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短編2

勇者召喚トラップ

作者: 猫宮蒼



 魔王の脅威によって滅亡の危機に瀕していた世界では、いよいよこの世界の人類だけでの解決はままならない、と判断して遠い昔に神からもたらされた、これまた遠い異世界から勇者を召喚する儀を行おうとしていた。


 城の大広間。時としてパーティーなどで貴族たちがダンスを踊る事もあるだけあって中々の広さを誇るそこに、勇者を召喚するための準備が着々と進められていく。

 シャンデリアの光はいつものようにキラキラと眩いのだが、今回ばかりは異様な明るさに思えてくる。

 鏡のように磨かれた床に、勇者を呼ぶための魔法陣が描かれていた。


 妙な寒々しささえ感じられるようになってしまった空間で、国王を始めとした重鎮たちは固唾を飲んで事の成り行きを見守っていたのである。


 そうして国中の魔法使いたちが集まり勇者を召喚するための呪文を唱え――


「勇者召喚、成功しました!」


 一人の老魔法使いが感極まったように叫んだ。


 魔法陣の中心にいたのは、二十歳半ばといった年頃の青年であった。

 鍛えられているというのが一目でわかるのみならず、その佇まいは明らかに只者ではないとその場にいた皆が思う程だ。


 召喚された勇者は突然見知らぬ場所に呼ばれたにもかかわらず、特に慌てるでもなく軽く周囲を見回した。


「これは?」


 そうして一言、現状を問うたのである。


 この場の責任者と言う意味では王がそうだ。だからこそ、王は召喚されて現状を理解できていないだろう勇者に世界を救うために召喚したという説明をした。

 そのために異世界からわざわざ呼び寄せたのだと。


 話を聞いた青年は、一瞬ぽかんとした表情を浮かべたように思えたが、しかし本当に一瞬過ぎてその顔を見た者が果たしてどれだけいたかはわからない。次の瞬間には青年はふっ、とどこか嘲るような笑みを浮かべたからだ。


「生憎とこっちも慈善事業ではない。タダ働きはごめんだぜ」

「貴様……っ!」


 その言葉に激昂しかけたのは、家臣の一人であった。咄嗟に王が手で「良い」と制したからこそそれ以上の暴言が飛び交う事にはならなかったが、王の眉間に皺が刻まれたのは言うまでもない。


「だってそうだろ? 俺にとってこの世界は自分の故郷でもなければ親しい友がいるわけでも、愛する女がいるわけでもない。言ってしまえば完全にどうでもいいところだ。そんなところのどうでもいい有象無象のために命張ってタダ働きなんて、誰がすると思う?

 やれるっていうならまずそいつらが率先してやってから言ってほしいもんだね」


 お前らだってなんの旨味もない土地のために無償で支援なんてしないだろう?


 そう言われてしまえば、王は否定もできやしなかった。王だけではない、家臣たちもそれは同様である。

 他国に支援をする事があったとして、確かにそれは何らかの利益があるからだ。ただただ無駄に金や人手や技術を費やすだけのものを、そもそも支援とは呼ばない。


「報酬があれば良いわけだな」

「あぁ、そもそもそれが仕事なんでね。依頼であれば請け負うぜ」


 そういう仕事をしているもんで、と男が言った事で王は内心で、成程こやつは自分の世界で冒険者のような事をしているわけか……と考えた。

 わざわざ異世界から冒険者を呼んだ、と考えるとなんとも無駄な事をした気持ちになってくるが、しかしこの世界の冒険者たちに魔王を倒せと言うのは土台無理な話であると理解している。倒せるならとっくのとうに倒せているのだ。

 しかし実際は、魔王の部下である名を持った魔物たちにも手も足も出ないのが現状である。

 守りを固めてどうにか凌いではいるが、それも時間の問題でいずれは守りすら壊されるだろう。そうなれば、その時こそ本当に人類の滅亡である。実際既にいくつかの国は滅ぼされたのだから。


