ヨハネ王
セインスがニヤリと笑いながら、
「だいたい、リーガスタという家名が二つあるから問題なんですよ。どちらの家か分からないし、ややこしいでしょう? 師匠が家名を変えれば問題無いとおもうんですよねぇ」
そう言いながら、二人のリーガスタ家当主の顔を交互に見る。
「えっと、セインスよ。ワシが家名を変えるということか?」
リーガスタ中将が、セインスの顔をマジマジと見ながら言うと、
「ダメですか?」
と、リーガスタ中将の顔を覗き込むようにして、セインスが問いかける。
すると、
「ププッ! フフフフフ……ワアッハハハッ! ダメではない! そうか! ワシがリーガスタじゃ無ければいいのだ! なんだ簡単じゃないか! 幸い今日明日は全ての貴族がここに居る! 好都合だ!」
込み上げてくる笑いを抑えきれなかったのか、リーガスタ中将が大声で笑いだし、なんで気がつかなかったんだとばかりに、セインスの案を受け入れるような口ぶりで、叫んだ。
「でしょ?」
確認する様にセインスが言うと、
「待て待て待て! 家名を変える? 正気か?」
そう言ったリーガスタ侯爵に、
「家名を変えてはいけないという決まりは無い!」
胸を張って言い切るリーガスタ中将。
「貴族としての歴史が……」
と、言葉を発したリーガスタ侯爵に、
「新興国であるレイリスに、歴史とは片腹痛いわ!」
リーガスタ中将か、兄の言葉を遮る。
言い返そうとしたリーガスタ侯爵より先に、
「リーガスタよ」
と、リーガスタ二人でもなく、セインスでもない声がする。
セインスとリーガスタ二人が、声のする方を見ると、そこに居たのは、
「陛下!」
そう、ヨハネ王であった。
「話は聞かせてもらった。というか、聞こえてきた」
どこか楽しげな表情の王に、
「お聞き苦しいものをお聞かせして、申し訳ございません」
頭を下げるリーガスタ侯爵。
「よいよい。クロームの言う、同じ家名の家があるのが問題との事、目から鱗であったな。確かにややこしい時がある」
頷きながら言うヨハネ王に、
「でしょう?」
と、セインスが笑顔で言う。
「うむ。名を変えるという発想が無かったからなぁ。だが、良い案である」
そうセインスに言ったあと、ヨハネ王はリーガスタ中将の顔を見て、
「家名の案はあるか?」
と問いかける。
目を閉じて数秒考えた後、リーガスタ中将は、
「一晩考えさせてもらえますでしょうか?」
と、ヨハネ王に答えた。
「一晩で良いのか?」
「明日もフィリア殿下と、セインスの結婚式に、全貴族が出席するでしょう? 周知するのに都合が良いので」
と言ったリーガスタ中将。
たしかに皆が居る時に言えば、余計な手間は省ける。
ヨハネ王はウンウンと頷きながら、
「ならば明日までに決めておくように。リーガスタ侯爵も良いな?」
と、リーガスタ侯爵の顔を見て確認を取る、ヨハネ王。
「はい……陛下の決定に従います」
絞り出すような声で、返事をしたリーガスタ侯爵。
「うむ。なかなか面白い事になった。明日が楽しみだ」
そう笑いながら、ヨハネ王は自分の席の方へ戻っていくのであった。




