フェリック戴冠式の準備
「流石、王都は識字率が高いということでしょうか?」
モーネが呟いたのは、戴冠式の案内をジェロ達が王都の上空から告げてまわるだけでなく、配布するように渡された羊皮紙のことである。
「確かにこれだけの羊皮紙に、戴冠式の日程などが書かれていたら、読めない人は読める人のところに聞きに行くよね」
「事前に盛り上がることは間違いないでしょうね。王都の空をドラゴンが飛んで、人も飛んで、これが配られるのですから」
「いや、それは良いのだけど……」
「ドラゴンを何体用意するか、ですね。ラーフェン王国の戴冠式ではドラゴンが1体だけでしたが、ベルカイム王国の戴冠式ではドラゴンが3体」
「フェリック王太子は負けず嫌いだろうし」
「でも、血縁でもないコンヴィル王族って言い出すと、王女のどなたかを4人目の妻にと押し付けられますよね……」
「……」
「羊皮紙を配ったら、テルヴァルデに一旦戻ろうか。で、ティティとレミを連れてくれば、3体にはなるよね」
「丸々綺麗な死体の献上も追加で行った方が良いでしょうね」
先々のことが億劫になってくるジェロ。
「でも、今回で3つ目、侯爵の爵位と領地を頂いている3国の新国王それぞれに強力な伝手ができるのですから」
「そうだよね。ここで新国王のフェリック様に睨まれたくないし」
イベントに対して楽しんで準備できる性格ではないジェロには、面倒ごとでしかないが、家族や仲間達のためにも、テルヴァルデの平穏の準備だと割り切ることにする。
王都の上空で、複数の人が≪飛翔≫しドラゴンと共に飛ぶこと、そこから王太子の戴冠式の案内が風魔法にのった言葉で伝わりつつ、さらにその旨の書かれた羊皮紙が配られるというのは、いつまでも語り継がれる出来事となった。