「ちなみにこれが契約書な」

 言って懐から一枚の紙を取り出して差し出す男から、近くにいた家臣の一人が受け取って恭しく王へ差し出す。


 異世界の文字であるが故に読めない、という可能性を考えたがそうはならず、きちんと理解する事ができた。


 ざっと見る限り、おかしな事は書かれていない。

 報酬は依頼内容に見合ったものである、と書かれているだけで明確な基準はないが、しかし魔王討伐を依頼するのであれば並大抵の報酬では話にならないというのも理解できる。


 とりあえず本当に魔王を倒す事ができたのであれば、相応の地位を与えそれに見合う娘を嫁に差し出せば問題ないだろう――そう考えて。

「わかった。契約成立だ」

 王は契約書にサインをしてしまったのである。


 世界を救うために、うだうだと悩んでいられる余裕は既になかった、と後になって言えたかもしれないが、この時点ではどのみち勇者に縋る以外、方法がなかったのだ。



 依頼を請け負った勇者は、早速行動に移った。

 兵士たちが数人がかりでやっと一体倒せる魔物をまるで赤子の手をひねるかのように倒していく。

 圧倒的なその力に、人類は希望を見出したのである。


 圧倒的な数の魔物と魔族たちを率いる魔王に対して、たった一人で立ち向かうというのはどう考えても無謀でしかないのだが、しかし勇者の力を目の当たりにした者たちはそれでも希望を抱いた。彼ならば、きっと――



 実際その希望は打ち砕かれる事はなかった。


 彼らが思っていた以上のスピードで、勇者は魔王を倒したのだ。


 拍子抜けする程にあっさりと世界が救われた、というのを知って、最初彼らは夢を見ているのかと疑ったくらいだ。

 絶望の中、あまりにも都合の良い夢を見ているのではないか……と。


 しかし夢ではなかった。現実である。


 そう自覚してから、じわじわと未来への希望と歓喜に沸きあがった。勇者が来る前にかなりの犠牲が出てしまったが、それでもこれから皆で力を合わせて復興すればいい。世界は平和になったのだから。


「それじゃ、依頼達成の報酬についてなんだが」

「あ、あぁ、そうだったな。勇者には相応の地位とそれに見合う――」

「この世界まるごといただくぜ」

「……は?」


「おいおい、まさか世界を救ったっていうのにその報酬が一国の王にも劣る地位と、はした金とか適当な女だけ見繕って終わるなんて事ないだろ?

 それが世界を救うのに見合う報酬だって? ないない」


 その程度の報酬なら、わざわざ世界を救わなくとも手に入る。


 そうあっさりと吐き捨てられて、王は言い返せなかった。


「い、いや、しかしだな」


 世界を救った勇者ともなれば、世界中に名が知られる形となる。現にあっという間に魔王を倒したのだ。世界で今彼の名を知らぬ者などいるはずがない。

 名声という点では、この世界の頂点にあると言ってもいい。そこに地位が付属し、それに相応しい娘が妻となるのであれば、充分ではないだろうか。


 それに――


 彼を王にしたところで、彼にまつりごとの何たるかが果たして理解できるだろうか。

 王は内心でそのように思ってしまった。無意識か、意図的かはわからないが、王は勇者を政治の事など何も知らぬ若造として見下していたのである。

 

「報酬が支払えないっていうのなら、それでもいいぜ?

 だったら代わりに俺が新たな魔王としてこの世界を手中に収める。

 そうなったらお前ら、次は生きていられるかわかんねぇな?」


 はく、と王だけではない。家臣たちや魔法使いたちの数名も何かを言おうとして――しかし言葉が出ずただ口を開閉させるだけだった。

 勇者が次の魔王になる、なんて事になったとして。


 そうなってしまえば。


 対抗手段がないのだ。


 この勇者をどうにかするために、新たな勇者を更に召喚する?

