ジュンス騎士
その夜、センスは部屋に戻ると、しっかり鍵をかけて寝たため、誰かが部屋に入ってくることはなかったが、何度かドアのノブがガチャガチャと音を立てたとだけ、記載しておく。
翌朝、早くからヴェガ騎士軍は戦場に向かう。
ヴェガ騎士の屋敷から出発する大型馬車の数は、35台。
一台に8人ほどが乗り、それが30台で240人。
そのほかは、弓の矢や槍などの予備の武器を大量に積んだ馬車に、食糧を積んだ馬車、テントなどの宿泊設備を積んだ馬車だ。
それらの馬車にも人は乗っているので、現在ヴェガ騎士軍の兵士の総員は、256人となっている。
他にも寮や屋敷の管理などの人員が居る。
ヴェガ騎士軍の総員は、だいたい300人弱との事だ。
これは、だいたいどこの騎士軍も同じ人数である。
クローム騎士軍も総員300人程度だった。
街道を走っていると、同じく戦場に向かう他の騎士軍も道の合流地点で、遭遇してくる。
両方の騎士軍が停止し、先頭を馬で駆けていたヴェガ騎士が、
「おはよう、ジュンス騎士。今度の新兵は使えそうか?」
と挨拶して問いかけると、
「ふん! ちゃんと使えそうなのを、50人揃えてきたわい! ヴェガ騎士の方こそ、人は増えたのか?」
と、ジュンス騎士に聞き返される。
「3人増やしたぞ」
と、ヴェガ騎士が言うと、
「たった3人か」
と言われ、
「うちは前回、欠員出てないからな!」
と、胸を張って言うヴェガ騎士に、
「戦で欠員が出てないなど、ちゃんと働いておるのか?」
と、咎められるが、
「当たり前だ。ロローシュ伯爵に、自信をもって報告出来る戦果をあげておる」
と、言い切った。
「ふん、まあ良い。で? どちらが先に行く?」
と、ジュンス騎士が聞いてきたので、
「由緒正しいジュンス騎士家に、先行お願い致す」
と、ヴェガ騎士は、道を譲る。
「うむ。お主のそういうところは嫌いでは無い。ジュンス騎士軍! 行くぞ!」
そう言って、ジュンス騎士軍が動き出す。
「由緒正しいっていうのは?」
と、センスがキム軍曹に聞くと、
「ジュンス騎士様は、3代目なのさ。うちはヴェガ様が初代だからな」
と、顎髭を撫でながらキム軍曹が言う。
ここで、ドワーフの女性の容姿の説明を。
なぜ女性なのに顎髭があるのかと言うと、ドワーフの女性には、皆んな顎髭が生えるのだ。
男のドワーフは口髭と顎髭が生えるが、女性のドワーフに口髭は無い。
男性より少し背が低く華奢ではあるが、それでも人族よりは筋肉質で力強いのが、ドワーフの女性である。
「ああ、そう言うことですか。でも初代のほうが戦果を上げた証だと思うんですけどね」
と、センスが言うと、
「そういう見方もあるが、古い家の方が貢献度が高いって見方もあるからな」
と、貢献してきた月日の長さを、尊重する事もあると教えてくれた。
ちなみにクローム騎士は、センスの父親が初代であった。
「そういやアウスやバウの新兵って、合流してこないのですかね?」
と、疑問を口にするセンスに、
「あそこは昨日のうちに、前線に行ってると思うよ」
と、別の兵士が答えてくれた。
「へぇ、そうなんだ」
と、センスがその兵士の方を向くと、
「新兵を前線に立たせて、突撃ってのが、アウスのやり方さ」
と、嫌そうな顔をした兵士。
「そりゃまた……バウは?」
と、尋ねてみると、
「バウは個人戦果主義だ。全然連携してないから、強い者が戦果を上げてるけど、そうで無い者はな……」
と、語尾を濁した兵士。
「入らなくてよかった」
と、センスがホッと胸を撫で下ろす。




