聖人教
ここに出てくる宗教は、実際の宗教とは全く関係ありません。
フィクションです。
セインスは、教会にいる人達に聞こえるように、大声で叫ぶ。
「聖人教の神父よ! 神を騙る悪魔に踊らされている愚か者よ! 信者を盾がわりにして、奥で引きこもる卑怯者よ! 怖くて外に出られないくらいなら、とっとと逃げろ! 泣いて土下座して謝るなら、見逃してやるぞ〜!」
セインスの叫びに、信者達の目が怒りに染まる。
その後、他のクローム隊の兵士達が、
「やーいやーい! 弱虫神父! 僕ちゃん怖いから信者たち守ってぇん〜とでも言ったのか〜?」
「ギャハハ! 言ってそうだ! 弱虫神父は今頃シーツかぶって震えてそうだぜ!」
などと、大きな声で馬鹿にしていると、
「誰が弱虫神父だっ!」
と、教会のドアを開けて出てきたオークが1匹。
「おい、オークが何か言ってるぞ?」
と、アレンに向かってセインスが言いながら、器械式の弓をアレンから受け取る。
「大佐、あれが神父です」
と、アレンが一応説明する。
白い服を着た贅肉の塊だったが。
「おいオーク! お前に人の言葉が分かるかあやしいが、オークが住むのは森の中だ! とっとと森に帰れ!」
と、セインスが挑発すると、
「やかましい! レイリスの異教徒共がっ! 人族こそ至高の種族との、神の教えを理解出来ない蛮人がっ!」
と、どこが顎かわからない三重顎の肉を震わせながら、神父が叫ぶ。
「悪魔の戯れ言を信じてる馬鹿が、何をほざくかっ!」
と、セインスが悪魔呼ばわりすると、
「悪魔は貴様だろうが! レイリスの亡霊がっ! 悪魔の手先の亡霊を飼ってるレイリス国は、悪魔に取り憑かれた国だ! 滅ぼさねばならんのだ!」
と言った。
セインスの事は、既に知っていたようだ。
「てめえに亡霊呼ばわりされる道理はねぇなぁ。ブクブク太った体に、いたるところに飾られた宝石。欲に塗れたオークが偉そうに!」
と、セインスが言い返すと、
「これは神が与えてくださったものだ!」
と、反論する神父に、
「神がメシや宝石をくれるわけねえだろうが!」
と、眼鏡の右レンズを跳ね上げながら、セインスが言うのだが、
「我らの神は、信仰深き人に褒美をくださるのだ!」
と、神父は酔ったような表情で、言い返した。
「悪魔からの褒美だろうなぁ。なら、俺からも褒美をやろう。純心な少年からの贈り物だ。受け取れ!」
その言葉と同時に、セインスの器械式弓から一本の矢が放たれた。
喚く神父の、どこが首だかわからない三重顎の首に、セインスの放った矢が刺さる。
前のめりに倒れた神父。
その出来事に騒然とする信者達。
「鉄弓隊、適当に矢を放て」
と、セインスは鉄弓隊に命令する。
「狙いは?」
と、問われたセインスは、
「神父の周りで、右往左往してる教会のやつらだ」
と、倒れた神父の周りにいる、教会関係者を目標とした。
「了解です! 弓引け! 狙いは白い服を着た教会の奴らだ! きっちり届かせろよ! 放て!」
との号令に、40人の鉄弓隊が、いっせいに矢を放つ。
次々と矢が降り注ぎ、教会関係者に当たっていく。
「お! かなり当たったな。さて、信者達はどう動くのかな。逃げるなら捨て置いてやるが、向かってくるなら覚悟して貰おう」
と、セインスが呟く。
「一部信者が、こちらに向かって来ましたね」
とアレンが言うと、
「命を粗末にする馬鹿がっ! 鉄弓隊、狙える距離になったら撃て!」
と、命じると、近づいてきた信者に向かって、次々と矢が飛び、バタバタと信者が倒れていく。
「動かなかった信者達が、逃げ出しましたね」
と、アレンがニヤリと笑う。
「ああ、それでいい。出来るだけ殺すなって命令だからな。騎兵! 槍兵! 教会を制圧しろ!」
セインスが新たな命令を出す。
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「大佐、制圧完了いたしました」
との報告を聞いたセインスは、
「早かったな。じゃあ、教会の中の金目の物を運び出せ。民家は襲うなよ」
と、教会の物品の接収を指示する。
「もちろんでさぁ」
と、部下が笑って答えた。
セインスの前に運ばれてくる、金になりそうな物を見て、
「奴ら、溜め込んでやがったなぁ。なんだ? この変な像」
と、疑問の声を上げたセインス。
それは20センチほどのドス黒い木像。
まるで血が乾いたときの黒のような色だ。
「聖人教の神とやらの像です。ヒュブリス神とかいうらしいです」
と、運んで来た兵士が、セインスに説明した。
「へぇ。おい、この変なのはいらねぇから、捨てておけ」
そう言ってセインスは、ヒュブリス神の像に興味をなくした。
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