 いや、あれは国中の魔法使いたちを集めて儀式を行わなければ実現不可なものだ。今の魔法使いたちのほとんどは未だ魔力を完全に回復できているわけではない。そう何度も連発して行えるものではないのだ。


 彼が元居た世界に帰る、という方法は、存在していなかった。伝承の中でも勇者を元の世界に帰す方法は最初から伝わっていないのだ。

 だからこそ、もしそれを最初に聞かれていたのであれば最悪勇者は魔王を倒すどころか最初の時点で魔王と手を組んだ可能性すらあった。

 故に、最初の時点でその事は言えなかった。聞かれなかったから、と内心で言い訳をしていたのも否定はしない。


 だが、帰せない、となれば彼が敵に回った時点でその脅威を何とかできる方法がない。

 相応の身分を与えて、まだ滅んでいない他国から姫を輿入れさせるなどすれば勇者を留め置く事もできると考えていた。象徴として彼にはまだやるべき事があるのだと、利用するつもりでもいた。


 身分を与えて家臣として取り込めば、上手い事利用できると愚かにも考えてしまった結果である、という事は否定できない。


「この世界の王になるつもりか」

「いんや? そんなもんに興味はねぇよ」

「では、この世界全てをもらうというのは」


「あぁ、うち今労働力が足りてなくてな。とにかく人手がいるんだ。

 優秀な奴は大歓迎、無能は無能なりに使い道があるからそれでも構わん」

「なに、を……労働力? そもそも勇者よ、そなたはもう元の世界に帰る事まかりならぬというのに……」

「何言ってんだ? 帰れるぜ、別にいつでも」

「なん、だと……!?」


「あぁ、魔法陣には呼び方しか書かれてないから帰せないって思ってんのか。別に魔法陣がなくたって構やしないぜ? いつでもうちと連絡とれるしそうすれば空間跳躍ですぐに家がくる」


 勇者が何を言っているのか、王には理解できなかった。

 帰れる? 帰れると言ったか。

 では、もし彼が魔王を倒さず勇者としての役目を果たそうとするつもりもなければ、彼はいつでも行方をくらます事ができたというのか……!?


「ま、既に魔王倒す前に契約は結んでるから、それを反故にするっていうのなら相応のペナルティを受けてもらうだけだ。

 あー……文明もロクに発展してない文明未開惑星の連中にももっとわかりやすく言うとだな……


 報酬としてお前らが従業員になるか、それとも契約を反故にしたペナルティとして奴隷になるか。

 つまりは、そういう話なんよこれ」


 従業員としてならば人権も相応に適用されるし、衣食住の保障もある。

 けれど奴隷にそんなものはない。


 労働奴隷という借金を返すまでの間一時的にそういう身分になる、というものがないわけでもないが、この場合の奴隷はそんなものではない。何故なら世界を救った報酬に見合うだけの額を稼ぐとなると、人の一生では到底払いきれるものではない。であれば、生涯その身分になるのが確定する。犯罪を犯した者が強制的に陥る身分と然程変わりはしなかった。


「この世界の連中の運命はもうそのどっちかなんだわ。

 あぁ、今からでも俺と敵対する? いいぜ別に。俺が勝つけど。

 その場合負けた連中はもっと立場が悪くなるってのもわかった上で歯向かうならそれはそれで」


 にこやかに笑う勇者に、誰も何も言えなかった。


 勝ち目がないのはわかっているのだ。

 今からここにいる兵士たちが一斉に勇者に襲い掛かったとして。


 一瞬で負けるのは目に見えていた。


 何故なら彼らが束でかかってようやく倒せる魔物ですら、勇者にとっては造作もなく倒せるのだ。それくらいの実力差がある事は既に知ってしまっている。

 その上で、それでも奴隷になんてなってたまるか! と勇者に攻撃を仕掛けたところで。


 彼はきっと反撃した上でこちらを殺す事なく、そうして奴隷よりももっと悪い立場へ相手を落とすのだろう。


 そう、嫌でも理解できてしまった。


 であれば最初から従順にしていた方が、まだ人としてマシなのではないか……?



