本当に人族?
「アレン、俺決めたよ。師匠には絶対逆らわない」
セインスが、アレンに言うと、
「リーガスタ中将はバケモノですね」
と、アレンが答える。
何故そんな事を言っているかというと、リーガスタ中将が生きたオークを縄で縛って、担いで帰って来たからだ。
「オークとか殺すのは簡単だけど、生かしたまま縛って担いでくるとか、本当に人かな?」
と、今まさにオークを縛っている縄を解いている、リーガスタ中将を見ながら、セインスが言うと、
「普通は殺すのも難しいんですけどね……」
と、アレンが呆れて言う。
セインスはリーガスタ中将の下に向かい、
「師匠、どうやったんです?」
と、尋ねると、
「拳で殴り倒して、気絶したところをロープでガチガチに巻いただけだ」
との答えに、
「1匹だったんですか?」
と問いかけると、
「いや、五匹だったから4匹は殺してきた。後で取りに行って焼いて食おう」
と言われたセインスが、
「魔物に食われないうちに、私が取りに行きます。場所は?」
と、場所を聞いた。
「この方向に真っ直ぐ行けば森があるから、その中心部だ」
と、方向を指さしてリーガスタ中将が言う。
「了解です」
と、セインスが答え、部下を率いて回収に向かう。
「お! あったあった。おい解体して運び出すぞ」
セインスがオークの死体を発見し、部下に命じる。
「全て首を斬り飛ばして殺してますね」
と、アレンがリーガスタ中将の腕を褒める。
「血抜きをかねているんだろうな」
と、セインスが言いながら、オークの死体をナイフで切り始めた。
そうして、オークを回収して戻ってきたセインスの目に写る、異様な光景。
「なあ、アレなんだろう?」
と、セインスが隣にいるアレンに尋ねる。
「私に聞いても知るわけないじゃないですか。大佐と一緒に行ってたんですから」
と、アレンが返すと、それもそうかとセインスは、一人の男に声をかける。
「キリル大佐、アレなんなんです?」
セインスが声をかけたキリル大佐は、国軍王都部隊の大佐であり、リーガスタ中将の副官でもある。
「ああ、クローム大佐か。見ての通りだ」
キリル大佐がそう言ったのだが、
「見てますが、状況が掴めないので、聞いているのですけど?」
と、セインスが言うと、
「簡単に説明すると、クローム大佐が出発した後、中将がオークの縄をはずして、オークを叩き起こして、屋敷の中にオークを放り込んだんだ」
「まあ、そこまでは予定通りですから、分かりますけど」
「でだな、2時間ほどでギガラットやジャイアントローチを、オークが食い尽くしたようで、屋敷から出てきたんだ」
「出て来たオークを殺して終わりでしょう?」
「うむ、我々もそう思って準備していたんだが、出てきたオークが中将を見るなり両手を上げて、ゆっくり近寄って中将の前で両膝を突いて、土下座したんだ。まるで、言うこと聞くから殺さないでと言わんばかりに」
「そんな事あるんですか⁉︎」
「信じられないだろうが、この目で見たから事実だ!」
「それで、なんでオークが師匠を肩車して走り回ってるんです?」
「中将がオークの頭を撫でたら、オークと意思疎通ができるようになったと仰ってだな。で、アレだ」
「師匠ってテイマーだったんですか? てか、テイマーって熊や狼をテイムするじゃなかったんですか?」
「人型魔物をテイムしたという話は、未だかつて聞いたこと無いですね」
と、ため息混じりのキリル大佐。
「あの人、本当に人族なのかな?」
と、セインスはオークの肩に乗って、笑っているリーガスタ中将の姿を、見つめるのだった。




