表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/100

ロローシュ伯爵


 さて、場面は変わって、国境付近の森を前にして、


「ではセンス曹長達は左側から。我々は右側から測ることにする」

 と、ヴェガ騎士に言われたセンスは、


「了解であります!」

 と言って、森の左手に向かって歩き出した。

 2人の部下を連れて。


「ねえ? これ何です?」

 と、センスに聞いたのはローレライ。


「距離を測る道具ですよ」

 と、センスが答えると、


「ただ2本の杭に、ロープを結んだだけですよね?」

 と、言われてしまう。


「2本の杭の間のロープを、きっちり10メートルにしてあるんですよ」

 と、センスが説明すると、


「きっちり10メートルって言ったって、森の中で測ると木が邪魔して、真っ直ぐ測れないでしょう?」

 と、言われたので、


「それでも、だいたい真っ直ぐ測れればいいんですよ。草原に立てる柵の距離が分かればいいんだし、多少の誤差はどうにでもなりますよ。柵を少し多めに作ればいいんだし」


「ああ! なるほど! 足りないって事にさえ、ならなければ良いわけか!」

 と、納得したローレライ。


「そういうことです」


「しかし、曹長、よく思いついたね、こんなの」

 と、アレンが言うと、


「昔、父さんと陣取り遊びしてたときに、コレの小さなやつ使ってたんだ……」

 と、センスが懐かしむように言う。


「良いお父上ですね……」

 と、アレンが言うと、


「ありがとう……」

 と、センスが言った。


「あ、ヴェガ騎士様達だ。て事はやっと終わりかぁ」

 と、森の右側からスタートした、ヴェガ騎士の姿を見つけた、ローレライが疲れたとばかりにそう言った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ロローシュ伯爵家。


 国の東側に領地を持つ上級貴族であり、当主は女性のエルフである。


 そして、この家はまだ代替わりしていない。


 つまり、当主の女性エルフは、初代国王に仕えていた部下であり、この国の貴族当主の中で初代国王と面識のある、唯一の人物である。


 当時、大陸の西側は混乱を極め、地方豪族があちこちで国を立ち上げ、戦を繰り返していた。


 とある豪族の長男が、友人が他の部族に殺された事により、友人達を引き連れ、その部族を急襲し、その地方を支配下に納めた。


 その後、周りの部族を話し合いと戦で統合して、建国を宣言する。


 これが初代の王である。


 その友人として、戦場にて王の戦略の参謀として活躍したことにより、ロローシュという名の女性エルフは、建国時に伯爵に任命される。


 現時点では、ロローシュ少将という立場であるが、それは本人が昇進を頑なに拒んだためであり、代わりとして、王家の相談役という役目を引き受けている。

 見た目は人族でいうなら30代後半といったところか。

 銀色の長髪に、少し垂れた青い瞳をもつ眼に、細い体付きにエルフにしては大きめの胸。身長は170センチほどだろう。

 そして、このロローシュ伯爵は、この国のエルフ族の長でもある。


「ロローシュ閣下、エイブラム中佐が戦の事で相談があると申して、屋敷に参りましたが、いかが致しましょう?」

 屋敷の執事が、そう問いかけてきた。


「エイブラムが? わかった、通せ」

 と、ロローシュ伯爵が指示する。


「は!」

 と、答えた執事が、部屋を出て行く。

 数分後、エイブラム中佐を連れて戻ってきた。


「ロローシュ伯爵、いえ、ロローシュ少将、突然の訪問に応じて頂き、ありがとうございます」

 と、部屋に入るなり、頭を下げて挨拶したエイブラム中佐。


「よいよい。で? 戦の件で話があるとか?」

 と、エイブラム中佐に尋ねるロローシュ伯爵。


「はい。新たな作戦のご認可を頂きたいと思いまして」

 と、来た理由を述べるエイブラム中佐。


「新しい作戦とな? 申してみよ」


「は! 実はとある兵士からの進言なのですが……」

 と、経緯を説明するエイブラム。


「ふむ。なるほど……確かにその兵士の言葉は、もっともなものだ。奴らを倒しても我が国に利は少ない。いや飢えた国の面倒を見る事にもなるやもしれんし、面倒事の方が多いように思えるな」

 と、作戦の内容を聞き、考えるロローシュ伯爵。


「はい。我が国の国境を守れば良いだけだったのです。すっかり頭から抜け落ちていました」

 と、エイブラム中佐は、反省をみせる。


「私も耄碌したものだ。攻め込まれて頭にきて、打ち倒す事ばかり考えておったわ」

 と、こちらも反省するロローシュ伯爵。


「では、作戦を決行してもよろしいでしょうか?」

 と、許可を求めるエイブラム中佐に、


「うむ! 人夫や木工職人に支払う賃金の方も、国に掛け合ってやるし、国がダメと言っても、私が資金を出すから、安心しろ。領地の安全のためには有効な手段だ。お主の担当地域で成功したならば、他の地域にも同じ作戦をとらそう」

 と、許可をしたロローシュ。


「ハッ! ありがとうございます」

 と、頭を下げるエイブラム中佐に、


「この作戦を思いついた兵士とやらの、素性が知りたいものだな。物事を違う眼で見れる者は、何事においても使える。その兵士の情報をもっているか?」

 と、ロローシュ伯爵が、問いかけてきたのだが、


「いえ、ヴェガ騎士軍に入った、センスという名の少年兵としか。容姿は会ったのでわかりますが、詳しくは戻り次第、ヴェガ騎士に聞いて報告させて頂きます」

 と、センスの容姿を、大体説明したエイブラム中佐。


「では、色々よろしく頼むぞ」

 と、ロローシュ伯爵が言うと、


「はい! では急いで戻って作戦の準備に取り掛かりますので、これで失礼致します」

 と、頭を下げるエイブラム中佐に、


「うむ、ご苦労じゃった」

 と、労いの言葉をかけたロローシュ伯爵。


 エイブラム中佐が去った部屋で、


「守り切れば勝ちか……その兵士に会うて見たいのう……」


 と、ロローシュ伯爵が呟いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 昼間の光がある内に森の端まで柵や砦の資材を運んでおいて、日没と共に森から出て堀を掘って一気に一夜城を造れば、翌朝になって敵の砦の兵たちは突然に出現した砦にアッと驚くでしょうね。 慌てて砦を出…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