武技
『ま、良い経験になったんじゃない?』
『そうだね。刀を使う機会は来ないで欲しいけど、念のためにはね。明朝からは今のイメージを踏まえて素振りのパターンを増やすよ』
引き続いてリスチーヌとバスチャンの対戦となる。斥候役らしくいつもの短剣の木剣を持ったリスチーヌは引き続きバスチャンをおだてたまま開始になる。
良い気分になったバスチャンが気を引き締める前に、リスチーヌは素早さを活かして回り込み、短剣をバスチャンの脇に当てて勝ちを得る。
「私の出来るのはこんな感じですね。ガニーの街でもお役に立てますかね」
「あぁ」
「今回は武技も使わない前提でしたし、木剣でない本当の勝負ですと、バスチャンさんにいくら短剣を当てても大したダメージにもならないから、私に勝ち目はないのですけどね。木剣でも次は油断されないでしょうから勝てないと思いますので」
「いや、そんなことは……」
斥候役らしい素早さと、相手の立場を考慮した発言ができるリスチーヌにバスチャンは完敗であった。
確かに武技を互いに使うと勝負はどうであったか分からない。
アーツとも呼ばれる魔力を消費する技であり、見方によっては魔法の一種とも言える。上級になると剣から斬撃を遠くに飛ばすこともできるようになる物である。武器の種類によって技の種類も異なり、武器が無の状態での体術にも武技の技がある。
もし武技を使って足を早くしていれば結果も変わったかもしれないし、肉体を強化していたらまた違ったかもしれない。
ジェロは魔法に注力して訓練して来たが、魔力操作ができるので武技の習得も?と少し考えるのであった。




