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クローム


 2日後、簡易砦が完成した。


 堀の側には掘った土が盛り上げられ、その上に柵が張り巡らされ、数カ所に見張り用の櫓が建てられた。


 その日から1か月。


 敵、アストン国が何度か攻めてきたが、いまのところ、たまに怪我人が出る程度で、死者の一人も出さずに撃退できている。


「ふむ、結果は良好だな」

 と、報告を聞いたロローシュ少将は、上機嫌である。


「はい、ロローシュ少将。砦を建設してから、1人の死者も出ていません。かなり有効です」

 と、エイブラム中佐が笑みを浮かべて言う。


「地形の似てる戦地で、活用することにするから、ヴェガ騎士軍を指南役として、各地に派遣することにする。まあ、その前にお主と各騎士達に褒美を取らせたいが、交代の休暇で街に戻った時に、騎士達に我が屋敷に来るように伝えておいてくれ。あと、センス曹長にも来るように伝えろ。とりあえずお主にはコレを渡しておく」

 そう言って、ロローシュ少将がドンと、テーブルの上に置いた布の袋。


 中身は金である。


「は! ありがとうございます。部下達にも分けてやります」

 と、エイブラム中佐が礼を言うと、


「防衛のほう、今後も頼むぞ」

 と、ロローシュ少将が言うと、


「お任せを!」

 と、エイブラム中佐が敬礼して応じた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 数日後、


「ヴェガ騎士とセンス曹長が来た?」

 とロローシュ少将が、屋敷の執事に聞き返す。


「はい」

 と、答えた執事に、


「フェルを隣の部屋に呼んでおけ」

 と、命じると、


「承知致しました」

 と、頭を下げて退室した執事。

 その後、ヴェガ騎士とセンス曹長を連れて、再び部屋に戻って来た。


「ロローシュ少将、お久しぶりにございます。隣に居るのが、センス曹長でございます」

 と、入室したヴェガ騎士が、ロローシュ少将にセンスを紹介すると、


「ヴェガ騎士軍所属、作戦参謀のセンス曹長で有ります。ロローシュ少将にお目にかかれて光栄に御座います」

 と、センスは踵を揃えて敬礼して挨拶する。


「うむ、二人ともご苦労。座ってくれ」

 と、ロローシュ少将に促されたので、


「は!」

「失礼します」

 と、2人は席に着く。


「ヴェガよ。この度の働き、褒めてつかわす」

 と、ロローシュ少将が話し出す。


「お褒めいただき、恐悦至極にございます」


「エイブラムにも言ったが、部下の進言をちゃんと聞き、納得できるものなら上に報告する。しかも部下の発案と正直に報告したこと、これは私がお主を騎士に取り立てた事が、間違っていなかった事を示す行動である。信頼によく答えてくれた」

 と、褒めたロローシュ少将に、


「ロローシュ少将に、騎士に取り立てて貰えた御恩を、少しでもお返しできたなら、良かったです」

 と、ヴェガ騎士が座ったまま頭を下げる。


「うむ。お主にはこれから、他の戦地に赴いてもらい、簡易砦の建設の指揮を取ってもらう事とした。ついては、お主の騎士爵を準男爵とし、私直属の騎士軍として行動してもらう事に決定した。これは陛下にも許可を頂いている事である。準男爵の爵位を受けるか?」

 と、ロローシュ少将がヴェガ騎士に問うた。


 準男爵とは、騎士爵と男爵の間の爵位であり、役目は騎士爵と変わらず、領地の防衛の任務であるが、騎士爵より給金が増えるし、階級も上がる。


「はっ! 謹んで拝命致します。これからもロローシュ少将、いえ、ロローシュ伯爵のために、忠誠を誓います」

 と、席から立ち上がり、敬礼して宣言したヴェガ騎士。


「よし! 後で手続きの書類にサインするように!」

 と、ロローシュ少将が笑顔て言った。


「は! 有り難き幸せにございます」

 と、ヴェガ騎士が頭を下げて言った。


「うむ。では次に、センス曹長」

 と、ロローシュ少将がセンスの方に顔を向けて、声をかけてきた。


「は!」

 と、短く声を出したセンスに、


「お主について、少し調べさせてもらった」

 と、センスの眼を見て言う、ロローシュ少将。


「お調べに? なるほど……では、私の処遇は如何に?」

 と、少し低い声で、センスがロローシュ少将に問いかける。


「うむ、会わせたい者がおる。おい連れてこい」

 と、ロローシュ少将が、後ろに控えていた執事に声をかけた。


「は!」

 と言って、部屋から出た執事は、1分もたたずに戻ってきた。

 隣に一人の女性を連れて。


「セインス様……」

 と、ドアのところからセンスの後頭部を見て、少し涙を浮かべたフェルが言うと、


「フェル! 生きていてくれたのか! 良かった!」

 と、聞き覚えのある声に反応し、振り返ると同時に、思わず声が大きくなるセンス。


「セインス?」

 と、疑問の声をあげるヴェガ騎士と、


「やはりの」

 と、頷いたロローシュ少将。


「閣下、こちらの女性は確か、閣下の?」

 と、ヴェガ騎士がロローシュに問いかける。


「うむ、末娘のフェルじゃ」

 と返ってきた答えに、ヴェガ騎士が、


「セインスとは?」

 と、ロローシュ少将に聞いたのだが、それに答えたのはロローシュ少将ではなく、センスだった。


「私の名です。セインス・クロームと申します。ヴェガ騎士様には偽名を使いましたこと、お詫び申し上げます」

 と、頭を下げると、


「クロームと言ったか?」

 と、センスにヴェガ騎士が聞く。


「はい……クロームです」

 と、センスは頭を下げたまま言うのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] あっけなく身バレしましたね まあ、恋人?が伯爵の娘では仕方ないけど でも逆にセインスとフェルの口から真相が語られれば 逆襲?にも繋がるのかな?
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