歓迎パーティー
ロローシュ伯爵邸にて、王太子歓迎パーティーが開催される。
ロローシュ領の町などを、代官として任されている子爵や男爵はもちろん、騎士爵の当主達は、妻や子供を引き連れて参加する。
戦場は落ち着いているので、副官達に任せてある。
何故そうまでして参加するのかといえば、王家の者との顔繋ぎは、貴族にとって大事な行事であるし、デービット王太子は、独身なので、妃選びの側面もあるのだ。
王家に迎え入れられる事になれば、家の安定に繋がる。
領地を持つ上級貴族にはなれないが、爵位だけなら宮廷貴族と言われる、領地を持たない貴族の伯爵に慣れる可能性がある。
以前、この国の貴族の紹介のとき、2公3侯5伯と、上級貴族の家の数を紹介したが、それは領地を持つ貴族の数である。
子爵や男爵は、上級貴族の土地の代官として働くと書いたと思うが、国の政治を司る王の補佐として、宮廷貴族となって、領地は無いが、国からの俸禄を貰い、役人として働く貴族や、軍で働く貴族がいるのだ。宮廷貴族で一番爵位が高いのは伯爵である。
上級貴族の代官としての子爵より、宮廷貴族の伯爵のほうが、俸禄は多い。
同じ伯爵でも、領地持ちの伯爵のほうが位は上で力があるが、それでも伯爵。子爵より権限が大きいのは間違いない。
さて、そんな理由もあり、貴族の娘達は気合をいれて、王太子に挨拶に行くのだ。
もちろん、男であっても、王太子に覚えて貰えれば、騎士団への入団の可能性が出てくる。
騎士団とは、騎士軍とは違い、王家の護衛が仕事であり、貴族で無ければ入団出来ないし、秀でるモノがないと入団は許可されないが、次期王となる王太子が、入団を認めれば無条件で入団を許可される。
王家の護衛ならば、王家の女性の護衛もするわけで、そこで恋が芽生えれば、王家から莫大な金額、嫁入り金を持って嫁いでくるので、家が栄える事になる。
そんなわけで、各家は必死なのだ。
が、必死になっていない家が一つ。
準男爵へ上がる事が決定している、ヴェガ騎士家だ。
続け様に爵位が上がる事など、まずあり得無い訳で、ヴェガ騎士家の者達は、ガツガツしたことはせず、丁寧に挨拶をした後、どの家の邪魔にもならぬようにしつつ、他の家との交流を深める程度で、このパーティーを終えようと思っていたので、挨拶に行くのも後の方でと決めていた。
一方、数多くの家からガンガン攻められる、デービット王太子は、息抜きがてらにフェルミナーナと話をしていた。
「フェル姉さん、ぜんぜん変わらないねぇ」
と、デービット王太子が、久々に会うフェルに話しかける。
「そりゃエルフだもん。貴方が小さい頃からほとんど変わってないでしょ」
と、笑うフェルに、
「ルーシーおばさんと同じで、見た目は全く変わらないよ」
「見た目は変わらないけど、変わった事があるんだけど、さて、なんでしょう?」
と、問題を出したフェルに、
「何か変わったの? はて? 髪型とかの見た目じゃないとして、太った訳でもないし、いったい何が変わったの?」
と、聞き返したデービット王太子に、
「男捕まえたの!」
と、直球で答えを言うフェル。
「そんなの分かるわけないじゃん!」
と、呆れたデービット王太子に、
「だよね。あははは」
と、笑ったフェル。
「てか姉さん、私が貴族と知らない男で、可愛くて誠実で強い男じゃないと嫌とか、前に言ってたけど、そんな男居たの?」
と、問いかけてきたデービット王太子。
そう、フェルこと、フェルミナーナ・ロローシュが、伯爵家の娘なのに、騎士軍にこっそり入っていた理由がコレである。
「それが居たのよ! 私を平民だと思っていてなお、命がけで私を守ってくれる可愛い子が!」
と、笑顔で答えるフェルに、
「ルーシーおばさんの許可は?」
と、問いかけたデービット王太子。
「明言はしてないけど、多分オッケーだと思うよ」
「ルーシーおばさんが許可するほどの男か、見てみたいもんだ」
「明日、視察を兼ねた調印にいくでしょ? その時見れるよ」
「ほう! 楽しみだ!」
そんな感じで色々話していた、デービット王太子とフェルミナーナだったが、
「あ、ヴェガ家が挨拶に来たみたいだし、また後でね」
と、席を立つフェルに、
「ああ、じゃあ後でまた」
と、デービットが答えた。
そして、ヴェガ騎士が、デニスとミシェルを連れてデービット王太子の前に跪き、
「お初にお目にかかり、光栄でございます。ロローシュ伯爵が騎士、ドレン・ヴェガにございます。それと、息子のデニスと、娘のミシェルにございます。」
と、挨拶すると、
「デニス・ヴェガにございます。お目にかかれて光栄でございます」
「ミシェル・ヴェガでございます。お目にかかれて嬉しゅうございます」
と、デニスとミシェルも挨拶をする。
「ヴェガ家か。ロローシュから聞いておる。例の件、私に決定権はないが、良い報告が来るであろう。これからも国のために励めよ」
と、言葉をかけたデービット王太子に、
「はっ! デービット王太子殿下に、我が家の名を呼んで頂けただけで、感激でございます。誠心誠意務めさせて頂きます。明日の視察にも同行させて頂きますゆえ、長々と居座るのも、お目苦しいかと思いますので、早めに失礼させて頂きます」
と、ヴェガ騎士が言うと、
「ふむ、では明日、また会おうぞ」
と、デービット王太子が言うと、
「御意」
と、ヴェガ騎士が答え、
「失礼致します」
と、デニスが続いて言い、
「お目にかかれて光栄でした」
と、ミシェルがチラリと、デービット王太子の顔を見て言った。




