フェリックの戴冠式前夜3
「これは救国の英雄、テルガニ侯爵ではありませんか」
レーハーゲルと話していることに気づかれたようで、ラーフェン王国騎士団長のジルバーハインが近づいてくる。
「ご無沙汰しております」
ジェロもラーフェン王国の王城で挨拶程度をするくらいに顔と名前は覚えていた。
しかし、騎士団の副団長オドヘート・ハーニッシュは、帝国との戦争でも何かとジェロに不満を露わにしていたので、ラーフェン王国の騎士団そのものに苦手意識がある。
ジルバーハイン自身は、ジェロの味方とも敵ともはっきりさせるような言動はなく、顔色を読むことができない。
「モーネ様は?」
「今、休憩で外しておりますが、戻って来ましたらお知らせいたします」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ラーフェン王国の王女であったモーネのことで会話を繋ぎながら、当たり障りのない会話で場をつなぐ。
「それでは」
ジルバーハインが切り出してくれたのでホッとしたことを、レーハーゲルにも気づかれておりにこやかに笑われながら、また、と彼も離れて行く。
「慣れないなぁ」
つぶやきながら食事の並んでいるテーブルにヴァルと共に逃げ出したジェロ。リスチーヌはモーネと一緒に行動をしている。
「まだまだ顔に出ているわよ」
「ま、新参貴族としては情けないよな」
「良いんじゃない?どうせ本当に敵対して戦争なんてしてこないのだし」
「そんな極端な。でも、まぁそう考えたら気が楽ということか」
ヴァルに感謝しつつ、軽く食べ物をつまんでいると、どこかで見覚えのある男性が近づいてくる。




