お手柔らかに
その声にセインスは、
「あ! デービット殿下。 誘われたのでついて来ちゃったんですけど、まずかったですか?」
と、聞くと、
「いや、かまわんが、フェル姉さんやお前の部下が屋敷に居ないと、城まで探しに来てたぞ?」
と、セインスを探していると言ってきた。
「昨日の夜に、早朝出かけるって言っておいたのに」
と言うセインス。
昨夜、アレンやローレライに夕食の時に言ったはずだし、フェルにもベッドの中で言ったはずなのだ。
アレンとローレライは多少酔ってはいたが、フェルは酒を飲んでいなかったのに、聞いていなかったのだろうかと、セインスは溜息をつく。
リーガスタ中将が、
「デービット殿下、この者と親しげな様子ですが、どういったご関係で?」
と、デービット王太子に尋ねると、
「リーガスタ中将じゃないか。もしかしてセインスを誘ったのは、リーガスタか?」
と、聞き返されたので、リーガスタ中将は、
「はい。早朝、訓練場を走っていたら、珍しく若者が走ってたので、声をかけてそのままここに」
と答えると、
「セインス、なんで訓練場を走ってた?」
と、セインスの方に顔を向けて、聞いてくるデービット王太子。
「体が鈍らないようにと」
と、理由を説明したセインスに、
「相変わらず真面目だな。リーガスタよ、後で紹介しようと思っていたが、ちょうど良い。前に遊撃隊を組織すると伝えたのを、覚えているか?」
と、デービット王太子が、リーガスタ中将に問いかける。
「はい。応援部隊として、激戦地に派遣される部隊というやつですな」
と答えたリーガスタ中将。
「うむ、その部隊の隊長を、このセインスに任せるつもりだ」
と、答えたデービット王太子に、
「殿下! こんな若者に? まだ成人前でしょう!」
と、声を大きくなったリーガスタ中将。
「13だ。あと、妹のフィリアの婚約者だ」
サラッと言ったデービット王太子だったのだが、周りで聞き耳を立てていた兵士達が、
「「「ええっ?」」」
と、声を漏らす。
「殿下」
と、声を出したリーガスタ中将に、
「なんだ?」
と、言ったデービット王太子。
「私には成人前の少年が、部隊を指揮統率できるとは思えないのですが」
と、もっともな意見をリーガスタ中将が言うと、
「腕はある。それは後で確かめて貰うとして、指揮や統率は、リーガスタ、お前に鍛えて貰おうと思っておる」
と、デービット王太子が言うと、
「ほう、私に預けると申されてると解釈しても?」
と、リーガスタ中将の眼が少し険しくなった。
「その通りだ」
「過去、私に何人預けましたかな?」
「5人くらいだろ?」
「最後まで耐えられた者は?」
「居なかったが、セインスは既にかなりの腕だから、耐えられると信じておる」
「期間は?」
「セインスの成長しだいだろうが、今のところ一年」
と、デービット王太子が言うと、
「フィリア殿下の婚約者として、相応しい男にしてみせましょう」
と、リーガスタ中将の眼がキラリと光った。
「お、お手柔らかに」
と、言うしかなかったセインス。




