青い亡霊
前話、少し改稿してます。
「被害は?」
敵を殲滅した後、セインスがアレンに聞く。
「負傷者25名です。死者は無し! クローム隊は負傷すら無しです」
と、アレンが報告すると、
「上出来だ! 中将から借りてきた部隊に死者が出なくて良かった」
とセインスは静かに言う。
「指揮官を失った敵など、烏合の衆と変わりませんから」
と、アレンが笑うと、
「まあな。だが油断はするな。個人が強い場合もある」
と、浮かれているアレンに、釘を刺すセインス。
「肝に銘じます」
と、アレンが言うと、
「さて、ここの制圧が終わったから、隣の地区の応援に向かうことにするが、その前に兵達に暖かい食事の準備と、死んだ敵兵から装備を外して燃やして埋めておけ。死霊にでもなられると厄介だ」
と、アレンに指示するセインス。
「了解です」
と、アレンは兵達に伝えるため、その場を離れる。
一人、空を見上げたセインスは、
「父さん、母さん、俺の成長具合を見ていてくれたかい? あの川の向こうにまだ居るのか分からないけど、父さんと母さんの仇、パイドを絶対この手で殺してやるから、見守ってくれていると信じてるよ」
と、小さく呟いた。
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セインス率いる遊撃隊は、ノードス伯爵領の国境地帯を移動する。味方の部隊を援護し、その地区を制圧すると、また次の地区へと移動する遊撃隊。
移動する途中、セインスはアレンに話しかける。
「なあ、アレン。うちの兵強すぎないか?」
と。
アレンは、
「大佐。あの訓練を強いた大佐が、今更それを言いますか?」
と、呆れた様子で、セインスに言葉を返した。
「リーガスタ中将が俺にやらせた訓練よりは、かなり軽めだったと思うが?」
と、セインスが言うと、
「大佐がしていた訓練と比べないで下さい」
と、アレンが比較するなと、不満気な様子で言う。
「あの訓練は、俺も死ぬかと思ったもんだが、俺は自分が死にそうになった訓練、お前達にさせてないぞ?」
と、何が不満なんだという感じの、セインス。
「ほほう。私をゴブリンの群れに、短剣1本だけで放り込んだのに?」
と、怨みの篭った視線を、セインスに向けるアレン。
「ゴブリンとか、大人の兵士なら素手でも倒せるだろうが!」
と、アレンの視線を感じたセインスは、声を少し大きくして言うが、
「大佐の基準が、既にオカシイのをご理解ください。ゴブリン10匹ですよ? マジで死ぬかと思ったんですからね」
と、アレンがセインス基準で考えるなと、訴える。
ゴブリン10匹相手に、短剣1本で立ち向かうなど、兵士であっても自殺行為に等しい。
弱い部類の魔物でも、数は驚異なのだ。
「アレはたまたま10匹だっただけだ。誤差の範囲だ」
と、アレンから顔を背けるセインス。
「他の兵達は3匹だったのに、私だけ10匹……」
と、ブツブツと愚痴るアレンに、
「過ぎた事を今更言うなよ。生きてるんだからいいだろうが」
と、開き直るセインス。
「みんな死にかけてましたけど?」
と、アレンは自分だけが被害者では無いと言う。
「誰も死んでないじゃないか!」
「たまたまですよ」
「俺なんてオーガの群れに一人で叩き込まれたんだぞ! オーガ20匹だぞ!」
と、セインスは自分だって死にかけたんだと、話をすり替えようとするが、
「それは、リーガスタ中将に文句言って下さい」
と、アレンは関係ないでしょうと言う。
「もちろん言ったさ! そしたらトロールの群れならいいだろうって、トロールの群れに放り込まれた。幼気な少年一人に、トロール3匹とか、体格差考えて欲しかった……」
と、数ヶ月前の事を思い出すセインス。
「よく生きてましたね……」
と、同情したアレンだった。
この頃、セインスの遊撃隊は、ウェインライド国兵から、レイリス国軍遊撃隊とは呼ばれず、突如現れては消えるところから、部隊の兵が身につけている左肩の青い革鎧にちなんで、レイリスの青肩部隊と呼ばれるようになる。
その部隊の隊長が前線で活躍するたびに、全身青い革鎧を纏い、半分黒い頭髪に、片目が黒いところから、セインスは半分闇に落ちた人物だと噂が流れ、レイリスの青い亡霊と恐れられるようになる。




