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幻のアイテムショップ『白』~正式名称『シロの物置』~  作者: 黒鳥からす
4_本編四章『寄り道こそがメイン』
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4-2懐ぬくぬく

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、七夕の願い事って、織姫・彦星様とは関係ないのですよね。

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


「あの~!」


 びっくりしました。いきなり近くで大きな声を出さないで下さい。

 ……もしかして、私? 私ですか?


 こちら向きの指向性を持っているように感じる呼び声に少々驚きつつも、くるりとそちらを振り返ると、そこには私を捉える一対の瞳。


 まさか声を掛けられることがあるとは思っておりませんでしたので、気が付きませんでした。


 そこには、浴衣チックな装備に身を包んだ女の子がこちらを見つめておりました。

 認識保護が掛かっている感じがするのでプレイヤーなのでしょうが、知り合いではありませんよね?

 このゲームの知り合いはシノだけですし、よしんば他にいたとして、私を見つけることはできないでしょうからね。


 何か御用でしょうか?

 もしかして、やっぱり不法投棄はまずかったでしょうか。

 ちらりと、小山になり始めていた霊晶片を眺めます。


「えっと、私ですか?」

「あ、すみません」


 なぜ謝られたのでしょう?


 頭の中で、霊晶片の処理方法をぼんやりと考えながら、次の言葉を待ちます。


 持ち帰って売るとなると、結構大変ですよね。

 やはり、埋めてしまうのがいいでしょうか? 泉に放流…… は、やめておきましょう。


 少し待っていると、浴衣さんが口を開きました。


「あの、霊晶片が余っていたら売っていただけないかと思って皆様に声を掛けているのですが」


 霊晶片? 魔石の方ではなく霊晶片の方ですか?

 それはもう、正しく捨てるほど余っておりますが、律儀に声を掛けずに持って行ったとしても気にしませんし、正直気付くかも怪しいです。


 そんな風に考えていると浴衣さんが言葉を続けます。


「1スタック500 Cで、いくらでも買い取っているので、よければ」


 ふむ?

 結構高値で買い取っていただけるのですね。

 何か使い道でもあるのでしょうか。


 街に帰ったら調べてみてもいいですが、少なくとも今は利用法なんて知りませんし、ぼったくられたとしても元々捨てる予定の物でしたから、構いませんよね。


「えっと、30スタックくらいあるのですが……」

「大丈夫です」


 浴衣さんが手元で何かしらを操作すると、こちらに売買ウィンドウが表示されます。

 一応放置していても私に所有権があるのか、置いてある分も含めて売却個数を設定することが出来ました。

 すべて含めると計34スタックありました。

 今集まっている魔石が六つなので、そう考えると、6スタックにつき一個より少しだけドロップしやすかったのでしょうか? やっていると全然出ない感じがしましたが。

 まぁ、ひととやっている時は時間の流れ方が違いますからね。そんなものでしょう。


 というか浴衣さん、その量の物を持ち歩けるのすごいですね。

 それだけの物が入るアイテムというか装備というか、あるのでしょうね。私も欲しい。


 認識保護の所為で具体的にはわかりませんが、よくよく見て見れば装備もかなり、こう、艶とか柄とかが良いものっぽいですから、結構進んでいる方なのでしょうね。


 そんなことを考えている内に売買契約が成立し、こちらに17000 Cが振り込まれます。

 いい臨時収入で懐が温かい。


 使い道が少し気になったのでそれとなく理由をおたずねすると、普通に答えてくださりました。


「え? あ、えっと、ガラスを作るんですよ。

 レベル上げに沢山必要なんですけど、みんな捨ててっちゃうので街で集められなくて」


 スタック買いだったため端数は余っていますが、鞄がいっぱいになるまで近くにいるのでまた余るようなら、と言い残して離れていきます。


 思わぬ臨時収入に忘れそうになりましたが、そうそう、レベルが上がったのですよ。


 レベルアップしたアビリティを確認します。


==========

『半人前の短剣使い』Lv.1 → Lv.2

 短剣の扱いに才を持つ者が短剣を扱い始めた証


スキル▼:P 道具の扱い(短剣)

     P 短剣使いへの憧れ

     A 幻影の稀撃 - New


TEC+5 LUC+4

==========


 アクティブが増えていますね。

 そういえば裁縫師の三つめもアクティブでしたし、やはりここら辺はまだ序盤ということで固定なのかもしれませんね。


 ステータスはLUCの方が多く上がったみたいですが、LUC寄りな行動ってしましたっけ?

 もしかして、ドロップ品集めをしていたからでしょうか?


 それっぽい理由に思い至り、そんなことでも変わるのだなぁ、と感心したところで、ステータスが変わっているのならスキルも当然変わっているでしょう。確認していきます。


 何と読むのでしょう?

