ガニー冒険者ギルドマスター
ガニーの街の冒険者ギルド職員が全員集まっての朝礼が行われている。
「というわけで、モージャンヌの街の冒険者ギルドに転勤することになった。後任はドナシアンという男だ。上手くやってくれ」
アンブリスの唐突の挨拶を聞いて、ジェロはメオンの顔を見ると、メオンが頷く。
「ジェロ、お前には期待しているぞ。今後も頑張れよ」
一人一人に一言ずつアンブリスが声をかける中で、ジェロが向かい合ったところで両肩を力強く叩かれながら言われる。何かと面倒を見てくれたマスターの言葉に涙ぐむ。
「アンブリスさんもお元気で」
アンブリスの旅立ちを見送ったところで、メオンに聞いてみる。
「ところで、次のマスターのドナシアンさんってどんな人なんですか?」
「肉体派のBランク、銀級冒険者と聞いているぞ」
「銀級ですか?」
「あぁ、金級のアンブリスさんが居たこと自体、この街の規模のマスターでは異例なんだよ」
「もしかしてザールさんも金級だったんですか?」
「あの人は実際の冒険者だったわけでなく、事務系の職員でAランク相当という扱いだったはずだ」
「事務職員でもギルドマスターにまでなっていけるんですね」
「そりゃ戦闘力などの肉体派だけではギルドは運営できないから、そっち系もそれなりにいるぞ。ジェロは戦闘力でも銅級になったんだし、ギルドマスターを狙ってみるか?」
「そんな恐ろしいこと!」
「そう言わずに、ちょっとは考えておけよ」
翌日の朝もガニーの街の冒険者ギルドでは朝礼が行われた。
「俺が今日からここのギルドマスターのドナシアンだ。みんなしっかり付いて来いよ」
ジェロは、まるでその後にガハハという笑い声がついてくるような錯覚を感じるぐらい、バスチャンより大きい体格の新マスターに圧倒された。




