アストン国近況
そんなこんなで月日は進み、レイリス国の密偵達が商人に偽装して手に入れてきた情報は、レイリス国の国王や軍部に届く。
「アストンがワイハ王国に攻め入った?」
ヨハネ王が聞き返すと、
「はい。アストン国の食糧不足は深刻で、ワイハとの国境近くの村が、飢えから国境を越えてワイハの村を襲い、そのまま戦争に突入しました」
と説明した諜報部の責任者。
「して、戦況は?」
「アストン国の優勢です。それでですね。その指揮は第一王子が後方でしているそうなのですが、その部隊の切り込み部隊の隊長が問題でして」
「誰だ?」
ヨハネ王の問いかけに、ある人物の名が。
「パイドです」
そう、裏切り者の騎士、パイドである。
「あのパイドか?」
「あのパイドです」
「どんな手を使ったか知らんが、アストン国軍に潜り込んだか。となると、不可侵条約が切れたら、パイドが攻めてくるだろうな」
顎に手をやり、考え込むヨハネ王。
「まず間違いないでしょう。我が国の地理にも詳しいですし」
「特に北の地理にはな。北の防衛に力を入れねばならんの」
そう言って、防衛に力を入れる事にするヨハネ王であった。
数日後、
「聞いたかセインス?」
と、デービット王太子が、国軍の訓練を指揮していたセインスを呼び出し、尋ねた。
「パイドの件でしょうか?」
「ああ!」
「聞きましたよ。そろそろ仇が取れそうですね」
真面目な顔つきで、セインスが言うと、
「奴が攻めて来るって思うか?」
「来るでしょうね。けどね殿下。攻めて来るのを待つのは下策だと思うんですよ」
「ん? どういうことだ?」
「アストン国に、我らが攻め入れば良いのです!」
「ええ?」
「後顧の憂を断つのです。アストンには聖人教の信仰が広まっているとも聞きます。あの宗教だけはダメです!」
「巨大化するとかいうやつか?」
「それもありますが、エルフやドワーフや獣人達を生贄と称して、虐殺するような宗教には、滅んでもらいませんと」
「確かにな」
「パイド騎士軍にはドワーフ達もいましたが、アストン国とワイハ国との戦争で、その者達は参戦していたのでしょうかね?」
「アストン国は人族至上主義だからな」
「パイドと共に逃げた騎士軍のドワーフ達の事など、滅べば良いとは思いますけど、我が国のエルフ、ドワーフ、獣人達を不当に蔑んで見られるのは、我慢なりません」
「父上に進言はしておくよ」
「お願いします」
その時の話は、こう締め括られた。
だが、デービット王太子がヨハネ王に、進言したのだが先制攻撃の決断は下りなかった。
「我らから攻めては大義が無い」
との理由である。
しかし、次に攻められたならば、攻め入る事は承認した。




