センス壊れる2
王にそう言われたセンスは、
「まだあるんですか?」
と、目を見開く。
「セインス・クローム男爵が、謁見のために城を訪れたおり、たまたま居た我が娘フィリアと、謁見の間にて出会う。セインスが運命の男だと天啓を受けたフィリアが、その場にて求婚。だが、まだ未成年のため、15歳になるまで待ってもらえるならばと、ワシに伺いを立てた。すぐに飛び付かなかった聡明さを気に入ったワシは、セインスの15歳の誕生日に、婚姻を結ぶ事を提案。それを受け入れたセインス・クローム男爵を、15歳になったその日に、子爵に陞爵する事を、決定した!」
と、未来の事まで決められてしまったセンス。
さすがに理性が崩壊したのか、
「ちょっと待って〜! 会ったのはお茶会だし、デービット殿下の紹介だし、多分フィリア殿下は、私の事を生意気な奴だと思ってるはずですよ! 運命の男とか、天啓とかなんですか! 求婚? されてません!」
と、敬語があやしくなったセンスの、心からの叫びである。
「それは今からされることになるから、この台本のセリフを覚えろ」
と、渡された紙の束。
それは簡素に纏められた、芝居の台本のようなもので、センスのセリフとフィリア王女のセリフなどが、身振り手振りの行動の注意書き入りで、書かれてあった。
いったいいつ用意したのか?
台本を見もせず握りつぶしたセンスは、
「フィリア殿下も、何か言わないと、私と結婚させられちゃいますよ⁉︎ いいんですか、このままで!」
と、フィリア王女の顔を見ながら言ったのだが、
「いい!」
「ほら! フィリア殿下もいやだって言って……え?」
フィリア王女の返事を想像して、王に言い換えそうとしていたセンスの予定は、早くも崩れた。
王に言い返すために、センスの顔は、王の方に向いていたのに、フィリア王女の顔をもう一度見るハメになったセンスに、
「結婚する」
と、フィリア王女が言う。
しっかりした声と口調で。
「えーと、フィリア殿下?」
と、覗き込むように、フィリア王女を見たセンスに、
「私、容姿には自信あるんだけど?」
と、少し顔を赤らめたフィリア王女。
「そりゃ認めます! めちゃくちゃ美人ですから!」
と、センスが言うと、
「じゃあ、何が不満?」
と、尋ねられたので、センスが、
「会ったばかりの男、それもこんな悪人顔した、どんな性格かも分からない男と結婚なんて、フィリア殿下は嫌でしょう?」
と聞いてみると、フィリア王女は、
「貴族なら、そんなのよくある。悪人顔とは思わないし、結婚式まで1年以上あるから、性格はそのうちわかる」
と、平気な様子で言うのだった。
「えっと、あ、もし婚約した後で、私が極悪非道な男だと分かったら、どうするのです?」
と、なんとか質問で返したセンスに、
「今までの言動で、そんな人ではないという確信はある」
と言い切られ、
「えっと、えっと、じゃあ、私がとんでもないド変態だったら、どうするんですか!」
と、別の角度から質問したセンスに、フィリア王女は、
「受け入れる」
と、自身満々で言う。
その答えに、センスは頭を抱えて、
「うがぁああ」
と、唸ってしまった。




