邪神
『アアアッ! 神ニ盾突ク不届キ者ドモメガッ!』
バケモノが、人とは思えぬ声で叫ぶ。
オークやオーガの鳴き声のような、野太い音で。
「やかましい化け物がっ!」
オークスタ中将がそう叫ぶと、
『神ダ!』
そう声を発したバケモノが、オークスタ中将を右腕で殴り飛ばす。
飛ばされた中将が、教会の壁に叩きつけられた。
「グハッ」
全身を打ち付けられた痛みに、声を漏らしたオークスタ中将。
「あ! 師匠っ!」
セインスが思わず叫ぶと、
「セインスッ、ワシは大丈夫だ! それより化け物を!」
そう指示したオークスタ中将。
「はいっ!」
と返事をし、手に持つ鉄弓でバケモノに狙いを合わせて、
「当たれっ!」
と叫ぶセインス。
鉄弓から放たれた矢のスピードは、とても速いのだが、それを凄まじい速さで避けたバケモノ。
「ちっ! 早いっ!」
セインスが舌打ちすると、
「ワシとポチ達で奴の注意を引くから、奴の視界を奪えっ!」
そう言って、オークスタ中将がポチ達と共に、バケモノに走り寄る。
「り、了解!」
慌てて矢をつがえるセインス。
「セインス! 今だっ!」
バケモノを四方から押さえたオークスタ中将が、セインスに向かって叫ぶ。
「当たれっ! 当たれ! 当たれぇええ!」
素早く矢を何本も放つセインス。
セインスの腕は達人の域に達している。
そのセインスが何本も矢を放ったのだ。二つの目玉にはしっかりと矢が刺さった。
「よくやった!」
そう言いながら、バケモノの左肋骨の3番目、つまり心臓が有る位置に、腰から素早く抜いた短剣を突き刺したオークスタ中将。
どす黒い液体が、滴り落ちる。
「師匠! 頭部を体から引き抜いてっ!」
セインスが叫ぶと、
「任せろ!」
そう言って頭部を両手で掴み、上方向に持ち上げたオークスタ中将。
ズルリと引き抜かれた頭部と、それに続く像の首から下の部分。
「砕け散れ!」
オークスタ中将は、その像を地面に叩きつけ、短剣で何度も撃ちつける。
細かく粉砕された像を、これでもかとさらに踏みつけ、まさに粉々にした。
「コイツはいったい何だったんでしょう?」
粉々の黒い木片を見下ろしながら、セインスが聞くと、
「神だとぬかしておったからな、邪神とでも言うべき存在だったのかもな」
オークスタ中将が、そんな事を言う。
「邪神……」
アストン国がレイリス王国に侵攻してから3ヶ月、ついにアストン王城を囲む、レイリス王国軍。
名だたる騎士軍や王国軍の精鋭部隊が、集結している。
アストン国の城は、門を固く閉じ篭城の構えだ。
食糧不足のアストンに、食糧がどれほど用意されているのか疑問であるが、ワイハ国から多少は略奪したのだろう。
「師匠、城壁の門をオーク達に壊させてくださいよ」
セインスがそう言うと、
「ワシの可愛いポチ達に、矢の餌食になれというのか?」
とセインスを睨むオークスタ中将。
「教会の件以降、愛着湧き過ぎでしょ……仕方ないなぁ。私が狙撃して敵の弓兵減らしますよ……アレン、器械式を」
セインスが呆れて言うと、
「こちらに。しかし矢が足りますかね?」
「門の近くの弓兵殺しゃ、なんとかなるだろ。弓兵の馬車をこっち持ってきて、櫓を立てろ」
遊撃隊の弓兵馬車には、組み立て式の簡易櫓を設置できるようになっている。
「はっ!」
アレンがそう言い、部下達に命じると、たちまち櫓が組み立てられる。
「さてと、けっこう居るなぁ。とりあえず偉そうなやつからいくか」
そう言いながら、櫓の上に上がるセインス。




