うしかないのですが。


 真正面から全体を同時に相手にするのは、先ほどと同じ未来を辿ることになりますので、方法としては、どうにかして一体ずつ、あるいは二体程度を相手にして倒していきたいです。

 ただ、群れは常にある程度固まっており、個々が離れて孤立することは無さそうです。


 かといって、手持ちの魔工炸裂板を全て起爆してまとめて倒すというのも難しそうです。

 流石に全頭が範囲内に収まる、というほどには固まっていません。


 一番できそうなのは、物陰から爆破しては逃走を繰りかえし、数頭を倒せることを祈る方法です。


 今手持ちにある残りの魔工炸裂板は十五枚。

 安定して9ダメージが出るのだとしたら、全て当てて135、大体二頭分くらいです。


 五頭の個体の判別はつかないのでダメージがばらけると、完全にばらけて一頭当たり20と少しくらい。

 森狼さん方はHPが50前後ですので、30程残して一頭も倒せない可能性がありますが、そこはお祈りしましょう。


 そう決めて、ウエストポーチから全ての魔工炸裂板を取り出し使用、近場の個体の元へ投擲。


 その行動によって群れに位置がバレますが、囲まれる前に即座に別の物陰へと身を隠し、息をひそめやり過ごします。


 すぐに魔工炸裂板が起爆し爆発音が耳に届きます。

 ちらりとそちらを確認すると、どうやら私が標的とした個体の他に走り寄ってきた個体も巻き込んだようで、二頭がノックバックによって体勢を崩し9と10のダメージを零していました。


 これは運がいいですね。


 繰り返すこと数回。

 途中、移動のタイミングで近くの丁度見えない位置にいた森狼から、不意打ち補正のようなものもあったのか50近いダメージを貰いましたが、それ以外は特にダメージを貰うこともなく、作戦は順調に進みました。


 リペアオイルは潤沢にありますので、回復に関しては問題ないですが、数頭に袋叩きにされたらCT以前に取り出して使っている暇もなく削りきられるでしょうから気は抜けません。


 複数体、三頭を巻き込むことはありませんでしたが、順調にダメージを稼いでいくと、十一枚使用したところでついに、うち一頭が光の欠片となって消えていきました。


 これで残りは四頭の残り四枚。


 全体としては今倒したのを除いて50ダメージは稼いでいるはずなので、運が良くて倒せるのは後一頭でしょうか。


 憂いてもできる事は変わりませんので、残りも同じく繰り返していきます。

 せめてもの救いは学習して避けたりはしないことですね。


 残りもすべて使用して、最後の一枚でようやくもう一頭が倒れ、残りが三頭。


 これはなんとか希望が見えてきたのではないでしょうか。


 残り三頭、それでも真正面から戦うのは無理だと思いますが、今度はウエストポーチから毒液を取り出します。

 残り九本、以前は確かあと一回は毒にできるけど、という状況でしたよね?


