2-9もっふもふですよ
皆様こんにちは。お世話になっております。
からすです。
そういえば、ガムとチョコを一緒に食べるとガムが溶けますよね。
だから何というわけではありませんが。
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マップを確認しながらまずはログイン時に入ってきた中央の広場に。
最初はほぼそのまま真正面を進み、ギルドへ向かいましたが、今回は中央に鎮座する大木を挟んで反対側。
門から見て街の奥の方を目指します。
少し進んだだけで雰囲気はがらりと変化し、おそらく、防具屋さんや武器屋さんや雑貨屋さんであろうと思われる看板のかかった店々の立ち並ぶ通り。
大樹を挟んだ反対側、門側とは打って変わり落ち着いた雰囲気に統一された街並みを、わずかに耳に届く硬く乾いた様々な音だけが満たします。
道を歩く方の中には私と同じような装備をしている方もちらほらと見かけますが、並ぶお店に出入りする方々は格好いい、あるいは綺麗な装備を身に着けた方ばかり、というか全てで、初心者と思えるような方はいません。
幾人かの方が出入りする店々と記録されていくマップを眺めながら道を進んでいきます。
よそ見しながら歩くのはやめましょうね、という感じですが。
目印を追って歩くことしばらく。街壁もかなり近くなってきたころにようやく目印の立っている建物に到着しました。
素材を生かしました、という感じの木造平屋づくりの古風な建物が目的地のようです。
建物へ近づき、門前で箒を手に掃き掃除をしていらっしゃるお姉さんが視界に入った瞬間、私の視線はその背後へとくぎ付けになりました。
和装から覗く、揺れる丸みを帯びたふわふわの尻尾。
しかもそれが三本も。
黄金色に日の光を照り返す毛並みにピンと立つ大きめの耳は正に狐様のソレでございます。
いいですよね。ああいう抱き枕が欲しい今日この頃。
「あら? こんにちは。何か御用でしょうか?」
こちらに気付いたお姉さんがこちらへ問いかけてきたのに気づいても、視線が切れません。まずいです。
これは装備が外せない呪い並みに強力な何かですよ。
猫じゃらしもびっくりな吸着具合です。
お姉さんがこちらに身体を向け尻尾が背後に隠れたことで、ようやく視線を外すことが出来ました。ふぅ。
「あ、すみません。えっと、アビリティの習得ってここでよかったでしょうか……?」
頭の上の耳の方へ視線が引っ張られるのに注意しながら、チケットを取り出しお姉さんに聞いてみます。
「あぁ、はい。アビリティの習得ですね。こちらへどうぞ」
庭を回るようにお家の裏側へと歩いていくお姉さんの尻尾を…… お姉さんを追いかけ進むと、そこには正にイメージ通りの道場の外観をした建物が建っていました。
「では、あちらで修練を受けられますので。
申請の紙も、あちらにいる方にお渡しくださいな」
そう言って、去っていくお姉さんを見送り、建物の中へ。
建物に入ると、身体の何倍もある大きなクッションの上で丸まって眠る女の子?
いえ、違いますね。
クッションに見えたものは全て尻尾のようです。
少女の腰のあたりから伸びるそれらは、一本一本が上で眠る少女の身体の倍近い大きさです。
ぱっと見で具体的に何本あるのかとはわかりませんが、少なくとも片手では数えられない本数のそれをベッドに女の子は眠っておりました。
ここまでだと、魅了というよりは、凄い、という感想になってしまいますね。
「んぁ? 修練ですか?」
こちらに気付きうっすらと目を開けた少女が身を起こすと、ベッドにしていた尻尾がもぞもぞと動き、ソファーのようにその身体を支える形に変化します。
自身の尻尾に座っているはずなのに足すら地に着いていないのを見ると、不便そう、とか思ってしまいますよね。
「あ、はい。アビリティ習得の――」
「申請の紙ください」
あくびを一つ、目をこすりながらこちらの返答を切って手を出した少女に、取り出していたチケットを渡しに近づこうとすると、手にしていたチケットがひったくられるように手から飛び出し宙を舞って少女のへ元へと飛んで行ってしまいました。
「……あっちの部屋で、頑張ってください」
手にしたチケットをしげしげと眺めた後ぽいっと放り捨てると、チケットは一瞬の炎を上げ燃え尽きてしまいます。
それに気にする風もなく、奥の扉を指さしてそう言った少女は入ってきたときと同じように丸まってまた眠り始めてしまいました。
完全に放置された私は、指示通り奥の扉をくぐり、先へ進みます。
先は完全に板の間になっており、チュートリアルを思い出しますね。
部屋には誰かがいるというわけでも、なにかがあるわけでもありません。
