新婚旅行でのミューコン滞在
「問題というほどのことでは無いのですが」
執事のクシミールが姿勢をあらためて発言してくる。
「新興貴族でありながら急成長したテルガニ家に対して、仕官希望者は後を絶ちません。ご当主様は王都ではなく領地にいらっしゃいますので、そちらに、と全てをお断りしているのですが。王都在住の貴族の子弟、襲爵する見込みのない方々がどうせ勤めるならば、貴族の振る舞いを知らない新興貴族で相談役のような立場になれたらとお考えのようです」
「うーん。でも、王都には本当に滅多に来ないし、ここでのやり取りはクシミール達にお願いできれば済むと思っているのに」
「その考え方が貴族らしく無い、と。侯爵家のお金を使って交友するのが目的にも思えました。交友自体は我々ではなく、確かに幹部の方に行って頂く方が良いことも多いと思いますので、完全に否定はできないのですが」
結婚した旨は知っている王都屋敷の人達は、いつ王都に来ても良いように、夫婦の部屋の整備をしてくれていた。
そこにアルマティを含めた5人で集まる。
「クシミールさんがおっしゃるように、王都という場所に侯爵家の張り出し拠点を設けて、他の貴族達やお城の官僚達と情報交換するということは至って普通の考えと思います」
「やっぱりモーネはそう思うのね」
「はい。ですが、テルガニ家はその普通と違うのも確かですので。例えば、ラーフェン王国でもベルカイム王国でも、王都に屋敷すらないままですよね。でも、それで良いと思うのです。そもそも領民が誰も住んでいない領地を与えられての侯爵という爵位です。今は、その領地を整備して行くことに専念すればよく、貴族政治とは線を引いておくのが良いかと」
「そうですよ、ジェロ様のお力が欲しい時に王家が頼ってこられる立場なんですから」「あ、モーネ様、すみません」
「いえ、リスチーヌさんがおっしゃる通りです。変に派閥争いに巻き込まれたりする可能性もありますので、今はそれらと縁がないようにしておくことが良いかと。このミューコンでも政治に関係のない執事のクシミールさん達だけにして。ただ、侯爵家として人員は今後にもっと必要になると思いますから、本当にやる気のある人にはテルヴァルデに来て採用試験を受けて頂きましょう」
頼もしい妻達の話を聞き、今は政治に巻き込まれない立場を維持すると決心するジェロ。




