フェリックの戴冠式前夜2
「テルガニ侯爵、ご無沙汰しております」
「え?プランケット団長?」
当然といえば当然で、各国から貴賓が王城に集まっているその晩餐会の場である。
ベルカイム王国はアンネ女王とヒルデリン国王が幼く、他の王族もいないので、魔術師団長のイニャス・プランケットが来ていてもおかしくはない。一度ムスターデ帝国に征服された時に多くの幹部も亡くなったが、生き残りのプランケットは上手く立ち回っているので、重鎮中の重鎮だからである。
しかし、ゴマスリ感の強い男の圧力をジェロは苦手にしている。
「陛下達、特にヒルデリン国王陛下がテルガニ侯爵の来訪を楽しみにしておられます。またお時間をお作りいただけますと……」
「ありがたいことです。ですが、今は結婚したことの各国への挨拶回りの途中ですし、頂いた領地の開拓に精を出しているところですので、そのうちに」
「そうですよね。テルベルクでしたか。ワコローズの西方の森に新たに開拓されている街。街道の整備と含めて大変楽しみにしております」
何かと詳しいプランケットに驚きながら、こういうことが出来るから上手く重鎮の立場を維持できているのだと考えてしまう。
「これはテルガニ侯爵」
「レーハーゲル副団長!」
プランケットとの会話に区切りが付いたと思えたのか、上手く助け舟をくれたのはラーフェン王国の魔術師団副団長のハンネマン・レーハーゲル。
ムスターデ帝国を追い出す戦いでも何かとジェロの味方になってくれた人物である。
では、とプランケットが如才なく去ってくれたのでホッとする。
「上手く割り込めましたかな」
「いや、助かりました。ところで、ラーフェン王国からはレーハーゲル様が?」
「はい。ただ、正使はあちらの騎士団長クラウス・ジルバーハインです。私は副使でして」
ラーフェン王国も王太子は幼いので、この場に来られるのは幹部の団長達であるのだと理解する。




