いってぇ!
なんかふわふわして、気持ちいいなぁ。
どこだろここ?
綺麗な小川があるな。
喉渇いてるし、飲もうかな。
うん、美味いな。
あれ? 川の向こうに、懐かしい匂いがするな
あ! 父さん! 母さん!
え? こっち来るなって?
なぜ? あれ? 父さんと母さんは、死んだはずじゃあ?
とりあえずそっちに行くよ!
え? 川に入るな? 戻れ? どこに? あっち? あの光のほう? うん、分かった。
ねえ父さん? 光に向かって歩くと、頭が痛いんだけど? あれ居なくなった。
どうしよう、父さん達を探した方がいいのかな?
でもあっちに行けって言われたしなぁ。
とりあえず歩くか。
一歩進むたびに、痛さが増すけど良いのかな?
痛いなぁ……痛いなぁ……いてぇなぁ、あー、いってえぇ!
「いってえぇ!」
「セインス君!」
「あれ? その声はフェル? なんか視界がボヤけてよく見えないけど……」
とセンスが言うと、
「目が覚めて良かった!」
と、抱きつくフェル。
「ちょっと、フェル! 痛い! てか、頭がすげー痛いんだけど? 俺、何かあったのか? てか、ここどこ?」
と、フェルを引き剥がしながら言うセンスに、
「覚えてないの?」
と、剥がされてたまるかとばかりに、しがみつくフェル。
「なにが?」
と聞いたセンスに、
「デービットを守って、額に毒矢を受けたのよ? それからもう5日も目が覚めないから、本当に心配したんだから!」
と、言ったフェルの言葉で、
「あ! 思い出した! デービット殿下は無事なのか⁉︎」
と、フェルに問いかけたセンスに、
「うむ、お主のおかげで、傷一つ無い。助かった。礼を言う」
と、フェルとは別の、男の声がした。
その声に聞き覚えのあったセンスは、
「デービット殿下? ああ、寝たままとか失礼いたしました」
と、ベッドから起きあがろうとするのだが、抱きついたままのフェルが邪魔で、すぐに起き上がれずにいると、
「よいよい。寝ておけ。たまたま見舞いに来た時に、目が覚めたのだから気にしなくて良い。体調が戻るまでは、しっかりと寝ておけ。フェル姉さん、私は皆にセンス曹長が目を覚ましたと、知らせてきてやるから、センス曹長についてて看病してやってくれ」
と、デービット王太子が、そう言うと、
「もちろん!」
と、フェルが抱きついたままのセンスを、ベッドに押さえ込むようにして寝かしつけるのだった。
知らない人が見れば、確実に少年が襲われているように見えるだろう。
その光景を見て、デービット王太子は、
「なんとなく納得だな。姉さんに相応しい……」
と、小さな声で呟きながら、部屋を出るのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「センス曹長が目を覚ましたぞ」
と、デービット王太子が、騎士達が集まっていた部屋に入るなり、そう言った。
「おお! デービット殿下、知らせて頂きありがとうございます」
と、エイブラム中佐が代表して礼を言うと、
「まだ眼の焦点が合っていないような感じだったが、とりあえず意識が戻ったから、一先ず安心だろう」
と、言ったデービット王太子に、
「ですな! 5日も意識が戻らなかったから、かなり心配でしたが。神経毒が目を侵して無ければ良いのですが」
と、治療したヴェガ騎士が言う。
「そこだがな。センス曹長の右眼の瞳が黒かったのだが、大丈夫だろうか? 傷痕も残っているし、傷の近くの頭髪も黒く変色してしまっているし、少し心配だ」
と、デービット王太子の声が、少し小さくなる。
「目が? 頭髪は私も思っていましたが。とりあえずは意識が戻った事を喜びましょう」
と、明るく言うヴェガ騎士に、
「うむ、そうだな。本当に良かった」
と、デービット王太子は、少し笑った。