 これで、もう一頭くらいは倒せてほしいなと祈りを籠めつつ、周囲を見回す一頭へ狙いを定めます。

 以前も当てるつもりで投げれば当たっていたので外すことは無いでしょうが、手に汗がにじむような気さえしてきます。


 投擲したことでこちらを認識したところで、毒液を避けることもせずそのまま無事命中。


 隠れるわけにはいきません。

 隠れて相手から一旦目を離せばどれが毒液を当てた個体かわからなくなります。

 手持ちの毒液の数は、ランダムに当てて毒にできる本数ではないでしょう。


 思い切り後ろに移動し、群れ全体から距離を取りながらすぐさまもう一本の毒液を投擲。

 命中。


 群れの三頭が大きく展開し周りを取り囲んでいきます。


 包囲網を抜けるために魔工炸裂板を一枚は残しておけばよかったですが、そんなに完璧な作戦立ては出来ません。

 攻撃が来る前に、毒になったことを確認することもなく、ありったけの毒液を対象へ投擲していきます。


 全ての毒液を投げ終えその個体の息が紫色に変化したのを確認。


 直後、背後から聞こえた他の個体が飛び寄ってくる足音に短剣を抜きつつ振り返ります。


 が、視界にとらえた時には既に目の前まで迫ってきていた個体に羽々流々が発動することは無く、その爪が私の脇腹を切り裂きました。


 30のダメージを確認する間もなくまた、背後からの足音。


 確認もせずに、身体を反転させる勢いそのままに手にした短剣を振りぬきます。


 がちん、と噛みつこうと大きく開かれた口から覗く牙に短剣が当たり、わずかに軌道を逸らしたものの、ただ振りぬいただけの力の籠っていない短剣は弾かれ、その牙によって短剣を持った腕が裂かれ、ダメージエフェクトがこぼれました。


 次をどうするか、そんな思考を与える気はないのでしょう。すぐに消えていくダメージエフェクトも収まらぬ間に、また背後からの足音。


 数の暴力ですよ。

 波状攻撃ダメ絶対。


 それでも今の反撃で攻撃を当てることはできるのは分かりました。


 手にした短剣を両手でしっかりと持ち、強く力を込めて反転と同時に背後へ振りぬきます。


 さながら野球バットでも振るようなフルスイング。


 適当に振りぬいた短剣が当たるという幸運が二度も起こることはありませんでしたが、腕と拳は爪を前に寸前まで迫っていた個体の胴体を捉え、どん、という衝突音と共にその個体と私自身を弾き飛ばします。


 こちらも大きく体勢を崩しはしましたものの、これで波状攻撃に穴が開きました。


 空中でくるりと体勢を立て直し着地した個体を横目に、茂みへ飛び込みます。


 すぐには見失っていただけず、あっちへこっちへと逃げまわり、それを何度か繰り返してようやく一旦落ち着くことができました。


 落ち着いたところで、まずは減ったHPを回復。


 身体部品の腕と胴体に軽度劣化が付いていますが、動きに直接影響が出てくる消耗が付いていないなら、まだ気にしなくて大丈夫でしょう。


 さて、これでもう、あとは真正面から戦う以外にできる事が無くなりました。


 群れの方を覗き込むと、一頭は毒のダメージポップを零しながらうろうろと歩き回っています。


 霊森狼さんの方は戦闘に参加してこないので、これで一頭が倒せれば二対一、何とかなりそうな範囲内です。


 あとできる事といえば……

 一応、MPコンバータに魔石を補充できないか確認してみましたが当然無理。

 安全な状態でないとできない、とのことですから、そうですよね。


 私って、戦闘中にMP補充できないのでしょうか?

 何か方法はあるのだと思いますが、早めに知っておきたいですよね。


 それは置いておいて、他に何かできる事が無いかと収納の中を漁りますが、出来そうなことといえば、石を投げる、あとは武器箱や防具箱を開けることくらいですが、見た目が気に入っているので非常に嫌です。

 どうせ、初期装備かせいぜい一、二段階上の装備くらいしか出て来ないでしょうから、意味ありませんよ、きっと。


 となると、できる事はもうありません。

 二対一を頑張るしかないので、毒にダメージを負っている個体が倒れるまでの待ち時間で、戦略を組んでいきます。


 基本は先ほどのように常にバックアタックを取られ続けるような状態にならないように位置取りをして戦いましょうというだけの話なのですが、後ろを取られない、そして取られた時の動きをイメージしておかないと咄嗟には出来ませんからね。


