ミシェルの興味
「フェル!」
と、センスが思わず、呼び捨てにしたことで、
「ほほう! 呼び捨てという事は、そういう仲なのか。なるほどなるほど。伯爵家のお嬢様とそういう仲とは、やり手と噂されてたが、間違いないようだ。フェルミナーナ様、お初にお眼にかかります。ヴェガ騎士家の長子、デニス・ヴェガと申します。以後お見知り置きを」
と、デニスが立ち上がってから、フェルに頭を下げる。
ミシェルも慌てて立ち上がり、
「ヴェガ騎士家のミシェルです。ロローシュ伯爵家の方と、こんなところでお会いして、気が動転しておりますが、よろしくお願いします」
と、頭を下げる。
「ロローシュ伯爵家の末娘、フェルミナーナ・ロローシュよ。お二人とも宜しくね。あと、この子は私のもんだから、そっちも宜しくね」
と、センスを抱き締め撫でまわしながら、フェルが言った。
「私のもんって、物じゃないんだから……」
センスが溜息混じりに呟いた。
その後、同席してこの店の人気メニューである、サアタアアンダギという、小麦粉と卵と砂糖を使ったスイーツを、紅茶と一緒に楽しみ、他にも行く店があると、センスを引き連れ店を出て行くフェルを、デニスとミシェルは見送った。
「お兄様、センス曹長っていったい何者ですか? ロローシュ伯爵家のお嬢様が、どう見てもベタ惚れでしたわよ?」
と、ミシェルが聞くと、
「うーん、父上は何か知ってると思うが、よくわからん。ただ、頭は良いし、弓の腕はとても凄いのは確かだ」
と、デニスが答える。
「ちょっと興味が湧きますわね」
と言ったミシェルに、
「おい、ミシェル! 伯爵家と揉め事はやめてくれよ。ウチの寄り親なんだから」
と、デニスが注意する。
「分かってますよ。でも、お兄様も興味ないですか? 一兵士と伯爵家ですよ?」
と、諦めきれないミシェル。
「たしかに、どこで知り合ったのか、どこでそんな仲になったのか気にはなるな」
と、デニスが言うと、
「でしょう? 帰ってお父様に聞けば分かるのかしら?」
「教えてくれるかな?」
「私が機嫌損ねるフリすれば、一発で教えてくれるわよ」
と、笑ったミシェルに、
「父上、お前には甘いからなぁ」
と、少し呆れたデニスであった。
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「父上、尋ねたい事があるのですが」
と、自宅に帰ったデニスとミシェルは、早々に尋ねた。
「なんだ、2人揃って。 今日は街で甘味を食べに行ったのではなかったのか?」
と、ヴェガ騎士が子供達に問いかける。
「行きましたよ。そこでセンス曹長に会ったんですよ」
と、デニスが言うと、
「ほう? センス曹長は甘いものが好きなのか?」
と、返したヴェガ騎士に、
「センス曹長がと言うより、同伴していた女性がでしょうね」
と、デニスが言うと、
「あ、女連れだったのか。うちの兵か?」
と、尋ねたヴェガ騎士だが、
「ロローシュ伯爵家の、フェルミナーナ様です」
と返され、
「いっ」
と、言葉を詰まらせたヴェガ騎士。
「父上、センス曹長とフェルミナーナ様は、とても仲良さそうに見えましたが、どういう関係ですか?」
と、ミシェルが言うと、
「うーん、どうと言われても昔馴染み?」
と、言ったヴェガ騎士に、
「何故疑問形なんですか? 同じベッドで寝たと、フェルミナーナ様がおっしゃってましたが?」
と、追い討ちをかけるミシェル。
「えっ?」
と、戸惑うヴェガ騎士に、
「お父様、知ってるなら教えてくださいませ。知らないふりするんだったら、今後、お父様の肩揉みしませんよ?」
ミシェルが言うと、
「おいっ! ミシェル! それはないだろう! 私の唯一の癒しの時間だぞ」
と、少し声が大きくなるヴェガ騎士。
「なら、教えてください」
「何故そんなにセンス曹長が気になる? ミシェルまさか!」
と、目を見開くヴェガ騎士に、
「お父様、ご安心を。男性としての興味ではございません。年下は対象外ですから。単なる好奇心です」
と、答えるミシェル。
「私はセンス曹長の出自を聞いていません。コズン叔父様が連れて来たって事しか知りません」
と、デニスが言うと、
「他の兵達には言うなよ。いや兵だけじゃなく他言無用だぞ?」
と、念を押すヴェガ騎士。
「はい」
「もちろん」
「センス曹長は、本当の名をセインス・クロームと言う」
そう言って、語り出すヴェガ騎士。




