モージャンのその後
「ジェロ、聞いたか?」
日常業務の中でときどき魔法訓練などを取り入れるようになってしばらくした頃、上役のメオンに声をかけられる。
「メオンさん、何のことですか?」
「モージャンのマスター、ザールさんのことだ」
「いえ、全く何も聞いておりませんが」
「そうか。騎士爵になって王都に呼ばれ、王都の冒険者ギルド本部の幹部になるそうだ」
冒険者ギルドは王都に本部があり、街は支部である。もちろん街の大きさなどにより支部は大きさ、格が違うものがいくつもあるが、本部は1つだけであり支部の長であるギルドマスターよりも本部の幹部の方が上役である。
「貴族ですか!?先日のオークダンジョンの関係ですかね?」
「おそらくモージャンの街付近の魔物氾濫を大きな被害を出さずに治めたことを王国として評価して、騎士爵に叙爵ということだろう。ただ実態はな。魔人のことも当然に王国の中枢には情報が上がっているであろうし、国家として、冒険者ギルドとして何らかの対策を検討するための業務を任されたのかもしれないな」
「まさか我々にも影響が出たりしないでしょうか?知らない王都で尋問されるなんてことに……」
「いや、魔人の死体、魔法発動体を含めた装備、まぁ焦げ残っていた範囲とダンジョンコアの成れの果てなど物的証拠は全て渡して来たし、魔人の発言内容は全て伝えた。それら全ては領主経由で王都に持って行かれただろう。ダンジョン最奥に進んだ我々14人に直接影響は無いと思うがな」
「良かったです。ただ、直接でない影響はあるのですか?」
「あぁ、モージャンのギルドマスターの後任にアンブリスさんがなる可能性がある。元々ザールさんがなる前にアンブリスさんの名前が候補になったのを断ったという話がある。アンブリスさんはこのガニーに病気のお母さんが居たからこちらを選んだらしい。ザールさんは譲られたと思って、アンブリスさんが嫌いらしい。そのお母さんも既に亡く、アンブリスさんに再度白羽の矢が立つ可能性もある」
「そんな経緯があったんですね」
「それにモージャンのギルドマスターだから、今回の魔人のことも我々から報告を受けて知っているであろうアンブリスさんは適任だろうな」