 群れと環境を見ながら、動きのイメトレを繰り返していると、シャリーンとモブが倒れる音と共に、毒状態だった個体が光の欠片となって消えていきました。


 ここからが本番ですよ。

 気合入れていきましょう。


 作業適化、幻影の稀撃、芸術を解す機械を全て発動して準備を整えます。


 茂みから出たら即座にバレてしまうので、先制攻撃は出来ません。


 覚悟を決めて茂みから身を出すと、森狼さんはすぐにこちらに反応し、一頭が身構え飛び掛かってきます。


 もう一頭は展開。このままここに居ればまた先ほどのようにバックアタックを取られてしまうでしょう。


 なるべく二頭を視界の中に捉え続けるように移動しながら突撃に備えます。


 MPは残しておきたいので、ここは羽々流々だけで乗り越えていきたいところですね。


 二頭を視界に捉えたまま、飛び掛かってくる一頭を羽々流々によって避け、何度もそうしてきたように、横をすり抜けながら短剣を振ります。


 短剣が脇を切り裂き、14のダメージ。


 落ち着いてはいけません。

 羽々流々によって攻撃を躱すと、対象とすれ違うことになりますので、結果として相手が後ろに回ってしまうことになるのですよね。

 反転して、今攻撃してきた相手を見てしまうと、もう一頭からバックアタックを取られてしまうことになります。


 背後に回った一頭を意識から外し、すぐさま来るであろうもう一頭、既に飛び掛かりの助走をつけているもう一頭を視界に捉え、タイミングを計ります。


 背後からもまた飛び掛かりの助走をつける足音が聞こえてきますが、同時ということは無いはずですので、正面からの個体に集中します。


 飛び掛かってきたところを再度、羽々流々によって回避、抜けざまに攻撃を加えダメージを確認することもなく勢いをそのままにさらに前へ。


 背後でぎゃいんと悲鳴のような声と共に、なにかがぶつかり合う音が。


 身体を反転させ、二頭を視界に捉えます。


 先ほどの音は、飛び掛かってきていたのと飛び掛かろうとしていたのとで、衝突したようで二頭ともふらふらとその場で身体を揺らし、足踏みしていました。


 攻撃チャンスかもしれませんが、今から近寄っても間に合わないでしょうから見逃しです。


 よろめきから復活した二頭は特に学習したりは無い様で、以降も同じ対応で、よろめくことを前提の攻撃も積極的に仕掛けていき着実にダメージを稼ぎ、早々に一頭を倒した後はもう何度もやってきた戦闘です。


 ここまで来ても霊森狼が攻撃を仕掛けてくる様子はありません。


 最後の一頭が光の欠片となって消えていきます。


 何とか無事、五頭を倒し切ることができましたが、残る、霊森狼との一対一に気は抜けません。


 大きく動くことなく森狼と戦うこちらを見ていた霊森狼が、こちらに対して、ぐるる、と低い唸り声をあげながらいつでも飛び掛かれるよう身を屈めました。


 短剣を構え、相手の動きを見ます。

 MPの残りは5、風の声は二回使えます。

 それに、希望的観測ですが、最初に30と少しのダメージを入れていますから残りはそこまで無いと信じたいです。


 霊森狼が強く後ろ足で地面を蹴り、跳びました。


 森狼たちとは比べ物にならないほど強く速く跳んだ霊森狼は、近い木の幹の中腹を蹴ってさらに速度を増しながらこちらへ向かってきます。


 霊森狼が蹴った木の幹は爪によって抉られ、その攻撃力の高さを教えているようでした。


 身構え、しっかりと目で追い、幻影の稀撃、芸術を解す機械、風の声。

 全てを駆使して万全の状態で迎え撃ちます。


 羽々流々の歩法の感覚は、それが避けられない可能性のある攻撃であると伝えてきます。


 私から最も近い木の幹を、砕けた木片が散るほどの勢いで蹴り飛ばし、もはや直線的に、弾丸の様な勢いで飛び掛かってくる霊森狼。


 羽々流々の感覚に従って、一歩。


 まっすぐに飛来する横をすり抜けるように踏み出し――


 ――鋭利な爪がそれを許さず、捉え、切り裂きました。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲


自分で衝撃。

一話丸々戦闘になってしまいました…… しかも雑魚だし……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