 げんえいの、きげき? まれげき?


 思い浮かべれば使えるので、読めなくても問題ないと言えば問題ないのですが、公式の読み方が気になりますよね。

 こういうのは全然関係ない、なんたらアタック、みたいな当て字のことも多いですけど。

 ファントムレアアタック? ……やめましょう、ネーミングセンスに絶望しました。


 ネーミングセンスはどこかに落ちておりませんか?(切実


 少し悲しみに苛まれましたが、気持ちを切り替えてスキル効果の確認をしていきましょう。

 効果は、効果発動中どれだけ攻撃の当たりにくい場合でも稀に必中となる場合がある。と、書いてあります。


 効果時間の記載はありませんね。


 これは、なんかドロップ品集めというよりかは、先ほど水玉相手に羽々流々で遊んでいた時の影響の方が強く掛かっているような感じがします。

 攻撃外し過ぎ(笑) みたいな雰囲気を感じるのは私だけ?


 短剣を使っていた内訳として、あの時の時間はそんなに多いわけではないと思うのですが、なぜでしょう。


 やはり、こう有機的に、勝手に成長していくのは不思議な感じがします。

 飼い主に似る、じゃないですけど、持ち主に似るというか。


 そう考えると、なんだか可愛くなってきますね。


 それはそれとして、つまるところ、このスキルを使っていれば絶対回避以外であればどれだけ回避性能の高い敵にも少しは攻撃があてられるようになるということですよね。


 あとは、先ほどのように他アビリティに振り回されている状態でも攻撃をあてられるかもしれない、と。


 便利ですよね?

 効果時間と『稀に』がどの程度なのかだけ確認しないといけませんが、羽々流々との相性は良さそうです。


 試すのであれば水玉相手がちょうど良い難しさになりそうですけど、濡れるのですよね。

 変に挑戦するのはやめておきましょう。安全第一。


 そこら辺に荷物を置いておけば、とか考えましたが、近づいたら泉からは水玉たちが飛んでくるわけで、出て来ない位置というと泉からは木々に邪魔されてほぼ見えない位置ですし、水玉たちの対処をしながら装備を解除して濡れない位置に移動させて、と考えていたら正直面倒くさく……


 別のと戦って試してみればいいですよね。


 思考を切って、当初の目標通り魔石を残り四つさくっと集めていきましょう。


 泉へ戻り、飛んでくる水玉をひたすら叩き落していく流れ作業を無心で続けていくこと幾星霜。というほどの時間が掛かったわけでもありませんが、何となく時間の感覚が無くなってきますよね。


 途中、全然魔石がドロップせず二度の整理を挟みましたが、確率の収束により二回連続で出たところで、無事十個の水魔石を集めることが出来ました。

 言い知れぬ達成感に包まれながら、普通の魔石と水属性魔石でいっぱいになった魔石用ミニポーチをひとしきり眺め、魔石用ミニポーチはアイテムボックスの方に入れておきます。無くしたら泣くので。


 あとは、山となった霊晶片ですが、先ほどの浴衣さんはいずこ。


 ぐるりとあたりを見回すと、少し離れた場所の岸辺に敷物を広げて作業をしている姿を発見。


 持っていけませんし、来てもらうしかないので、小山を放置してその場を後に浴衣さんの元へ。


 近づくと、遠くからは認識できませんでしたが、立て看板に『霊晶片買います』の文字が書かれ、立ててありました。


 何かしらの作業をしているところを邪魔しないように手を止めたタイミングを探っていると、


「あ、霊晶片ですか?」


 こちらに気付き話しかけてきてくださりました。

 自分から話しかけるタイミングって、むずかしいですよね……


 肯定の返事を返し、渡された売買ウィンドウに入力していきます。

 今回は28スタックありました。前回の分と合わせると計31000 C。


 約魔石一個分になりましたね。

 余った端数は、持っておきましょうか。


 浴衣さんにお礼を言ってその場で別れ、私は森をもう少し奥へ進んでみることにしました。


 理由としては単純に冒険欲と、探索と短剣のスキルの試運転と、今のところ持っているアビリティを駆使した戦い方を考察してみようかなと。


 泉から離れ少し歩くと、森の浅い場所よりも木々の密度が上がり、日の光が木の枝葉の隙間を通ることで、暗いということはないですが森林独特の空間が作り出されています。


 先ほどまで多くいた周りの方もすっかりいらっしゃいません。

この森は浅い所で活動する方しかいないのでしょうかね?


 あたりを見回すと、物陰では角うさぎさんが下草を食んでいるのが目につきます。


 まずは戦う前に、土や木屑用に作ったポーチを試してみましょう。


 スコップや斧なんてものは無いので、地面の土を手で掘り返し、取り出したポーチに詰めていきます。

 土はふかふかなので掘り返すの自体は簡単なのですが、虫が出てきそうで若干恐怖でした。


 幸いにして、虫も他の何かも出てくることは無く、ポーチに土を詰めていくと、収納のパーセンテージが上昇。

 それを確認し、一旦、中身を出します。すると当然ですが、パーセンテージは0に。


 今度は短剣を手に近場の木を削り木屑となったアイテムを入れてみると、こちらも、パーセンテージが上昇。


 さらに木屑が入ったままのポーチへ土を投入してみると、アイテムのウィンドウには木屑と森土が別々に表示されています。

 中身を取り出してみると、木屑と森土が別々に分かれて出てきました。


 そこで、両方を混ぜた状態で入れてみます。

 すると、表示は木屑の混ざった森土になり、パーセンテージは共通になりました。


 別のアイテムになったのかなと思い、スキルでも見てみたのですが、どうやら別のアイテムになったわけではなく、単純に混ざっているだけのようでした。


 何となく仕様の確認もできたので、とりあえず中身は空けてしまって森土を詰めていきます。大体、手に山盛り四掬い分程で100 %に。


 アイテムボックスに入らなかった『森土』もこの状態であれば入れることが出来るようです。

 何か種でも見つけたら植えてみましょうか。

 前に森で取った木の実を割ったら種出てくるでしょうか?


 森土入りのポーチをバッグにしまい、土を掘っている時に木の根元に見つけたキノコに目を向けます。

 これは、浅い所には無かったですよね。


 お久しぶりの『照会』と『情報請求』。

 便利は便利なのですが、なんだか使えるものが少ないのですよね。

 その所為で意外と見ることが出来るものが少ないので、レベル上げが大変です。


 わかってきたのは、このスキル、正式名称は『第一分類記録照会権限』なわけです。

 この、第一分類というのは、原生というかそんな感じの物を指しているような気がするのですよね。

 なので、このアビリティは本当に、探索しないと上げるの大変です。


 もう片方の先天性アビリティの『伝導体』はステータス系ですから、勝手に上がるでしょうけどね。


==========

『オオナツタケ』

 オオナツの木の根から生る食用可能な菌類。強い食欲増進効果を持つが、古びた羊皮紙の様な香りが嫌われる。一部の地域では好んで食べられることもある。

==========


 ふむ。

 なにに使える、とかはいまいちわかりませんね。

 食欲増進効果ということは、満腹度、EP関係の何かなのでしょうか。


 古びた羊皮紙の様な香り……

 根元から手折り嗅いでみます。


 いい匂い、ですね?

 嫌われる、というので少々身構えたのですが、なんというかニカワ? 漆? そんな感じの匂いに感じます。私は嫌いじゃありません。


 でも確かに、食用の匂いかと問われると微妙な所ではありますね。


 角うさぎさんはノンアクティブなのでいいですが、森狼さんだけに注意して、近くにぽつぽつと生えているオオナツタケを採取しバッグに放り込んでいきます。


 1スタックは欲しいなと採取していくと、十本ほど集めたところで、ピロリンとレベルアップの通知が。


 『採取者の才』、かな?


 パッシブで採取時の発見率の上昇が掛かっているはずなので、こうしてアイテムを探しているだけで上がるのですね。


 一旦手を止めて、アビリティを確認してみます。


===========

『採取者の技術』Lv.0 → Lv.1

 正しく採取してこそ、正しく価値を持つ。


スキル▼:P 知りし瞳

     P 適切な採取- New


INT+1 TEC+2 LUC+3

============


 新しく追加されたスキルは、パッシブスキルですね。


 効果は、採取時、稀に質が向上したものが採取されることがある。


 なるほど?

 質は、上質とかそういったものが取れたことがありますよね。

 あれは、角うさぎさんの素材でしたけれども、習得の時に特定の方法で採取して来てください、というのがありましたよね。特殊採取でしたっけ? それとはまた別で、採取系の素材にも素材自体の質があると。

 そういう考えでいいのでしょうかね。


 まだ採取系の素材の使い道がないので、質が上がったからどうというのがわかりませんが、入手するアイテムの質がいいに越したことは無いですよね。


 ウィンドウを閉じて、オオナツタケ採集を再開します。


 オオナツタケは16本で1スタックのようで、残りはすぐに集まりました。

 

 私が発見できていないのかそれともこの森の植生はあまり多様ではないのかはわかりませんが、特に新しい素材を見つけることもありませんでしたね。


 新しい素材に目移りしてしまいましたが、違うのですよ。


 戦闘。そう、戦闘です。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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