その内容とは?
「先日壊滅したという、北のノードス伯爵家のクローム騎士家ですか?」
と、デニスが言うと、
「ああ、立場的にはデニスと同じ、騎士家の跡取りということになる」
と、ヴェガ騎士が答える。
「クローム騎士軍は、壊滅したと聞きましたが?」
と、さらに尋ねたデニスに、
「唯一の生き残り、いや、フェルミナーナ様も生きているから、2人か。フェルミナーナ様もクローム騎士軍に居たそうだ。センスはフェルミナーナ様の上官だったらしい」
との答えに、デニスが、
「伯爵家の娘が、何故騎士軍に?」
と、デニスがもっともな質問をしたのだが、
「それはよく知らないが、よくある上官と部下の恋愛物語らしい。まあ、フェルミナーナ様がセンスを手込めにしたというのが、正しいかもしれんが」
と、少し笑ってヴェガ騎士が言うと、
「エルフですしね」
と、デニスが笑って言った。
「ああ。フェルミナーナ様を逃すために、一人で敵兵に立ち向かったと聞いたな」
と、説明されたデニスは、
「あの弓の腕なら、可能でしょう」
と、納得する。
「センス曹長から、幼少期の事を聞いたのだが、デニス、お前、5歳の時に弱ったゴブリンであったとしても、弓で殺せるか?」
と、ヴェガ騎士がデニスに尋ねると、
「出来るわけないでしょう! 5歳って、弓などまともに引けませんよ!」
と、即座に否定するデニスに、
「だよなぁ。センス曹長は、両親からそうやって育てられたらしい。初めて人を殺したのは8歳だと。オークすら6歳の時に殺したらしいぞ。私ももっと英才教育するべきだったかな?」
と言われたデニスは、
「それ、英才教育というより、虐待では?」
と、返した。
「クローム騎士は、ゴブリンに追われるセンス曹長を、笑って見てたらしいからな」
と、呆れた口調でヴェガ騎士が言うと、
「よく死ななかったな」
と、デニスが言葉を漏らす。
「センス曹長本人も、そう言ってたな」
と、ヴェガ騎士が頷いた。
「えっと、教育はどうでもいいですけど、センス曹長とフェルミナーナ様は婚約中って事ですか?」
と、ミシェルが割って入ると、
「正式にはまだのようだが、そんなようなもんだろうな」
と、ヴェガ騎士が言うと、
「扱いに困りますね。寄り親のお嬢様との婚約に、そのうち騎士クローム家を継ぐという事になるんですよね?」
と、デニスが聞いたので、
「おそらくな。だが、それまではうちの曹長だし、今まで通りでいいぞ」
と、扱いを変える必要は無いと、デニスに言う。
「はぁ、今まで通りって言われても、聞いてしまうと多少気を使いますけど」
と、デニスが言うと、
「本人は、気にしてないだろう。ただ強くなりたいと、東に流れてきただけだ。そんな訳だが、センス曹長のあの進言のおかげで、ヴェガ騎士家は、準男爵の爵位をロローシュ伯爵閣下から賜わる事になった。国王陛下から書状が届きしだい公表となるから、デニス、次期準男爵として恥じぬ男になれ!」
と、パイド騎士の件は伏せて、家が準男爵になるという事を言って、話の方向を変えたヴェガ騎士。
「ええ! 本当ですか⁉︎」
と、驚くデニスに、
「ああ、ロローシュ伯爵閣下のところで、書類にサインもしてきた。その書類が陛下に届いて、正式にお達しがあるまでは他言するなよ?」
と、2人を見てヴェガ騎士が言うと、
「もちろんです。というか、センス曹長に借りが出来ましたね」
と、デニスが言うが、
「まあ、そうとも言うが、私は自分の行動が正しく評価されたからだと思っておる。部下の手柄は部下に。コレを貫いてきた結果、ロローシュ伯爵閣下が私を信頼して下さったのだ。デニスも部下の手柄は、正しく評価してやれよ?」
と、やる事をやった結果だと言う、ヴェガ騎士。
「はい。その教えは、ここに刻み込んでますから!」
と、デニスは自分の胸を右親指で叩いて見せる。
「うむ。さて、準男爵の祝いに、ミシェル。肩を揉んでくれ」
と、ヴェガ騎士が、自分の肩を叩いてミシェルに言うと、
「はい、お父様。お祝いの肩揉みをしますね」
と、ミシェルが父親の肩を揉みだした。
その後、家族の会話になり、センスの話はそこで終わったのだが、なんとも仲の良い、ヴェガ騎士家である。