そのまま少し待っていると、ウィンドウがポップしました。
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【流れを知る】アビリティ習得クエスト
散る羽々のように触れられず、川を抜ける清水のように流々と。それ即ち羽々流々と成す。
達成条件:指定修練の完了
支給品: 狐印の安全足袋
※このクエストは開始後1時間以内に達成してください。
※未達の場合は再度受注し最初から行ってください。
制限時間:60:00:00
報酬:アビリティ『羽々流々』
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ポンと吐き出された和風ゲームによくある白い足袋。
くるぶしの所に狐を模したマークが押されている以外は真っ白で汚れが目立ちそう、とか思ってしまいます。
買わなきゃ、と思いつつ後回しになっていた靴を図らずも手に入れられたかと思いましたが、足袋はアクセサリ枠のようですね。それでも、ようやく素足卒業でありがたや。
あと、同時に出てきたポップで、これは回収されない旨が書かれていました。
それはそうですよね。VRなので水虫とかないでしょうけど、気分的になんとなく嫌ですし。
頂いた足袋を装備すると、素足よりも何となく動きやすくなったような感覚。
足袋の効果は、移動時の効率がわずかに上昇、だったのでもしかすると本当に動きやすくなっているのかもしれませんけどね。
移動時の効率、が何を指しているのかよくわからないので何とも言えませんが。
照会や情報請求が装備品やアイテム類にも使えたら便利なのですけどね。
続いてポップした、修練を開始しますか? のウィンドウの開始の部分をつついて、クエストを開始します。
一時間のカウントが開始され、それとは別に十秒のカウント。
十秒の方には『しっかりと周りを見て、飛んでくる木札を避けましょう』と書かれておりました。
残り数秒のカウント。視界を広く、身構えて待ちます。
カウントがゼロになると共に、開始の文字が掘られた木札がウィンドウからゆっくりと飛んできます。
意外と不意を喰らったもののかなりゆっくりなので当たってしまうということは無く、それを難なく横にずれて躱すと、壁沿いにウィンドウがポップしそこからまたゆっくりと木札が。
しばらくは一枚だけが飛んでくる状況が続き、丁度何となくやることがわかってきた頃を見計らったかのように木札が二枚に増えました。
それでも飛んでくる木札自体はゆっくりなため、特に当たってしまうこともなく避け続け、それが三枚、四枚と増えていき、最終的に十枚に。
十枚もあるといくら遅くてもかなり慎重に行動しないと当たってしまいそうになることもしばしばで、もしもう少しこの場所が狭かったら当たってしまっていたかもしれませんね。
十枚でしばらくよけ続けていると、木札を吐き出し続けていたウィンドウが閉じ『速度が速くなります。飛んでくる木札を避けましょう』の文字が書かれたウィンドウに開始のボタンが。
一息ついて気合を入れ、二段階目を開始。
二段階目も一枚から始まり二枚、三枚と増えていき、書かれていた通り木札の速度が少し速くなっていますが、だんだん慣れてきたのか、意外と避けられるものです。
そしてその数が八枚ほどになった時にようやく気付きました。
アシスト掛かっていますね、これ。
いつからなのかわかりませんが、思った通りに避けられることがあるのですよね。
何を言っているかわからないと思いますが、なんというか本当に、避けよう、と思って避けることが出来る時があるのですよ。
おそらくアシストが無かったら、避けても大きく動き過ぎて他の木札に当たってしまうタイミングがあったはずなのですが、それが無いが故に避けられ続けていることに気付きました。
気付いてから意識してみると意外と強くアシストが掛かっているのを感じながら、そのまま八枚あたりまで来た段階で、時折「あ、これ無理」と思う時が出てくるように。
無理、と思った時が絶対に避けられないわけではないのですが、大きく体勢を崩してしまうので、次が結構大変です。
そうして、数度の被弾を貰いながら十枚を避け、また一息。
表示されたウィンドウには『幻影の攻撃を避けてみよう』の文字が。
続いては、モブ相手ですね。
少し休憩して開始ボタンを押し込むと、ウィンドウが角うさぎの姿に変化しました。
解体の才の時に散々見たように、角をこちらに向け、身をかがめ突撃の構えを見せる角うさぎ。
タイミング自体は掴んでいるので、突撃に合わせて避けます。
慣れた回避にさらにアシストが掛かったのか、角うさぎの突進をずらしたかのように、本当に紙一重で横をすり抜けることが出来てしまいました。
そんなことを繰り返すこと数回。角うさぎが解ける様に消えていきウィンドウに戻って、また休憩。
特に疲れたこともないので、すぐに次の開始を押してしまいます。
続いてのお相手は、少し前に私にバックアタックを決めてくださった森狼さん。
あの時はしてこなかった、というかまともに戦っていないので当たり前ですが、森狼さんはジグザグにステップを踏みながらの飛び掛かり攻撃。
私自身は完全にタイミングをつかめなくなっていたのですが、アシストのここだよ、という感覚に従って身体を動かします。
それでも前足が当たりわずかな衝撃が。
再度飛び掛かりの準備に入る森狼さんに対し、今の感覚を思い出しながら慎重にタイミングを計ります。
おかげで二回目は当たることなくかわし切ることが出来ました。
それも数回繰り返すと、次のステップ。
どうやら、次が最後のようですね。
気合を入れなおし、開始のボタンを押し込むと、最後に現れたのは人型でした。
片手剣と小盾を持ち簡単な防具を身に着けた方です。
その方は小走りにこちらへ寄ってくると手にした剣を横振りに一閃。
アシストの、ここ、という感覚にも追い付かず直撃してしまいました。
一旦後ろに引いて距離をとります。
身体からこぼれるダメージエフェクト。
今ので何となく、どう避ける、というのは把握したので行けると思います。
再度走り寄ってくる敵さん。
身構えて待っていると、今度は先ほどとは違い剣を大きく振りかぶりました。
今からまっすぐ振り下ろしますよ。と言わんばかりの振りかぶりに身体を横にずらして回避します。
今度は完全回避。
複数のパターンがあるのは聞いていませんね?
それでも結構ゆっくり攻撃してくださるので、優しい? のですが初見殺しがあると厳しいですよね。
バックステップで距離をとっていく敵さんを油断せずに観察。
来ました。これは横振り。
一度見たおかげか回避自体は成功しました。
しかし、アシストでは後ろに移動する、という感覚だったのですが、思わず飛んでしまったのがいけなかったのか、その後少し体勢を崩してしまいます。
それを見逃さず、敵さんはさらに踏み込み、反対からさらに一閃。
直撃です。
敵さんが解ける様に消えていくのを見ながら、これは失敗かな、なんて思っていると、新しくポップしたウィンドウに『部屋を退出してください』の文字が。
やっぱり戦闘系は難しいですね。
指示に従い部屋を出ます。
変わらず眠っていた女の子が身体を起こし、こちらを見ました。
「終わりましたか?」
「あ、はい」
その問いかけに応えると、じーっとこちらを見つめて一言。
「まぁ、いいんじゃないですか。
以上でクエスト達成です。
以降、『羽々流々』がステータスのアビリティ画面から取得可能です」
それだけ言うと、また眠り始めてしまいました……
失敗しても良かったのですね。
あるいは一定以上を越えればよかった、みたいな?
そこらへんは解りませんが、何はともあれよかったです。
寝ている女の子にお礼を言って、建物を離れます。一応、お礼を言った時にちらりとこちらを見ていたので聞こえてはいたと思います。
建物の表へ戻る途中、今度は縁側でお茶をしていらっしゃるお姉さんが。
割烹着を羽織り、お煎餅をかじりながらお茶をすするお姉さんが何とも風流です?
お姉さんにも一言お礼を。
声を掛けるとにっこりとした後、おいで~、とされたので魅力に逆らえず縁側へ。
お煎餅とお茶を貰いながら少しお喋り。
というかこの身体一応食べたり飲んだりはできるはできるのですね。
相も変わらずのゲームあるある、味はすれども食べた気はせず。
不愛想でしたでしょう? とか、凄い人なんですよ、とか色々なお話を。
この方とあの方のご関係はどういうものなのでしょうね?
あの女の子は一応、神獣の方らしく。
お姉さんは狐獣人。尻尾が三本なのは、アビリティの所為なのだそうです。
妖狐かと思いましたが、そういうわけではないのですね。
尻尾にも触らせていただいちゃったり、そんな感じでゆっくりお喋りを楽しんだ後、しっかりとお礼を言って、その場を後にします。
道へ出たら、忘れないうちにしっかりとアビリティ欄から『羽々流々』を取得しておき、今度は『短剣使いの才』の習得ですね。
マップを確認し、そちらの方へ足を向けたとき。
~ペポン~
ゲーム内では聞き覚えのない通知音に一瞬頭を捻りましたが、すぐにリアル方、リンクスの連絡の通知だと思い出し、一旦道の端へ寄ってリンクスを開きます。
お読みいただきありがとうございます。
もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。
あとブクマとかも(強欲
祝、素足卒業




