センス、王城に行く
そしてセンスだが、事前の話し合いにて、
「私の名が公になるのは避けたいのですが」
と、デービット王太子に、貰ったばかりの眼鏡をクイと上げながら言う。
この眼鏡の製作に、センスは10日も眼鏡職人と過ごす事になったのだが、その事は後に語るとしよう。
「何故だ?」
と聞かれたセンスは、デービット王太子に、全てを話した。
全てを聞いたデービット王太子は、ブツブツと何か呟きながら、考え事を始める。
黙って待っていたセンスに、デービット王太子が、
「ノードスを城に呼び出す。ロローシュとセンスも来い。今後の事を相談する」
と、言われてそのままレイリス城に連れられた。
「父にはノードスが来た時に会わせるから、暫くは城で自由にしていてくれ。数日でノードスは来るはずだから」
と、到着してすぐ、来賓用の客室に通され、そこで寝起きするように言われる。
「自由にって、いったいどうしたら?」
と尋ねたセンスの言葉に、
「ルーシーおばさま、センスを頼みますよ?」
と、横にいたロローシュ伯爵に、センスを託したデービット王太子。
「うむ、仕方ないの」
と、言ったロローシュ伯爵だが、どこか嬉しそうな顔なのは、気のせいであろうか?
「どこか行きたい所はあるかの?」
と、ロローシュ伯爵に聞かれたセンスは、
「なら、訓練場に。体を鍛えたいので」
と、答える。
「ならこっちじゃ。着いてこい」
と、部屋を出て行くロローシュ伯爵。
「殿下、失礼します」
と、頭を下げてから、ロローシュ伯爵を追いかける。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぁ〜広いなぁ」
と、城の裏に連れてこられたセンスは、その広さを見て呆気にとられた。
「槍、剣、弓の訓練場があるが、どこに行く?」
と、センスに話しかけたロローシュ伯爵に、
「とりあえず弓でお願いします」
と、返事した。
ロローシュ伯爵は、知り合いらしき兵士をつかまえ、センスに訓練場を使わせる旨を伝え、他の兵士が見る中、センスが練習を始めたのだが、それを見ていた兵士達が、
「すげぇ。あのガキ、さっきから真ん中ばっかりだぜ?」
「ロローシュ伯爵様が連れて来たんだってよ。人族に見えるが、エルフの血が入ってるのかもよ? 風魔法補正とかあるかも」
「それでも全部真ん中とか、凄くないか? しかもあの距離だぜ?」
と、少し話題になったのだった。
「うーん、やっぱり右眼で見ると、遠くまで狙えるけど、弓のせいか矢のせいか、遠くまで飛ばないなぁ」
と、センスが呟くと、
「そりゃ、弓の限界じゃろうの」
と、センスの練習を見ていたロローシュ伯爵が、口を挟んできたので、
「ですよね。それで金属製の弓とか作れないかと思っているのですが、それはそれで、私の力で引けるのかとも思うのですよ」
と、考えていた事を話すと、
「金属製の弓とな?」
と、問われたセンスは、
「馬車の荷台の下についてる、板バネとか言うやつを加工したら、弓にならないかと思っているんですけど、ロローシュ閣下、どう思われます?」
と、聞いてみたセンス。
「確かに面白い考えではあるが、引けるかのう?」
と、誰もが思う事を、ロローシュ伯爵が言う。
「やはり鍛えないと無理ですよね」
と、認めたセンスだが、
「とりあえず見本みたいなものを、わしが作ってやろう」
と、ロローシュ伯爵が言ってくれたので、
「良いんですか?」
と、嬉しそうにセンスが言うと、
「構わんよ。娘の命の恩人でもあるしな」
と、笑顔のロローシュ伯爵。
「ありがとうございます」
と、深々と頭を下げてお礼を言ったセンス。
「眼鏡もワシが作りたかったのに、デービットに取られてしもうたしの……」
と、ロローシュ伯爵が小さな声で呟いたが、センスは浮かれていて、聞き逃したのだった。




