アストン国との開戦
そしてさらに数日後、アストン国がワイハ王国を占拠したとの知らせが届く。
さらに続報として、ワイハ王国の王族貴族を一人残らず処刑、ワイハ王国に居た全てのエルフ、ドワーフ、獣人の民を奴隷としたと、レイリス王国にもたらされる。
そして数年が経過し、アストン国との不可侵条約が期限切れとなる。
同日、アストン国がレイリス王国北部に侵攻。
そのときアストン国軍を率いてきた将は、予想通りパイドであった。
レイリス王国は、アストン国が攻めて来る事は予想済みであったので、防衛を強化していた。
東側は以前作った砦を、より強固なものに作り替えていたし、砦が作れない地区は、高い見張り櫓の設置と、兵士の人数を増やして対応していた。
ここで活躍したのが、ヴェガ子爵家である。
親交のあるセインスから、鉄弓の有用性を聞かされていたヴェガ子爵は、自軍に取り入れたドワーフ鉄弓隊で、かなりの成果を上げた。
また、同じくセインスと親交のある、アウス、バウ、ジュンス準男爵軍も各地で指揮を取り、アストン国を押し返す事に成功する。
ロローシュ伯爵領は、大戦果を上げた。
だが、パイドが軍を率いてきた旧ウェインライド領を含む北側の国境地帯は、混乱していた。
何故か?
ノードス伯爵とロローシュ伯爵が、西側貴族を虐め過ぎたのが原因だ。
『戦争もないのに軍など要らないだろう』と、ヨハネ王に進言して、西側貴族の俸禄を減らそうと画策した二人。
西側貴族はこれに反発し、西側貴族軍は戦争が勃発すれば、戦地に応援として兵を派遣するとして、王に俸禄を減らす事を思いとどまって欲しいと願い出る。
これに、「戦争をしたことのない将や兵が、役に立つわけがない」と、ノードス伯爵やロローシュ伯爵が言った事により、西側貴族軍の力を見せつけてやると、西側貴族が前線に軍を送り込んだのだ。
これがまぁ弱かった。
西側貴族が配置された地区は、ことごとく負けてしまう。
慌てて別地区にいた王都の軍を応援に出す事になる。
セインスはというと、遊撃隊を率いて劣勢の地区の援護に回っていたのだが、その地区は西側が惨敗した地区なので、全ての尻拭いをさせられていた。
「やってられるか! 西側貴族弱過ぎだろっ!」
口からボヤキが漏れ出るセインス。
「そりゃ西の貴族領兵は、領地の治安維持しかしてなかったでしょうからね」
アレンが言うと、
「これでよく前線に来たな。ここはどこの領兵だっけ?」
と尋ねたセインスに、
「トドレイ伯爵領兵ですね」
と答えたアレンだが、それを聞きセインスはアレンに顔を向けて、
「ローレライの元勤め先かよ」
と言うと、
「妻から聞いてはいましたけど、本当に弱いですね。そりゃ妻が一人でタコ殴りにして、辞めてくるはずですよ」
と呆れ口調でアレンが言った。
「ところで、ここの指揮官は?」
セインスは、統率の無い戦のやり方を、疑問に思っていたので、アレンに聞いたのだが、
「真っ先に逃げたようですよ」
と、予想とは違う答えが返ってきた。
「帰ったら陛下に報告だな。西はダメだ」
「ですね。さて、そろそろ動きますか?」
「だな。仕事するか」
セインスがそう言いながら、遊撃隊の兵士達に顔を向けるのだった。




