頼み
セインスが、自分の結婚式の事を忘れていた事に、信じられないと驚くリーガスタ中将だったが、
「だから、さっさと戦を終わらせねばならんぞ。デービッド王太子殿下の結婚式と、お前とフィリア殿下の結婚式が立て続けに執り行われるのだからな」
と、リーガスタ中将が言った。
王族の結婚ともなれば、準備に時間がかかるのが普通である。
ましてや王太子となると次期国王なわけで、国を挙げての一大イベントである。
当然、国中の貴族が祝いに駆けつけるわけで、婚約が決まってから、一年以上かけて準備してきたわけである。
戦時中だが、それはそれ、これはこれである。
王族の結婚も同様で、少し結婚式の規模は小さくはなるが、国中の貴族が来ることになるわけだが、年に何度も王都に行くのは、貴族の、特に下級貴族の負担が大きくなるわけで、それを加味して2組の結婚式を、立て続けにとりおこなってしまえとなった訳だ。
「もうすぐ15歳かぁ」
と、セインスは遠い目をする。
「ようやく成人とは知っていても、不思議な感じがするわい」
リーガスタ中将が、セインスを見てそう言う。
これまでリーガスタ中将の弟子となった者は、セインスを入れて6人。
だが、最後まで耐えられた者はセインスのみ。
感慨も一入だろう。
ちなみにキリル大佐も弟子であるが、キリル大佐は、2ヶ月で逃げた。
まあ、すぐに捕まったのだが、リーガスタ中将の特訓には耐えられないと、デービット王太子に、泣いて懇願した。
他の者は一月も耐えられなかったので、優秀なほうなのかもしれない。
さて、話は戦闘に戻るのだが、
「あのオーク、我らを襲いませんかね?」
と、セインスがリーガスタ中将のペット、または使役魔物のオークを見ながら、問いかけると、
「建物を破壊しろって言ってあるから、人は襲わないと思うが?」
と、答えたリーガスタ中将なのだが、
「師匠、あのオークが口に咥えているのは?」
と、1体のオークを指さすセインス。
刺された先にいるオークの口元には、どこをどう見ても人と思わしき姿形が。
「敵兵だな……」
と、リーガスタ中将が小さな声で言う。
「ちゃんと調教してくださいよ」
と、セインスが言ったとき、オークが体当たりしていた城門が、大きな音と共に破壊された。
「まあ、ゆっくりやるさ。とりあえず門などを破壊できたし、兵を入れるか」
と、話をすり替え、上機嫌のリーガスタ中将に、
「食われたくないので、オークを下げてくださいよ?」
とセインスが言うのだが、
「ワシが近くで命令すれば大丈夫だろう!」
と、オークを下げるつもりのない、リーガスタ中将。
「マジで頼みますよ?」
と、セインスが本気で頼みこむのだった。




