挑発
セインスは教会の建物まで、200メートルほどの場所に到着して、
「また凄い数の信者だな」
と、言葉を漏らした。
教会の周りを埋め尽くす、信者の男達を見たからだ。
「ウェインライド国民全てが、聖人教信者ですからね。兵士以外の成人男性の民を、教会の周りに集めたと言っても、過言ではないでしょうね」
と、アレンが言う。
「中将も、厄介な事を私に押し付けたなぁ」
と、ボヤいたセインスに、
「信頼されてるのでしょう」
とのアレンの言葉に、セインスが、
「私は成人前の子供のはずなんだがなぁ」
と、言ったのだが、
「あー。多分大佐の事を、子供と思ってる兵士はいませんよ?」
と、アレンが言うと、
「なんでだよ! どこからどうみても、可愛い子供じゃないか!」
と、セインスが少し怒るが、
「おいみんな、大佐がなんか訳の分からないこと言ってるぞ?」
と、アレンが周りの部下たちに、話を振った。
「オーガを矢の一撃で倒す子供なんか、居るわけねぇですねぇ」
と、アコースが言い、
「私、ゴブリンを右手で首絞めて殺しながら笑ってるところを、何度も見ましたけど、アレを子供が出来るとでも?」
と、デニスがそれに続き、
「ワイバーンを、一人で射殺す大佐のどこが子供だと?」
との言葉に、弓兵達がウンウンと頷き、
「戦場での大佐はバケモンですけど? 我ら護衛隊は、必要なのかと疑問に思ってしまいますから」
と、アレンの部下達が、自分たちの役目に疑問を持っていることを暴露し、
「このあいだ、鉄弓で敵兵斬りまくったのは、どこのどちら様でしたっけ?」
と、他の兵達も、次々と疑問の声を上げた。
「まだ14なんだが?」
と、年齢の事をセインスが言うと、
「年齢だけでしょ? 童貞でもないし」
と、アレンが何を馬鹿な事を言っているのかという感じで、セインスを横目で見て言った。
「それ、関係あるか?」
と、ツッコミを入れたセインスだが、
「だいたい、そんな凶悪な顔した子供なんて、居ませんぜ?」
と、極悪顔のドワーフの部下が、セインスに言う。
「お前が顔の事を言うかね? 額の傷以外は可愛いだろう? それに名誉の負傷なんだから」
と、不満気に言うセインスに、
「大佐、敵からなんて呼ばれてるか知ってます?」
と、偵察に出るのが任務の、鳥の獣人シデンが、セインスに問いかける。
「戦場に現れた天使とか?」
と、セインスが言うと、
「ご冗談が上手いですね。天使とか、間違っても言われていませんよ。レイリスの青い亡霊って言われてるらしいですぜ?」
と、セインスの言葉を冗談と切って捨て、敵からの呼び名を伝えるシデン。
「いたいけな子供になんて言い草だよ! 怒った。奴ら皆殺しにしてやる」
と、セインスが言うと、
「そんな物騒な事言う子供が、どこにいますかねぇ?」
と、呆れたアレンに、
「ここに居るじゃないか!」
と、胸を張ってセインスが言うと、
「だから誰も子供だと思ってないんですって!」
と、アレンの声が大きくなった。
「解せない……」
と呟くセインスに、
「もうその話はいいですから。神父をどうやって誘い出すんです?」
と、話を戻すアレン。
「下手に攻撃しても、引き篭もるだけだからなぁ。挑発でもしてみるか」
と、セインスがニヤリと笑う。




