王都に戻る
セインス率いる遊撃隊は、ノードス伯爵領からウェインライド国兵を一掃して、王都に戻った。
「ただいま〜」
と、明るい口調でセインスが自宅に戻る。
「おかえりなさいませ、お館様」
と、出迎えた女性。
「ああ、ローレライただいま。アレンは事務処理が終わったら帰ってくるから、もう少し待て。あと、身重なんだからわざわざ出迎えなくてもいいぞ? で、フェルは?」
と、セインスがローレライの身体を思いやる。
ローレライはアレンと一緒に、クローム家の家臣となったが、アレンとも一緒になった。
つまりアレンと結婚したのだ。
ヴェガの軍にいた時、同じ小屋でアレンと暮らしていたが、その時は二人は男女の関係ではなかった。
アレンの忍耐力が優っていたからだ。
だか、自分に自信があるローレライは、アレンが自分を見る目が、当初から変わらない事に不満が出てくる。
同じベッドで寝ていて、真ん中のシーツのバリケードを一度たりとも越えて来ないのだ。
最初こそ、満足に思っていたが、それがだんだん不満に思えてきたのだ。
この男は、私を何だと思っているのだ!
この美貌と色気が、眼中に無いのかと。
ローレライのプライドが傷ついたのだ。
セインスの家臣になる事に決め、王都に赴き、クローム男爵の館に到着すると、部屋は別々になった。
当然であるのだが、一人で寝る事に寂しさを覚えるようになってしまったローレライ。
隣からアレンの寝息が聞こえない。
それだけの事なのに、気になって眠れないのだ。
翌日の夜、ローレライはアレンの部屋に侵入する。
まだ、屋敷には執事やメイドといった家人が居なかったので、誰にも見つからずにアレンの部屋に入ると、ローレライはアレンの寝ているベッドに忍び込む。
アレンの寝息を聞くと、心が落ち着く。
ローレライはこの時、自分の中でアレンという存在が、自分には欠かせないものになっていると、自覚してしまった。
欲しいと思ったら、我慢などはローレライはしない。
その夜、寝ているアレンをローレライが襲った。
まあ、そんなわけでローレライのお腹にいるのは、アレンの子である。
妊娠が分かったローレライが、セインスに報告すると、
「身重で戦場は無理だし、ローレライは屋敷の警備長をしろ。部下も付けてやるからローレライが動くのではなく、部下を上手く使え。決して無理するなよ?」
と言って、セインスはローレライを屋敷の警備担当に変えたのだった。
フェルの居場所を尋ねられたローレライは、
「フェル様はお館様の好物の、ミノタウルス丼を作ると、キッチンで奮闘中です」
と報告をした。
「お前止めろよ! せっかくのミノタウルスの肉が台無しになるぞ!」
と、セインスがローレライに言うと、
「フェル様の料理の腕は、格段に上がりましたよ?」
と、返ってきた言葉に、
「本当かよ……」
と、信じられない表情のセインス。
「フェル、ただいま〜」
と、セインスはキッチンに居たフェルに声をかけた。
「あ! セインス君! おかえり!」
と、フェルがセインスの顔を見て、笑顔で言うと、
「料理の勉強してたんだって?」
と、聞いたセインスに、
「聞いて驚け、私は料理の賢者となった!」
と、胸を張るフェル。
「こないだまで、魚の丸焦げしかできなかったのに?」
「こないだって、それ一月前でしょ? 男児3日会わずば刮目して見よって言葉あるけど、女児だって一月有れば変わるわよ?」
「女児って、フェルは成人してるし」
「細かい事はいいのよ! 完成したから、さあ食べよう! 自信作よ!」
と、フェルはダイニングに、出来た料理を運ぶ。
「頂きます」
と言って、ミノタウルス丼を口に運んだセインスは、
「うっ、うまい。フェル美味いよ!」
と、向かいに座るフェルを褒める。
「でしょ!」
と、満足気なフェルの声が、返ってきたのだった。




