セインス突撃
「アコース! クローム隊騎兵! 敵中央へ突撃!」
セインスが、アコースと呼んだのは、レイリス遊撃隊のクローム隊の騎兵長である。
命じられたアコースは、
「はっ! 騎兵! 突撃だぁ!」
と、突撃していく。
クローム隊騎兵とは、セインス直属の騎兵であり、大きな馬に乗って突撃し、敵の部隊を蹴散らすのが役割である。
金属と革でできた鎧をまとい、長い槍を使い突破口を作る者達だ。
数は15騎と少ないが、槍を構えて突撃する、主に人族で構成されている部隊だ。
「デニム! クローム隊槍兵! 騎兵がこじ開ける箇所から、突入せよ!」
デニムと呼ばれた狼の獣人は、
「クローム隊槍兵! 行くぞ!」
と叫んで、走り出す。
獣人の脚力は凄まじく、みるみる敵に迫っていく。
クローム隊槍兵は、その名の通り槍を持つ歩兵部隊で、主に獣人で構成されており、獣人の身体能力の高さを、充分に発揮する事が出来る。
40名が所属している。
各隊に指揮官と副官を置き、それに加えて、アレンがセインスの副官を務め、アレンの部下として、5名がアレンと一緒にセインスの護衛を務める。それと偵察隊として鳥の獣人が3名。
総員で100名がクローム隊と呼ばれ、左肩が青い革鎧を着ける事を許されている。
ローレライは、今はこの部隊には居ない。
「国軍弓兵は、両端から始末していけ!」
と、セインスは国軍に指示を出し、
「アレン、鉄弓式を」
と、アレンに言う。
人族であるセインスが、鉄弓式など引けるはずがないのだが、ギリギリまで細く加工して、セインスでも使えるようにした弓がある。
これもロローシュ伯爵が、セインスのために発注した製品であり、特注品である。
「大佐も突っ込まれますか? 大佐が行かなくても大丈夫かと思いますが?」
と、アレンが鉄弓をセインスに渡しながら言うと、
「指揮官が後ろでふんぞり返ってて、兵がついてくるわけないだろ。アレンはここで弓兵の指揮を!」
と、アレンに命じる。
「了解です。護衛隊、大佐を守れ!」
と、アレンが部下に指示する。
「では、行ってくる! 国軍、私に続けっ!」
そう言ったセインスは、乗っている馬の腹を軽く蹴りゆっくり走らせる。
敵部隊に向けて鉄弓式の弓で矢を放っていくセインス。次々と敵兵が倒れていくのを見つつ、接敵したセインスは、鉄弓式の上部に取り付けられた槍の穂先で、敵兵を斬りながら馬を進める。
板バネから作り出された鉄弓式の弓は、適度なしなり具合と、強度を兼ね備えているため、刺すのではなく斬るほうに適している。
しかも、敵の首を狙って斬るセインスだから、斬られた敵兵が向かうのは、あの世だけだ。
もう直に人を殺しても、吐気を催すことは無くなっているセインス。
「さすが大佐。弓兵、敵兵が逃亡しだしたぞ! 逃すな!」
アレンはセインスが敵を次々と屠るのを見つつ、レイリス軍の弓兵の矢は、敵に向かって飛び続けるのだった。




