騎士達
その日の夕方、前線に戻ったエイブラム中佐。
「エイブラム中佐! おかえりなさいませ」
と、中佐の副官が出迎える。
「ああ、ただいま。で、距離は測れたか?」
と、聞かれて副官は、
「はい。ヴェガ騎士から報告書が届いております」
と言う。
「どれ? 見せてみろ」
と言われて、
「は!」
と言って、一枚の報告書をエイブラム中佐に渡した。
「ふむ、私の予想より少し長いが、こんなもんだろう。一応直接話が聞きたいから、明日の朝一番にヴェガ騎士を呼べ」
と、エイブラム中佐が命じ、
「承知しました」
と、副官が頭を下げる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お呼びにより参じました」
朝から呼び出されたヴェガ騎士が、エイブラム中佐に敬礼して言った。
「うむ。ロローシュ少将より、作戦の許可が降りた。お主からの報告を読む限り、特に問題は無さそうだが、何か懸念はあるか?」
と、尋ねられたヴェガ騎士は、
「いえ、現時点では問題は無いように思います。着工する時点で、敵から人夫達をどう守るかを、これから考えねばならないかと思いますが、それ以外は特に」
と答えた。
「よし。それを検討するのに、後で騎士達を集めて貰うとしてだ、センス曹長だが、ロローシュ少将が興味をお待ちだ。どこ出身か、どんな育ちをしたか分かってることを話してくれ」
と、ヴェガ騎士に聞くエイブラム中佐に、
「ロローシュ少将が? 私が知ってることは、年は13で、北のノードス伯爵領の、クローム騎士軍に在籍していたことと、そのクローム騎士軍が壊滅したので、東に流れてきたこと。それと弟から聞いた話では、弓の腕がかなりのものというぐらいですが」
と、知ってる事を言った。
「クローム騎士軍か。ノードス伯爵領の守りの要と言われていた騎士軍だな。わかった。そのまま報告しておく。では、アウス達を集めてきてくれ」
と、命じられたヴェガ騎士は、
「は! 直ちに!」
と、敬礼する。
「あと、センス曹長も連れてこい」
と、追加で言われたヴェガ騎士は、
「了解であります」
と、応じた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「揃ったな? では作戦会議を始める。皆も知っているとは思うが、森を抜けた草原にて、堀と柵で陣を張り、アストン国の侵入を防ぎつつ、奴らが疲弊するのを待つ事になった。これはロローシュ少将の許可を得た、正式な作戦である。現在、その準備中であるが着工する際に、草原に出た我らを、敵が攻撃してくることも予想される。また、今まで通りに少数で我らを挑発してくる事もあるだろう。それらにどう対応し、準備を悟られぬように進めるかを、議論する。何か意見のある者はいるか?」
と、騎士たちを前にして、エイブラム中佐が言うと、
「エイブラム中佐! よろしいでしょうか?」
と、アウス騎士が発言の許可を求める。
「アウスか、なんだ?」
と、言われて、
「はい。作戦の概要は分かり申したが、守るだけで敵が来なければ、我が騎士軍に従軍し、戦死した者達の仇が取れません。敵を叩き潰したいのですが、ダメでしょうか?」
と、聞いてきたアウス騎士に、
「撃って出ると、前回の二の舞になってしまうと、前に話していただろう?」
と、攻撃はダメだと言う、エイブラム中佐。
「ですが、総力戦で挑めば!」
と、食い下がるアウス騎士に、
「総力戦で突破でもされてみろ。我が国の民が蹂躙されてしまう。特にエルフや獣人達は奴らにとって目の敵にされておる。悔しいだろうが、耐えてくれ」
と、我慢するように言った。
「エイブラム中佐、よろしいでしょうか?」
センスが手を上げて、発言の許可を求める。
「ん? センス曹長、どうした?」
と、センスを見たエイブラム中佐。
「はい、確かに守れば良いと言い出したのは私です。ですが、アウス騎士様の気持ちも理解出来ます。ですので、草原にて簡易砦を作り出せば、アストン国の奴らは、絶対に邪魔しにくると思います。それを叩く役割を、アウス騎士様の軍にして貰う事にして、戦死した兵士の無念を晴らして貰うというのはどうでしょう? アウス騎士様の騎士軍ならば、向かってきた敵を叩くのは、容易いかと。奴らは簡易砦に引きこもっているから手強いだけでしょう? アウス騎士様達には、その時に活躍してもらい、他の騎士軍の方達には、陣張りの手伝いをして貰うことにして、より早く陣を作ってしまいましょう」
と、提案すると、
「ほう! センスとやら、気が利くな! 我らに無念を晴らす機会を進言してくれるとは」
と、アウス騎士がセンスを褒める。
「それならば、我がバウ騎士軍も、敵を倒す役割の方に加えてもらいたい。前回100人もやられてしまった雪辱を晴らしたい」
と、バウ騎士もアウスと同じ役割を求める。
「ふむ、わかった。奴らが出てくるかは分からんが、アウスとバウの騎士軍は戦闘組として、人夫達を守る役目に配置するとしよう」
と、エイブラム中佐が、二人の騎士に配慮した。
「ありがとうございます」
と、アウス騎士はエイブラム中佐に、礼を言い、
「センスとやら、よく言ってくれた。これで部下の無念を晴らせる」
と、バウ騎士がセンスに言う。
「いえ、私も前に居た騎士軍が、壊滅した経験がありますゆえ、お気持ちはよく分かります」
と、バウ騎士に言うセンス。
「では、草原に物資や人夫をどう送るかだが、これは森の中に馬車が通れる道を、作るしかないだろうと思う。その際、伐採した木々を柵を作る時に利用する」
と、エイブラム中佐は、考えていた事を話し出すと、
「柵を作る職人を、先にこちらに来させておきますか?」
と、ジェンス騎士が聞いてくる。
「街でも作って貰うが、数人こちらに連れてきておくのも良いだろう」
と、答えたエイブラム中佐に、
「ならば、作った柵の輸送などに、馬車が必要ですな。その手配は?」
と、バウ騎士が言うと、
「それならば、騎士軍の馬車を使えば良いのでは?」
と、ヴェガ騎士が言う。
「ん? ヴェガ、どういう事だ?」
と、ジェンス騎士が、ヴェガ騎士に聞くと、
「我らがこちらに滞在している間は、馬車は基本的に空いてるわけですので、荷馬車の代わりにすれば、予算が抑えられます」
と言ったヴェガ騎士に、
「確かに。だが良いのか? もし何かあって撤退しなければならない事が起きた時、馬車が無い事になるが?」
と、エイブラム中佐が聞いてくる。
「作戦を言い出したのは、我らの騎士軍です。それくらいのリスクは受けます」
と、ヴェガ騎士に言われ、
「ふむ、ならばヴェガ騎士軍には、輸送部隊として、半数の兵を割いてもらおう。残りは道作りと、今までと同様に警戒に当たって貰うことにするか。では、今の手筈で皆頼む」
と、エイブラム中佐が決定を下す。
「「「「「は!」」」」」
と、その場の者達が敬礼した。
「あ、ヴェガ騎士とセンス曹長、柵の件で相談があるから残れ」
と言葉を続けたエイブラム中佐に、
「は!」
と言ったのはヴェガ騎士で、
「はい!」
と、言ったのはセンス。




