新婚旅行の出発3
ニースコンからモージャンへは馬車で2日の距離である。
「あのときはムスターデ帝国兵に襲われながら逃げて、本当に生きた心地もしなかったですよね」
モーネ、リスチーヌは実感を込めながら会話をしている。ヴァルも当然にその時のことがわかるが、当時は仲間達にも姿を見せていなかったので微妙である。
その距離を≪飛翔≫とドラゴンへの騎乗のため、その日のうちに辿り着いてしまう。
「もう夕方も遅くて暗いよね。今から領主館にお邪魔するのは失礼だよね」
暗いから人目につきにくいということで、出来るだけ街の近くまでジョエルと共に向かい、そこからは冒険者の身分証などで街に入る。
「心当たりがあるから」
「あ、あそこですね」
リスチーヌには分かったように、冒険者ギルドに向かい、そこのギルドマスターをしているアンブリスに面会を求める。
「これは、これは、テルガニ侯爵って。モーネ王女殿下。失礼いたしました」
途中まではおどけながら砕けた感じで話しかけてくれたアンブリスも、モーネの顔に気づいて態度を改めて、ひざまずく勢いである。
「今は、こちらのジェロマンの妻ですので、そのようなことは」
モーネがアンブリスの手を取るようにソファに座らせてから、ようやく会話が進む。
「で、リスチーヌとエルフの娘はわかるが。いや、何となく気配に記憶もあるのだが」
「アンブリスさん、この度、結婚して妻になったモーネ、ヴァル、リスチーヌです。アルマティは家臣のままですが、同行して貰っています」
「モーネ。こちらのアンブリスさんは元々ガニーのギルドマスターで、俺がギルド職員になってからずっとお世話になっているんだ」
「それは、それは。今後ともどうぞよろしくお願いします」
「いえいえ。人見知りのところはありましたが、能力のあるギルド職員でしたよ。いつの間にか貴族になり、今となっては3カ国から領地を与えられた侯爵様で、王女様と結婚されたとんでもない人ですがね」
最低限の礼儀は踏まえつつ、適度に砕けた対応をしてくれるありがたい元上司である。
何となく気配も察して貰ったようで、モージャンでの高級な宿も手配して貰いつつ、翌朝に領主館に挨拶に行く旨の事前連絡もしてくれていた。




