新婚旅行の出発
「まずニースコン、そしてモージャンにも寄ってから王都ミューコンに向かいましょう」
モーネに念押しされて、ミューコンに直接行くつもりだったジェロは慌てる。
「特にモージャンからは子爵令嬢のユゲット様を、結婚披露の際に派遣頂いています。また、どちらも領地が近くなので現場同士では何かと衝突もあり得ますから、トップ同士が友好を深めておくことは良いことかと」
「そ、そうだよね」
ギルド職員のときには人見知りのことを除けばそれなりには出来る人物のつもりであったジェロも、上位での交渉ごとについては弱い。前世で社会人、プログラマーをやっていたときにもそのようなことを認識できていなかったので、プロジェクトマネージャーや上司などがそれら組織間調整はやってくれていたのかと今さらに思い当たる。
アナトマ商会で取り扱うドラゴン素材のうち高級品をいくつか見繕い、ニースコン男爵とモージャン子爵への手土産にする。
そして、いよいよ出発。
テルヴァルデの南の山脈を西に向かい、ニースコンに近づく。
「ドラゴンを近づけ過ぎると問題になりますし、ジョエルにはこの辺りで待機して貰いましょう」
「じゃあ、モーネは俺が抱っこして≪飛翔≫しようか」
照れるモーネがすぐに遠慮するため、街からある程度の見晴らしがあるところからは徒歩にする。
「こんなに歩くことは、久しぶりですね」
「確かに最近では騎乗するか≪飛翔≫するかですから、ある意味で新鮮ですね」
「マメができないように気をつけてね。もしできてもすぐに魔法で治療はするけれど」
街道を楽しげに歩く、ジェロ、ヴァル、モーネ、リスチーヌ、そしてアルマティ。
ニースコンに入る城門で、アルマティが先に走って行き衛兵に伝えると、衛兵達は慌てて馬車を用意して迎えに来て、領主館にまで案内されてしまう。
「街を自由に散策したかったのに」
「前触れはしないようにしても、ヴァルとモーネには冒険者の身分証がないから、テルヴァルデの身分証だけになるか」
「仕方ないですね」