 魔王よりもっとヤバイ奴と関わってしまった、という事実に気付いたところで。


 とっくに手遅れだったのである。




「いやー、そもそも俺最初に言ったのになぁ。愛着もない世界に無償で何かをしてやる義理はないって。

 友人がいるでもない、好きな相手がいるでもない見知らぬ世界って。

 だったら、足手纏いになろうがなんだろうが、最初に俺が魔王を倒しに向かった時点で一緒に誰かしらつけて、友人になるとか恋人になるとかしてれば、別の道もあったかもしれないのにな?」


 王という立場から労働階級に落とされたかつての王に、勇者は今日の天気でも話題にするかのような口調で告げる。


 確かにそんな事を言っていた覚えはある。

 けれどもその時、王は特に何も思わなかった。

 確かに勇者に供をつけるべきかと考えた事もある。だが、勇者の強さを目の当たりにした時点でそんなものは不要と断じてしまったのだ。

 足手纏いをつけて魔王を倒すのが遅れればその分こちらの被害も増える。だったら、勇者一人に全てを任せて自分たちは国で守りを固めているだけでいい、と。

 そう考えてしまったのだ。


 もし勇者に友が、愛する者ができていたのなら、このような未来は避けられただろうか……?


 そんな風に考えたところで、今更でしかなかった。




 勇者として召喚された男は、とある商会に属する者だった。昔から手段問わずあくどい商売にも手を出す悪名高きドロブネカンパニーの幹部である。

 手広くやらかしすぎた事で、困った事に人手が常に足りていない。

 労働力をゲットするにしても、手軽に補充できるのは無能な者ばかり。

 そりゃそうだ。優秀な人材は基本的にちゃんとした国や組織で相応の立場を得ている。わざわざ宇宙を股にかけるギャングも真っ青な守銭奴どもと関わろうとするわけがない。


 彼がそれでもここに所属しているのは、親がドロブネカンパニーのトップだからだ。親の敷いたレールの上なんざまっぴらよ、と思って一時期家出をした事もあった。だが、あまりにも面白くなかったのである。

 社会見学の一環としていくつかの企業に潜り込んだ事もあった。ホワイト企業と呼ばれるそこは、確かにマトモな職場なのだろう。けれども、平穏で刺激のない退屈な日々。安寧があるけれど、毎日が代わり映えしなさすぎてどんどん自分が、自分の魂が緩やかに死んでいくような錯覚に見舞われてしまった。


 人生山と谷と天国と地獄があってなんぼ、という考えの自分には、世間一般の安定した企業とはとことん相性が悪すぎたのだ。勿論、商売相手としてならそういった企業は良い関係を築けるのだが。しかし自分がそこに所属するのは違うな、と思ってしまったのである。


 そんな中、父から言われたのは、だったら文明もロクに発展していない未開惑星から人材確保してこい、というもので。

 いや、文明未発達惑星って勝手に荒らしたら駄目なんじゃなかったっけ?

 銀河連邦黙っちゃいないぜ? 流石にそこ敵に回すのまずくね? と彼も一応彼の中にある常識に則って父に指摘はしたのだ。


 そして父が返してきた言葉は。


「確かにこっちから行くのは駄目でも、向こうから呼んだ場合は問題ない」


 である。


 そもそも他の惑星と交流もできないような原始人ばかりの惑星が、どうやってこちらとやりとりをするのか。当然の疑問にも父はやはり罪悪感の欠片もない顔で言ってのけたのだ。


「ご先祖様が昔、惑星探索ドローンをそういった未開惑星にいくつか投下してあってな。

 その際に、密かにこちらと連絡を取る事ができる方法を各惑星に残してきてある。

 異世界からの勇者召喚と銘打ってな。

 ちなみに連邦法では魔法を使っての人物を召喚するというのは、相手の同意がない限り誘拐に見なされるので、その場合未開惑星で何かがあったとしても、呼ばれた側の責は問われない。

 こちらは召喚方法を記したものを残してきたとはいえ、こちらだっていつでも召喚される事に応じているわけではない。現に普段はパスを閉じてるしな。

 だが、パスを開放した途端に呼ばれたとして、それはこちらが呼ばれる事を受け入れたというわけではない。


 そう、たまたまこちらが大掃除をしている時にふとした切っ掛けがパスを開いてしまい、そうしてその瞬間対処する間もなく呼び出されてしまった。こっちの意思に反してな」

「えー、それパス閉じてる時に召喚した世界無駄骨じゃんカワイソー」

「救いが必ずもたらされると思う方が甘い」

「ま、それもそっか」

「それに勇者が来たら無条件で助かると思ってるのも頭おかしい」

「確かに」

「ま、世界を救った暁にはそれなりの報酬として人材をゲットする方向でいけばいい。

 勝手にこっちを呼んだ上に、商談を持ち掛けてきたのも向こう。こっちは相応の報酬を貰えれば、で請け負ったのだから、報酬の未払いは有り得ないし契約を反故にしようとした時点でどんな目に遭っても……なぁ?」

「ま、うち悪名高いドロブネカンパニーだもんね。正義の味方ですらない相手に縋った時点で駄目だよねぇ」


 もう完全にこの時点で悪党の会話でしかないのだが、そもそも危険な橋を渡るような真似をしなければいいだけの話だ。


 大体、異世界からの勇者召喚って。

 勇者として召喚された身である男ではあるが、彼にとっては勇者召喚(笑)である。


 いくら未開惑星でも、こんな楽して簡単に大金が稼げるお仕事です♪ なんて闇バイトみたいなもんに引っ掛かる馬鹿とか流石に、流石にいねぇだろと思っていたのだ。

 いたけど。


 しかも魔王倒すって話の時点で相応の報酬ってこっちが持ち掛けた時に、どういう報酬かきちんと聞いてこなかったとか、完全にカモだった。

 まぁ、相手が考えてる事は手に取るようにわかったからこっちもあえて言わなかったけど。


 ちゃんとした企業ならきちんと説明してくれたと思うけど、うちは悪名高いとこなんで、聞かれなかったら答えない事も勿論ある。聞かれてたら一応人材募集の話はしたと思うけれど。


 まぁでも、仮にあの段階で労働力を募集してますなんて言ったところで、元の世界に帰す方法を知らない連中にとっては何言ってんだこの勇者ってなっただろうし、そもそも自分たちの方が立場が上だと完全に思い込んでこっちを相当甘く見ていたからこそ。


 彼らはそろって労働力としてかつての故郷を離れる事となったのである。


 あの惑星にいた人間は皆連れてきた。勇者として召喚した国以外のところからも、全部。


 そのせいで勇者召喚を決断した王様は相当な恨みを買ったっぽいが、男の知った事ではない。



 人間がいなくなったといっても、他の動植物全てを持ってきたわけではない。

 開拓し森を切り開く事もなくなったため、自然は好き勝手育つだろうし、それらを餌とする草食動物たちも増えるだろう。そしてそれを餌にする肉食動物も。

 人間たちがいなくなった世界で、いつか進化を遂げて人に近しい種族が誕生するかもしれない。

 あの世界の魔物や魔族というものは、そもそも人間たちが魔法を使う際、魔力汚染が発生してそれらが長い年月をかけて溜まりに溜まった事から生じた存在である。


 未開惑星ではない他の惑星で魔法を使う際、基本的には魔力汚染が発生しないように浄化装置の着用を義務付けられている。

 魔法を使わなければあの世界は魔物や魔族、果ては魔王を生み出す事もなかったと知ればあの世界の住人たちはどう思うだろうか。

 まぁ、それも男にとっては知ったこっちゃない。


 文明がそこまで発達していないところでは、魔法というのはそれこそ奇跡を起こすものと思われただろう。そんな力を使える者たちは、きっと神に選ばれた存在だと内心で優越感に浸っていたとしてもおかしくはない。

 使うな、と言われたところで隠れて使う者はいただろう。

 そうやって長い、長い年月魔力汚染の存在に気付きもしないまま使用してきた結果がこれだ。


 聡明な一部は現状を内心納得できなくとも受け入れて従業員となったが、大半は奴隷扱いだ。


 さぞ、世界を救った勇者を恨んでいる事だろう。


 けれども彼らの教育係は男の仕事ではないので。


 やっぱりどれだけ恨まれたところでそんなものは知ったこっちゃねぇのである。

 次回短編予告

 異世界転生する際に、その世界の女神様に言われました。

 転生特典を一つだけ与えましょう、と。

 兄は高スペックなステータスを希望してさっさと転生していきました。

 弟の僕はというと……


 次回 転生特典を嫌がらせにブッパした件

 望んだ幸せは得られなくても、それ以外の幸せは手に入るから嫌がらせといってもマシな方だと思う弟の、生まれ変わった以上はもう他人な傍観者ライフ。

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