和平
そして、ヴェガ騎士のところに挨拶に行くと、
「センス曹長、もう動いて大丈夫なのか?」
と、言われたセンスは、
「まだ体がフラフラするし、目の調子も良くないんですけど、ずっと寝てるのも体が痛くて、とりあえず少し動こうかと。治療して頂きありがとうございました」
と、頭を下げて礼を言うと、
「何を言う。部下を助けるのは当たり前だ。私がもっと警戒していれば、お前が傷付く事もなかった。助かったよ。あまり無理するなよ?」
と、ヴェガ騎士に言われる。
「そういえば、和平はどうなりました?」
と、尋ねたセンスに、
「それがだな、一応明日にアストン国の第一王子が、交渉に来る事になった。あのブタは人質として牢に放り込んである。アストン国側には、交渉役だったジジイに状況を説明して来いと、送り返したのだが、どうなるかまだ分からん」
と、答えが返ってきたので、センスは、
「和平交渉中に、王族を襲うなど、アストン国は卑怯にもほどがありますね」
と、言うと、
「どうも、あのブタが内緒で兵士を抱き込んでの、凶行らしいがな。交渉役のジジイは、聞かされて無かったと言い張るし、他の兵士達も聞いていなかったと言っている」
と、ブタの暴走だった可能性を口にしたが、
「なるほど。しかし許される行為ではありませんから、我が国は優位に交渉できますね」
と、センスが言うと、
「デービット王太子殿下が、生きているからこそだがな。お前のお手柄のおかげさ」
と、笑顔でヴェガ騎士が言う。
「役に立てて良かったです」
と、センスが言った時、
「あ! セインス君見つけた! 寝てなきゃダメじゃないの!」
と、フェルが部屋に入って来た。
「やべっ! もう見つかっちゃた」
と、センスが言うと、
「もう! 早く部屋に戻るのよ!」
と、センスの腕を掴み、引きずるようにセンスを連れていこうとするので、
「あああ、ヴェガ様、失礼します〜」
と、引きずられながらセンスが言う。
「おう! ゆっくり寝とけよ」
と、その光景をにこやかな顔で見送ったヴェガ騎士。
翌日の交渉にて、和平が締結された。
条件は、7年間の相互不可侵と、アストン国は五年間で、金貨30000枚をレイリス国に支払う事と、領土の一部、最初に提示した広さより多くをレイリス国に割譲すると決められた。
ダニエル第二王子については、
「腹違いの弟といっても、こんなブタのために、これ以上金など払えんので、そちらで処分して頂いて結構です。こんなブタでもミンチにすれば、家畜の餌程度にはなるでしょう」
と、ダニエル第二王子を目の前にして、そう言って引き取りを拒否されたため、アストン国第一王子の目の前で、デービット王太子がダニエル第二王子の首を斬り飛ばした。
ブタの最後の鳴き声は、
「お前さえいなければ、私がこんなに太る事も、卑怯な手を使ってでも手柄を欲しがる事も無かったのに」
で、あった。
ブタはブタなりに腹違いの兄に、何か思うところがあったようだが、レイリス国には、関係のない事である。
その数日後、ロローシュ伯爵家にて、デービット王太子による褒賞式と、任命式が行われた。
功績が認められ、騎士から準男爵になったのは、アウス家、バウ家、ジュンス家。
アストン国第二王子を、捕虜とした功績という事に表向きなっている。
ヴェガ騎士家は、あの交渉の時に準男爵に昇爵していた事にされ、他の家と同じく一つ爵位が上がり、男爵に昇爵される。
あと、何故かミシェル・ヴェガの嫁ぎ先が決まった。
寝込んで意識の戻らないセンスの見舞いに、ロローシュ伯爵の屋敷から、毎日のように国境国軍の宿舎に来ていたデービット王太子は、そこに詰めていたヴェガ騎士や、兄のデニスに、着替えなどを運んでいたミシェルを見かける。
「騎士の娘がわざわざ運ばなくても、兵士にやらせれば良いだろう?」
と、話しかけたデービット王太子に、
「父に私の顔を見せて、多少の気分転換になれば良いなと思いまして。普段は戦場に近づくと怒られますが、今は停戦間近で、戦闘も無いし安全なのでしょう?」
と、笑ったミシェルの飾り気のない笑顔が、デービット王太子の心を射抜いたのだ。
ヴェガ騎士家は、あっという間に男爵家になったのだが、近く子爵に任じられる事が確定となった。




